2022.04.04

LIFESTYLE

アカデミー賞で外国語映画賞も受賞したイランの名匠が映画『英雄の証明』で描いたSNS社会の歪んだ正義

(C)2021 Memento Production - Asghar Farhadi Production - ARTE France Cinema

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思わぬ事態に巻き込まれた市井の人々の姿を描き続けるイランの映画監督、アスガー・ファルハディ。世界が注目する名匠の新作『英雄の証明』の見どころを伝える。

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英雄か、詐欺師か?

イラン映画といえば、1990年代に日本でも人気を集めたアッバス・キアロスタミの作品を思い浮かべるが、今、世界で最も評価されている同国の監督はアスガー・ファルハディだろう。彼の代表作、『別離』(11)と『セールスマン』(16)は共にアカデミー賞で外国語映画賞を受賞している。

その新作『英雄の証明』はSNSに翻弄される男を主人公とした人間ドラマだ。借金を返せなかった罪で投獄されているラヒムは、恋人がたまたま拾った17枚の金貨を手に入れる。この金貨を自分のものとせず、持ち主を探し出して返済したことがメディアで報じられ、彼は美談の英雄として持ち上げられる。だがこの話は作り話との噂がSNSで広まったことから、彼は一転して詐欺師のような扱いを受けてしまう……。

予想外の事態に直面した普通の人々を、緻密な脚本とサスペンス仕立ての演出で見せるファルハディ。そのスタイルは今作でも健在だ。イランという国の現在を描きながらも、SNSから生まれる歪んだ正義や不条理を伝える本作品。我々にも共感できる部分は多いはずだ。



『英雄の証明』
2011年の『別離』ではベルリン国際映画祭で作品賞を、2016年の『セールスマン』ではカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞するなど、発表する作品が常に高い評価を受けるアスガ-・ファルハディ監督。本作のストーリーは新聞で読むニュースから着想を得たという。ちなみに映画では、主人公ラヒムが収監されている刑務所から2日間の休暇を取って姉の家に帰る設定になっているが、イランでは軽犯罪の囚人を対象にした、このような休暇システムが存在する。また撮影は、数多くの古代遺跡が現存するイラン南西部の古都シラーズで行われた。127分。Bunkamuraル・シネマ、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテほかで公開中。全国順次公開。



(C)2021 Memento Production - Asghar Farhadi Production - ARTE France Cinema

文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE2022年5月号)

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