2022.12.16

CARS

「どうせ硬いんだろうなあ、と覚悟して走り出してびっくり」フォルクスワーゲンTロックの300馬力の最速最強モデル「R」のデキとは

乗ってびっくりのVW TロックR

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マイナーチェンジとともにTロックに加わったのがスポーツ・モデルの「R」。300psオーバーのエンジンや19インチ・タイヤなど、スペックはやる気満々だが。乗ってみるとこれが、びっくりするほどの大人びた洗練度を有していたのである。モータージャーナリストの高平高輝がリポートする。

スポーティというより上質


マイナーチェンジを受けて、正直ちょっと貧相だったダッシュボードまわりが見違えるように一新されたフォルクスワーゲン(VW)のコンパクトSUVクーペのTロック・シリーズだが、それに加えてもうひとつ大きなトピックがある。高性能モデル「R」が追加されたことだ。



ご存知RといえばVW自慢のハイパフォーマンス・モデルで、当然電子制御4WDシステムの「4モーション」を搭載する。TロックR用2リッター 4気筒直噴ターボは300ps/5300-6500rpm、400Nm/2000-5200rpmを発生。基本的に同じユニットを搭載する兄貴分のティグアンR(320ps/420Nm)より若干チューンは低いが、よりコンパクトなTロックにとって十分以上であることは言うまでもない。実際0-100km/h加速は4.9秒(欧州仕様参考値)とティグアンRと同じタイムを主張する。

ガソリン・モデルの1.5リッター TSI(150ps)に比べて2倍の最高出力を誇るからパワフルなのは当然ながら、単に荒々しい高性能モデルではないことがTロックRの特徴である。踏めばもちろん豪快に加速するけれど、右足をほんの少し押すだけで足りる街中でもパワートレインは滑らかでスムーズで非常に扱いやすい。しかも乗り心地がスタンダードモデルよりも明らかに上質で洗練されている。

ステアリング・ホイールには「レース」モードを選択できるRボタンが備わる。


派手めの外観や19インチ・タイヤを横目に見つつ、どうせ硬いんだろうなあ、と覚悟して走り出すとちょっとびっくりするほど滑らかだ。4WDのRだけはリア・サスペンションが4リンク式に変更されているが(標準型はトレーリングアーム式)、19インチ・タイヤを標準装備するにもかかわらず、Rのほうがしっとり落ち着いており、フラットで、ラフなバイブレーションも抑えられている。Rは電子制御ダンパーのDCCに加えて、R専用のスポーツ・サスペンションを装備するが、ほかにもパワーアップに対応する補強が加えられているのか、硬派なスポーツ・モデルというよりむしろ上質だ。ドライビング・プロファイル機能でエコ/コンフォート/ノーマル/レース/カスタムの各モードを選択できるのに加えて(ステアリングのスポークにはワンタッチでレース・モードを呼び出すRボタンも付く)、センターコンソールには4モーション・アクティブコントロールのダイヤルが備わり、スノー/オンロード/オフロード/オフロードカスタムの各4WDモードを選ぶこともできる。

ナッパレザーのスポーツ・シートはR専用。


Rには専用のナッパレザー・シートやカーナビを含めたインフォテインメントシステムの「ディスカバープロ」などほぼあらゆるものが標準装備されるが、とはいえ626万6000円の車両価格は、ベーシックグレードたるTSIアクティブが394.3万円のところ、値段表を二度見して確かめるぐらい飛び抜けて高価だ。これはいくら何でも、と首をかしげながら走っていると、段々といやこの洗練度とパワフルさなら仕方ないかな、と気持ちが変わってくるから不思議だ。そう思わせる上質さが伝わってくるのだ。Rの文字が至る所にちりばめられている点など、ちょっと子供っぽいやんちゃさを敬遠しがちな人も、乗れば大人びた洗練度にびっくりすること請け合いである。

文=高平高輝 写真=望月浩彦

エグゾーストは4本出し。


(ENGINE2022年12月号)

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