2023.02.15

CARS

「マクラーレンを買ったのは、瀬戸内寂聴さんの言葉があったから」"完売画家"の異名を持つ中島健太さんが、身の丈に合わないクルマに乗る理由が凄い!

「完売画家」の中島健太さんと愛車のマクラーレン540C

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2シーターの車歴

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身の丈に合わないクルマを買い続けてきたという中島さん、23歳で初めて買ったのはBMW Z3だった。その後、ポルシェ・ボクスター(987)、ポルシェ・ケイマン(981)、ポルシェ・ボクスターGTS(982)へと乗り継いできた。いまのマクラーレン540CはボクスターGTSからの乗り換えになる。

「981のケイマンはマニュアルだったんですけど、本当にファン・トゥ・ドライブを味わわせてくれるクルマでした。あれより楽しいクルマって何があるんだろう? と、いまでも思います。僕のようなスキルの人でも適当に電子制御が介入してくれて安心だし、かといってハイテク過ぎるわけでもなかった」

2シーター・オープンやクーペを乗り継いできたのは、美しいクルマが好きだからだという。

「絵を描いているのも、基本的に美しいものが好きだからかもしれません。ただ、美意識は歳とともに自分のなかで変化しています。昔は見た目の美しさにとらわれていましたが、だんだん内面性を伴っての美というものがわかってきました。以前、瀬戸内寂聴先生を描かせていただいたのですが、きっかけは寂聴先生の生き様に美しさを感じたからです」

寂聴さんからは“あなたはもっと派手に生きなさい”という言葉を貰ったという。

「それからは、派手か、派手じゃないかという2択があったときに、派手をとっていくことにしました。マクラーレンを買ったのも寂聴先生の言葉があったからだと思います」

憧れをもってもらう

誰もが経験できないことを、もし自分ができる立場にいるのであれば、その選択はすることに決めたという中島さん。その行動は新しく美術界を目指す後輩へのメッセージでもあるという。

「憧れを持てない業界には人が入ってこない。ユーチューバーの台頭は、経済的に成功するというわかりやすい提示に憧れる後輩が出てきたからだと思います。美術界はたしかに大変ですが、一方でそれだけじゃないというのを可視化していく。幸いそれができる立場にいるのであれば、やっていきたいですね」

これまで順風満帆にみえる中島さんだが、初個展では事件にあった。

「初めての個展はおかげさまで成功したのですが、画商さんが売り上げ金を持って夜逃げしてしまいまして、僕には一銭も入りませんでした」

信頼していた人に裏切られたショックは相当のものだったと想像するが、中島さんはすごくいい経験だったという。

「世間知らずの自分を知りましたし、裏切ったのは人でしたが、助けてくれたのも人でした」

裏切られても立ち直り、後輩が活躍できる場を提供したいという中島さんは人が好きなのかもしれない。現在は有名女優さんを描いている。

「取材してその人のイメージをつかむというのが、僕の場合とても重要です」

描くモチベーションを保つためにもマクラーレンは欠かせないという。

「自分を鼓舞したい、奮い立たせたいときはマクラーレンに乗ります。乗れば自分の知らない世界を常に教えてくれて、それに相応しい人になっていくためにはもっと努力が必要だと知らせてくれる。まだ手の届かないものがあるっていうのは、本当にありがたいことです」

不可能とか、すごく難しくみえることでも、ひとつひとつステップを踏んでいけば、必ず近づいてくると中島さんは言う。神様は不公平なのではなく、中島さんを選んだのかもしれない。

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文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=筒井義昭 スタイリング=TAKASHI KUBUTA(口分田 尚) ヘアメイク=Kazuko Matsumoto 取材協力=梅原誠司

ジャケット/Tシャツ/パンツ 全て参考商品 THE PULLMAN tailor & vintage(ザ プルマン テーラーアンドヴィンテージ) 略:PULLMAN(プルマン) 問合せ 03-5315-0625
中島健太
大学3年でプロデビューし、現在までの制作作品は700点を超え、その全てが完売。2009年、日展初出展としては最年少で特選を受賞、2014年にも日展で特選を受賞し、20代で2度の受賞は小磯良平以来の快挙となる。繊細で洗練された高い技術と人間味溢れる温かな作風は、唯一無二と評価されている。「完売画家」としてテレビなどでも取り上げられ、「瀬戸内寂聴」「ベッキー」「新川優愛」などの作品も話題になる。2021年8月に著書『完売画家』を出版し、好評発売中。2022年4月期フジテレビドラマ『元彼の遺言状』絵画担当もつとめた。「第9回 日展(日本美術展覧会)」(2022年11月4日〜11月27日)には、女優、佐々木希さんをモデルにした作品『陽だまり』を出展。繊細なタッチで本人の美しさを引き出していた。

(ENGINE2022年9・10月号)

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