2023年の注目の輸入車38台を一同に集めたエンジン大試乗会に参加したモータージャーナリスト40人が注目するクルマ! 300psにアップした1.8リッターターボがドライバーを心地よい緊張に誘う! アルピーヌA110GTに乗った今尾直樹さん、山本シンヤさん、藤原よしおさんの3人は、思わず叫んだ!
乗るとアカンです
私にとって1発目のA110GTは、昨年6月に箱根で開かれた試乗会以来だった。MTがないことを理由に「マイ夢の買い物リスト」から消したつもりだったけれど、乗るとアカンです。300psにアップした1.8リッターターボは“スポーツ”に切り替えるとヴォッヴォッヴォッというレーシーなサウンドを発し、乗り心地が若干引き締まってドライバーを心地よい緊張に誘う。“トラック”にすれば、パドルで7段DCTを操ることになり、自分で操縦している感はいっそう強くなる。MTがなくてもイイじゃないか。ターンパイクをイッキに駆け上り、下りは怖いので“ノーマル”で駆け降りる。あのブドウは酸っぱくてマズイのさ。と呟くイソップ童話のキツネを真似ようと思っても、甘くてウマイことを私はすでに知っている。コーナーに入る手前で減速すると、DCTがブリッピングしながら自動的にダウンシフト。フロント・スクリーンの景色がビューンと横に流れ、コーナー出口の先に新しい世界が見える。ような気がする。同時にこれぞ無の境地、という感覚もある。やっぱり自動車はオモシロイ((C)渡辺和博)。(今尾直樹)

非日常に少し日常をプラス
GTは300ps/340Nmの1.8リッターターボに、俊敏性と快適性がバランスされたアルピーヌ・シャシーの組み合わせ。個性的なデザインは変わらないが、外装は細いスポークのアルミホイール、内装はアルミ/レザー仕立てにより、スパルタンさが少し薄れて小さな高級車のような雰囲気も。パワートレインは実用域ではハイスペックながらもフレキシブルな特性だが、アクセルをグッと踏み込むと、鋭く吹け上がり高回転までスッキリと回り、乾いたサウンドも相まって「スポーツ・ユニットだよね」を実感。フットワークは一般道や高速道路での上下方向のしなやかな足さばきは「機敏なのに重厚」という何とも不思議な感覚だが、ワインディングでは軽やかなクルマの動き、操作に対するノーズの反応の速さや一体感、明確なインフォメーション、素直な挙動といったA110の素性の良さをヒシヒシと感じる。ただし、GTはそこにいい意味で全ての部分に薄皮一枚挟んだかのような心地よいダルさがあり、ダイレクトだけど扱いやすさがあるのだ。非日常のA110に少し日常がプラスされたような一台だ。(山本シンヤ)

シャシーの差は歴然
エリーゼの後を継ぎ、すっかり“現代ライトウェイト・スポーツのメートル原器”になった感のあるアルピーヌA110。マイチェンって何が変わったのよ? と聞けば、A110S、今回乗ったA110GTともに300psになったとか。でも残念ながら292psだった先代との8psの差がわかるほど、人間ができていない。しかしながらシャシーの差は歴然。先代のピュアやリネージに残されていた、オリジナルを彷彿とさせるRRっぽいテールハッピー感が影を潜め、リヤの粘り腰、踏ん張り感がアップ。そのお陰もあって、エンジンのパワー感、ちょうど良い鋭さのハンドリング、小気味の良いシフト、心地よいエキゾースト・ノートや、コクピットのタイトさなどの演出が見事なハーモニーをみせ「ノン」という隙を与えない。思えば63年デビューのオリジナルA110も姿カタチを変えず、じわっじわっと中身を充実させながら77年まで生き永らえたんだった! いやぁ、今の時代にこういうマイチェンができるスポーツカーは幸せだなぁ。まさに21世紀のベル・エポック(良き時代/美しき時代)のスポーツカー、それがA110。(藤原よしお)

写真=小林俊樹/郡大二郎/茂呂幸正/神村聖
(ENGINE2023年4月号)
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