『ENGINE』8月号では「2023年、推しの1本はこれだ!」をテーマに時計を大特集(前篇)。編集部が信頼する時計ジャーナリストと目利きたちでエンジン時計委員会を結成し、時計好きとしての原点に立ち戻り、2023年のイチオシの時計について、その熱い想いを打ち明けてもらった。
今回は独立時計師ピーター・スピーク・マリンのスピリットを反映した「スピークマリン」から、
ブランド初のステンレススティールのブレスレットウォッチ「リップルズ」を紹介する。
ルーツで時計を考える
篠田哲生(時計ジャーナリスト)
これだけ社会がグローバル化し、デザイナーの国籍も工場の所在地もバラバラであっても、不思議と工業製品にはお国柄が現れる。自動車はその典型だが、時計も同様で、スイスとドイツと日本では明確な違いがある。スピークマリンはイギリス人時計師が立ち上げたブランドであるため、どこかイギリスらしさがある。「リップルズ」の時針はあのビッグベンのデザインを取り入れたものであり、左右非対称のケースはモダンとクラシックが融合するロンドンの街を思わせる。現代の高級時計の本場はスイスだが、時計作りの文化は再び世界へ広がっている。時計は国で選ぶ。それが新しい時計選びの楽しみになるのかもしれない。
蘊蓄を傾けましょう
菅原 茂(時計ジャーナリスト)
風変わりだが、印象に強く残るデザイン。スモールセコンドはふつう控え目に配置するのがお約束。ところがこの時計では1時と2時の間でスモールセコンドが存在感を主張する。「なにこれ」な光景だ。ケースも変わっている。角ばった丸型とでもいおうか、独特すぎてうまく伝えるボキャブラリーが見つからない。実はそれが「リップルズ」のねらいなのかも。ユニークな設計の自社製ムーブメント、そしてスピークマリンのルーツであるロンドンの建築から着想したケースデザインという「正解」がちゃんと用意されているからだ。この時計にはまだまだストーリーがある。オーナーになったら蘊蓄を傾けたくなる、そんなところにも魅力がありそう。
デザインは好みが分かれる?
細田雄人(「クロノス日本版」編集部員)
ラウンドともスクエアとも言い難いケース造形や、なぜか1時半位置のスモールセコンドなど、風変わりなデザインのため、人を選ぶかも。ただ、ケースはよく磨かれていて見るからに質がいいし、自社製ムーブメントも面取りに戻り角が入れられるくらい、仕上げには力を入れている。評価ポイントがオタクっぽくなってしまうのは、スピークマリン自体がオタク向けブランドだからしょうがない。でも、本当にいい時計なんです。直径40.3mmというケースサイズと、開口部の広い文字盤によって、画像を見ただけでは大きく感じるかもしれないけれど、ラグとブレスレットが一体化しているため全長は短いし、なによりヘッドが薄いから、実は絶妙なサイズ感。
スピークマリン
リップルズ
英国の独立時計師、ピーター・スピーク・マリンのスピリットを反映した時計は、デザインや機械式ムーブメントに独自の世界観を表現。ブランド初のステンレススティールのブレスレットウォッチ「リップルズ」も、現代建築から着想したユニークなケースと1時半にスモールセコンドを置く異色のダイアル、そして独特の設計による自動巻きムーブメントが特色だ。ケース直径40.3mm、5気圧防水。年間限定100本。361万2400円(※税込み予定価格)
問い合わせ=DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパン cg.csc1@dksh.com
写真=宇田川 淳
(ENGINE2023年8月号)
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