2022.08.13

LIFESTYLE

日本刀の魅力を再発見する! 千年前から受け継がれてきた「美しい武器」

河内氏の父で名刀匠として知られる國平氏が手掛けた刀の両面。丁子文と呼ばれる白く輝く模様が切っ先から元まで連なっている。

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海外のセレブから「最も美しい武器」と称賛される日本刀。富裕層だけでなく、若い女性ファンも増えている。日本刀の魅力を発信し続ける「studio仕組」主宰者に、時代を超えても輝きを増し続けるその魅力について聞いた。

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「刀剣乱舞」が人気の火付け役

鍛錬、鎬を削る、相槌を打つ、折紙つき、鍔迫り合い、反りが合わない。すべて刀から生まれた言葉だ。日常生活にここまで由来となる表現を持つ武器は珍しいだろう。いかに刀が日本人の心性に根付いているかを示す証左といえる。

「国宝、重要文化財として認められているものの中で、いちばん多いのが刀です」

そう語るのは、名高い刀匠を父に持つ河内晋平氏。「studio仕組」という会社を主宰、現代の刀鍛冶師のプロデュースを手掛けている。

日本刀は大陸から直刀として伝わり、平安後期から室町末期の武士の台頭と共に反りを持つ独自の形を完成させた。その後も変遷を重ねつつ、玉鋼を打ち続けるという基本工程は令和でも変わらない。

以前は一部の好事家が愛好していた日本刀だが、大きく変化したのは2015年。PCやスマホのシミュレーションゲーム「刀剣乱舞」が火付け役だった。歴史に残る名刀を擬人化させるという斬新なアイデアが反響を呼び、一挙に若い層でのブレイクを果たした。実際に高額な刀を買い求める女性も少なくない。



刀を持つと心が洗われる

河内氏も刀を現代的に解釈したコラボ商品で新しい魅力を発信しつつ、背景をしっかり知ってもらうことに努めている。「刀は生き続ける宝です。持つ人を変えながら残っていくものですから、本質を理解して購入して頂きたいと思います」

希望者には時間をかけて刀づくりや手入れの方法の説明を行う。また、海外の顧客でも山奥の工房まで案内し、火花散る現場を見てもらうことがあるそうだ。「刀を持つと心が洗われるという方が多いですね。癒しになっているようです」



戦後GHQによる没収という危機を、美術的価値を訴えることで先人は乗り越えた。河内氏によれば、その神髄は“用の美”にあるという。切ることを追求するがゆえ、比類ない美しさを獲得してきた。西洋でも国宝とされる剣はあるが、主に鞘や柄の装飾性が重視されるのに対し、日本では刀身そのものの造型や刃文が審美の対象となる。武器でありながら美術品。切る道具にして心を癒す。そんなアンビバレンツな特色は唯一無二だろう。

鋼の塊から一葉の刃を生み出す匠たちの千年の技。ポップカルチャーとしての注目は、新しい火花を生む槌の一振りとなっているようだ。



文=酒向充英(KATANA) 写真=中村慧 [刀剣]、松崎浩之(INTO THE LIGHT)[取材]

(ENGINE2022年9・10月号)

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