2024.02.03

CARS

「オヤジのSR、オレの911」 レストアラーの父と、ミュージシャンの息子という親子を結ぶ、フェアレディとポルシェのストーリー

フェアレディSR311(1968)とポルシェ911Sタルガ(1972)

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雑誌『エンジン』の人気企画、「2台持つとクルマはもっと楽しい」。美しく仕上げられた、シルバーの2台のスポーツカー。親子2代にわたって溺愛するフェアレディSR311(1968)に加え、孫へとつながるタイムピースのポルシェ911Sタルガ(1972)をガレージに収める岡 昌光さん。


お前はこれに乗れ

「ものごころがついた時には、このクルマがありましたからね。母親が乗ってたのもエンジンをイジったスカイラインRSだったし。週末は父の工房が遊び場という、クルマ中心の子供時代でした。そもそも“サッカーやりたい”とせがんだら、一緒に遊んでくれるんじゃなく、サッカーゴールが出来てくるような家だったので(笑)。それが普通だと思ってたから、友達の家のクラウンに乗った時は衝撃的でしたよ。暖かいし、フカフカだし、テレビついてるし」

「本当は67年までのロー・ウインドウが欲しかったけど、まだレストアなんてない時代にこいつだけ際立って程度良かったので“売るなら言ってね”ってずっと言っていた」という68年型の日産フェアレディ2000(SR311)。

と笑うのは、CROCODILEBAMBIE(クロコダイルバンビ)のギタリストとして活躍するミュージシャンの岡昌光さん。72年型ポルシェ911Sタルガ、11年型のフォード・マスタング・シェルビーGT500とともにガレージに納める68年型ダットサン・フェアレディ2000(SR311)は、“三55”のナンバーが示すとおり、子供の頃からの想い出が詰まった、家族の一員というべき存在だという。

「憧れでもありますね。小さい時から“お前はこれに乗れ”と言われてきたので(笑)。どこに行くのもこの助手席でしたから」

「鈴鹿スカイラインに走りに行く時も、いつも助手席に乗せてました。それで横向いて走らせてるんだから、とんでもない親やったね(笑)」



そう応える父の功さんは三重県鈴鹿市に自身の工房を構える知る人ぞ知るレストアラー。当初は自分自身や仲間のクルマを直しているだけだったが、そのうちに口コミで噂が広まり、ついには林みのるさんにその腕を見込まれて童夢の歴代モデルをレストアした経験の持ち主。そんな功さんの原点を辿ると、鈴鹿というモータースポーツの聖地に生まれたことが大きく影響しているという。

「バイクに乗り始めたのは幼稚園の頃。中学の時には学校にも行かずにモリワキ・レーシングや鴻池スピードなんかに朝から晩まで入り浸ってね。みんなに可愛がってもらって、ギヤの灯油洗いとかをさせてもらうのが嬉しくて。そこからやね」

そしてバイク好き、クルマ好きの男の子の当然の帰結として、功さんはカートのレースに出たり、サニーで鈴鹿のプロダクションレースに参戦するようになる。



「バラしたり、直したりは昔から好きでしたね。だからサーキットで負けたらエンジンも足も自分でやる。それをレース屋さんたちも助けてくれてね。決して遅くはなかったけど、レーサーになるのは無理だと悟って、乗る方から直す方へとシフトして、昼間は会社勤め、夜はレース屋の手伝いという生活をずっとしてました」

そんな時に出会ったのが、このSRだった。

「前のオーナーが、行きつけの喫茶店のマスターでね。そこに集まってみんなで走りに行くんです。当時僕はスプリンター・トレノに乗っていたんだけど、1750ccにチューンしたトレノがこんな古いSRにコテンパンにやられるのが悔しくて。買うしかないって決意してマスターが手放す時に譲ってもらった」

何もかもに手を入れて仕上げ、今も新車同様の状態にあるが、1つだけやっていない作業があるという。「当時のレストアの流儀として“SRはボディとフレームは剥ぐな”というのがあってね。歪むんですよ。これはフロアも錆びていなくて、そんな必要がないくらい程度が良かった。今や一度も剥いでいないSRは珍しいかもしれないね」

週末のたびに峠に繰り出し、バラしてはまた走る……ことを繰り返していくうちに仕上がっていったというSRは、一見ノーマル然としているものの、“トラックのよう”と揶揄されるSRのイメージを払拭する、シャープなエンジン・レスポンスと人馬一体感のあるハンドリングをもつ、お世辞抜きに素晴らしいスポーツカーに仕立てられていた。

「もう全部やってますからね。峠で負けたらその日のうちにエンジン降ろしてましたもん(笑)。その後、スーパーセブンとかも買ったけど、残すほどではなくて。結局このクルマだけ残ったって感じです」


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