2023.01.17

LIFESTYLE

クラシック界の名門レーベルから世界デビュー 日本の若き才能、藤田真央のピアノが凄い!

チャイコフスキー国際コンクールでは2位に。

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2019年のチャイコフスキー・コンクールで2位となった藤田真央。先ごろ、モーツァルトのピアノ・ソナタ全集を発表した若き才能に注目。

名指揮者との共演が相次ぐ

新たな才能の出現には、心が高揚する思いを抱く。若きピアニスト藤田真央は以前から注目していたアーティストだが、2019年のチャイコフスキー・コンクール入賞後、一躍世界から脚光を浴びることになった。以後、ワレリー・ゲルギエフ、クリストフ・エッシェンバッハ、ワシリー・ペトレンコ、リッカルド・シャイーをはじめとする著名な指揮者との共演が相次ぎ、ヨーロッパの名だたる音楽祭からもオファーが舞い込み、いまや国際舞台で活躍するピアニストに成長。日本では「もっともチケットがとりにくいアーティスト」と称されるようになった。

藤田真央は幅広いレパートリーを誇るが、もっとも得意としているのはモーツァルトのピアノ・ソナタ。チャイコフスキー・コンクールでもソナタ第10番K330を演奏し、耳の肥えた審査員と聴衆から絶賛された作品である。

彼のモーツァルトは、躍動感あふれるテンポと情感あふれる美しい音色が聴き手の心をとらえ、オペラアリアをうたうようなみずみずしい生命力に富んだ響きが胸にじわじわと浸透してくる。近年、若手ピアニストはテクニックを前面に出し、スポーツカーのように疾走する演奏をする人が多いが、藤田の演奏はおだやかで、ひとつひとつの音が磨き抜かれ、非常にクリアに聴き手のもとに届けられる。繊細な弱音では、あたかもピアニストの息遣いまで聴こえてくるようだ。



「モーツァルト弾き」として認められ

彼が「モーツァルト弾き」として世界に認められたのは、21年夏にスイスのヴェルビエ音楽祭で行ったモーツァルトのピアノ・ソナタ全曲演奏会。インターネットで生中継も行われ、大きな話題となった。その後、ベルリンでピアノ・ソナタ全集録音を敢行、この10月にリリースされた。

実はいま、書籍「モーツァルトは生きるちから 藤田真央の世界」(来春発売予定)を書いており、生い立ちからコンクール参加、世界の舞台に飛翔するまでを綴っている。「わたしはどんなに有名なホールで演奏しても結構冷めていて、観光にも興味はありませんし、練習あるのみ。そのときに演奏する作品に全神経を集中させます」と語る、音楽ひと筋に生きる真摯な姿勢も紹介している。

世界の巨匠とされる指揮者が一度藤田と共演すると、再び共演依頼を出すことも稀有な才能の証。来年はNYのカーネギー・ホール、ロンドンのウィグモア・ホールにデビューすることが決まっている。日本の演奏家が国際舞台で活躍するのは非常に難しいといわれるなか、藤田真央の破竹の勢いに満ちた活躍には世界の目が注がれている。



■藤田真央:1998年東京生まれ。東京音楽大学卒業。2017年クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクール優勝。2019年チャイコフスキー国際コンクール第2位。同年10月、ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団との共演でロンドン・デビュー。以後、世界各地で著名な指揮者&オーケストラと共演。

文=伊熊よし子(音楽ジャーナリスト)

(ENGINE 2023年1月号)

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