2022.06.09

CARS

クルマと彫刻が同じ空間に! 世界的建築家がキュレーションした、ユニークな展覧会の中身

ヘンリー・ムーアの彫刻とクルマが並んだ展示室。

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ロンドン市庁舎や香港上海銀行の本店ビルなどを手掛けた世界的建築家、ノーマン・フォスター氏。カーコレクターでもある彼が企画した、ユニークな展覧会を紹介しよう。

デザインの変遷を7つのセクションで

カー・コレクターとしても有名なイギリスの建築家、ノーマン・フォスター(86)がキュレーションした、『モーション―自動車、芸術、建築』展が、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館で開催され、アート、デザイン界からも注目されている。この展覧会は、クルマが時代から受けた影響、そして時代に与えた影響などを、40台の貴重で美しいクルマ(9台はフォスターのコレクションから)やアート、建築資料などから読み解こうというもの。大都市の顔となる建物を幾つも手掛け「スーパースター建築家」とも評されるフォスターの、建築家ならではの展覧会構成が非常に魅力的だ。



そもそも建築家は、長い歴史をかけて都市の景観を作り上げてきた。一方19世紀末に登場したクルマは次第に都市の風景に溶け込み、今や不可分のものに。もはや建築家は、クルマ抜きで都市の景観を考えることはできない。そんなクルマのデザインの変遷を、フォスターは7つのセクションに分けて見せている。それぞれの章名は、(1)誕生、(2)彫刻、(3)大衆化、(4)スポーツ、(5)空想、(6)アメリカ、(7)未来。

思想家であり建築家のバックミンスター・フラーが1933年に設計したコンセプトカー、ダイマクション・カー。展示品は、フラーの教え子でもあるノーマン・フォスターが2010年に再製作したもの。

バックミンスター・フラーの発想が応用されたクルマも

特に展覧会の特徴が表れているのが「彫刻」のコーナーだ。馬車にエンジンを付けただけの乗り物が、次第に自動車に姿を変えていく過程で、流れるようなフォルムは彫刻などのアートからインスピレーションを得たと考察。同展では、デザインに影響を与えたと思われるヘンリー・ムーアの彫刻とクルマを同じ空間に並べている。

他に注目すべき展示品は、建築家でもあるバックミンスター・フラーの天才的な発想が応用されたクルマや、フランク・ロイド・ライトが提案したクルマ時代ならではの建築プロジェクト案など。フォスターのキュレーションは、建築業界最前線のものからアメリカのガソリンスタンドなど誰もが目にする風景まで、カーデザインと創造の世界がいかに変化したかを、建築を絡めて見せている。こうした違った視点から眺めることで、クルマのある社会がいかに魅力的なものなのか、改めて認識させられる展覧会だ。



『Motion,Autos,Architecture』は9月18日までスペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館で開催中

文=ジョー スズキ(デザイン・プロデューサー)

(ENGINE2022年7月号)

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