2021.10.15

CARS

まるで走る神殿! メルセデスの高級ブランド、マイバッハが手掛けたSUV、GLS600に乗った!!

2021年で創立100周年を迎えるドイツの名門、マイバッハ。現在はメルセデス・ベンツのブランドとなった彼らの名を冠したこのSUVにも、紛うことなき、創立者ウィルヘルムの志がしっかりと受け継がれていた。

advertisement


巨大な神殿のようなフロント・グリル

いやはや何とも、息を呑んでしまうような威風というか、辺りを払う堂々たる存在感である。キラキラ輝く大きなフロント・グリルはもはや神殿のようで、何だか畏れ多い気持ちが先に立つ。それにしても、メルセデス・ベンツにとってはご先祖様ともいうべき、由緒正しいマイバッハの名前がSUVに使われる時代になるとは、ウィルヘルム本人も驚いていることだろう。



念のために簡単に説明しておくと、「マイバッハ」とはゴッドリープ・ダイムラーのパートナーであり、カール・ベンツとともに現在のガソリン自動車の父のひとりとされるウィルヘルム・マイバッハにちなんでいる。マイバッハはその後ツェッペリン飛行船のエンジン開発に関わり、さらに自身の名前を冠した超弩級リムジンの製造に乗り出したが、第二次世界大戦前までの約20年間での総生産台数はわずか1700台ほどと言われている。当時のマイバッハはメルセデスを凌ぐほどの高級車ブランドで、まさしく王侯貴族用の特別な高性能車だった。ちなみに今年2021年は自動車メーカーとしての「マイバッハ」の誕生100周年に当たるという。2002年には当時のダイムラー・クライスラーがSクラスのさらに上に位置する高級リムジンとしてその名を復活させたが長続きはせず。その後、メルセデス・マイバッハというサブ・ブランドとして、Sクラス・ベースのロング・ホイールベース・モデルをラインナップ、4年ほど前にはGクラス・ベースのG650ランドレーという限定モデルも発売されている。

43.5度もリクライニングするという贅沢なセパレート・タイプのシート



マイバッハGLS600に乗り込む時には要注意だ。ドア・ハンドルを引くと幅広い電動格納式ランニングボード(サイドステップ)が素早く音もなくせり出して来るので、不用意に脚をドアの近くに置いていると、滑り出た頑丈なステップで弁慶の泣き所を打つことになるからだ。そもそも焦って自分で乗り込もうとしてはいけないクルマなのである。ドアを開けるとそこには再び足を踏み入れるのも畏れ多いような、真っ白で豪勢な空間が広がっている。豪華ヨットをモチーフにしたと言われる室内には、43.5度もリクライニングするという贅沢なセパレート・タイプのシートが2脚。メルセデスのフラッグシップSUVであるGLSをベースとしているからボディの外寸は事実上同一だが、本来3列シートで7人乗りの室内を4人乗りとして贅沢に使っている。

重心が高く、重く大きなSUVを滑らかに静かに走らせるのは本来不利なのだが、車重2.8トン以上もある巨体がスーッと滑るように走るのだから最新技術は凄いとしか言いようがない。558ps/730Nmを生み出す4リッターV8ツインターボに9段ATというパワートレインは力強くスムーズで、その上48V駆動のISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)付きであることも効果絶大である。当然アイドリングストップやコースティングに加えて、軽負荷時にはV8のうちの半分を停止する気筒休止機構も備わるが、気筒休止の切り替えやエンジンのオンオフもまったく感じ取れない。

極めつきは後席の快適性最優先の「マイバッハモード」



ベース・モデルのGLS同様この車にはEアクティブ・ボディコントロールと称するサスペンションが備わっている。この種の大型重量級にはもはや必須と言えるエア・サスペンションと可変ダンパーに加えて、4輪それぞれに48V駆動の電動油圧アクチュエーターを装備して、積極的に車両の姿勢を制御するいわばアクティブ・サスペンションで、ステレオ・カメラで前方の路面状態を検知してサスペンションを制御するロードサーフェス・スキャン機能、コーナリング中の姿勢変化を抑えるダイナミックカーブ機能が盛り込まれている。さらに特徴的なのは後席の快適性最優先という「マイバッハモード」を備えること。巨大な23インチタイヤを装着していることを忘れるほど、ほぼあらゆる場面で滑らかだ。もっと言えば4輪の車高を個別調整できる機能も付いている。このようなシステムが日本で必要とは思えないが、砂漠へデイ・キャンプに出かける王子様御一行には必須なのだろう。庶民には想像もつかないほど世界は広いのである。

文=高平高輝 写真=宮門秀行

■メルセデス・マイバッハGLS600・4マチック(欧州仕様)

駆動方式 フロント縦置きエンジン+モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 5205×2030×1838mm
ホイールベース 3135mm
トレッド 前/後 1699/1723mm
車両重量(車検証記載前後軸重配分) 2785kg(前軸1490kg/後軸1350kg)
エンジン形式 V型8気筒DOHC32Vツインターボ+モーター
総排気量 3982cc
ボア×ストローク 83.0×92.0mm
エンジン最高出力(モーター) 558ps/6000-6500rpm(22ps/-rpm)
エンジン最大トルク(モーター) 730Nm/2500-5000rpm(250Nm/-rpm)
変速機 9段AT
サスペンション形式 前/後 ダブルウィッシュボーン式/マルチリンク式
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 285/40R23 107Y/325/35R23 111Y
車両価格(税込) 2729万円

(ENGINE2021年11月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement