2023.08.19

CARS

BMWアルピナD3Sで岩手の自然を観て、浴びて、食べ尽くす! 快速ツアラーで行く、絶景と美食を巡る旅!!【前篇】

ずっと行きたかった場所に、ずっと乗りたかったクルマで。せっかくだから、あの幻の絶景も観に行こう。BMWアルピナD3Sで岩手は八幡平を目指した。今回はその前篇をお送りする。

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目的地は「八幡平アスピーテライン」

クルマで旅をするのは久しぶりだ。せっかくだから、遠くへ走りに行きたい。それも、運転のしがいがあるワインディング・ロードに。この時点で、私の頭の中では行き先が決まっていた。岩手と秋田にまたがる「八幡平アスピーテライン」。いまから10年以上前、まだ小学生の頃だっただろうか。一度だけ、助手席に乗って通ったことがある。それ以来、ずっと自分でその道を走りたいと思っていたのだ。そこに、ロケの日程をちょうど合わせたかのように、ごく限られた期間にしか現れない幻の絶景が見られると知ったのだ。

そうなれば、旅の足を選ぶのもあまり迷うことはなかった。今まで体験したことのないBMWアルピナを試してみたかったのだ。BMW・E90型325iの元オーナーでもある私は、BMWのスポーツ・サルーンとしての実力の高さは十分に理解しているつもりだった。だから、それ以上にエンジンの官能性や足回りの完成度に磨きをかけているというアルピナは果たしてどんなものなのだろうかと、ずっと気になって仕方がなかったのだ。



とびきり豪華なB8などの大きなモデルも気になるけれど、ワインディングを楽しむには3シリーズくらいのサイズがちょうど良いだろう。そこで、今回手配したのは、導入されたばかりの2023年モデルのD3Sだ。アルピナといえばガソリン・エンジンとも思ったけれど、ディーゼル・エンジンをどのようにしてスポーティかつラグジュアリーに仕立てているのか、確かめるにはちょうど良いと思ったのだ。

本州で最大の面積を誇る岩手県は、想像以上に広い。東京との往復だけでもそれぞれ半日以上はかかってしまうから、できるなら、広大な自然や歴史や文化も味わいたい。そこで、県北を中心に3日間のスケジュールを組んだ。

岩手のシンボル

私の自宅駐車場で茂呂カメラマンと待ち合わせた。D3Sは同社のラインナップの中ではコンパクトなセダンでありながら、荷室は十分な広さがある。2人分の荷物とたくさんの撮影機材を詰め込んでも、まだ余裕があった。首都高から東北道に入り、いざ北へ向かった。この日の目的地は盛岡だ。

道のりは快適そのものだ。1クラス、2クラス上のクルマに乗っているような気持ちになったのは、もちろんその足さばきの良さによるものもあるけれど、何よりインテリアの設えの良さが際立っているのが印象的だったからだろう。手に触れる場所には全てメリノレザーが奢られている。恐縮してしまいそうなこの贅沢な空間は、気持ちにも余裕をもたらしてくれたのだ。D3Sはあっという間に私たちを運んでくれた。



土地を知るには高いところから俯瞰するのが良いだろう。と、盛岡を一望できる「天峰山」を一気に駆け上がった。切り返しが多く、きついカーブが連続する狭いワインディングだ。いやぁ、D3Sで良かった。新緑の木々に囲まれた道を抜けて頂上が近づくと、一気に視界が開けた。そしてこの絶景である。右手に見えるのは、地元では南部富士として愛される岩手のシンボル、岩手山だ。先日の全国植樹祭の模様を見て、今上天皇も学生時代にお登りになったのだと知った。左手に広がるのが盛岡の中心市街地で、北上盆地の北部に位置している。一面を見渡すと、火山活動によって作り出された丘稜地、扇状地も広がり、その表情の豊かさはずっと眺めていられるほど美しいものだった。

ところで、盛岡市は米ニューヨーク・タイムズ紙が今年1月に発表した「2023年に行くべき52か所」という世界のランキングで、イギリス・ロンドンに次ぐ第2位に選ばれたのをご存知だろうか。この街にはどんな歴史や文化があるのだろうか。そのヒントを探しに市内へ急いだ。天峰山から40分、盛岡市鉈屋町にある「もりおか町家物語館」だ。

高い吹き抜けや箱階段、中庭へ続く通り土間など「盛岡町家造り」ならではの特徴は見ているだけで興味深い。

ここはかつて、奥州・遠野・宮古の三街道が合流する盛岡城下の入口として栄えた町。保存された伝統的な建物群の中に、岩手・盛岡の文化や歴史を辿る数々の資料などが展示されている。最も印象的だったのは「盛岡町家造り」を特徴づける、主人の仕事場である「常居(じょい)」という吹き抜けの居間だ。しばし盛岡の文化に触れた後、すぐ近くの「盛岡八幡宮」で旅の安全を祈願してからこの日の宿へ向かった。



900年の歴史

旅といえば、やはり温泉だ。盛岡にも、とっておきの温泉がある。「盛岡の奥座敷」とも称される「つなぎ温泉郷」だ。かつて、平安末期「前九年の役」でこの地を訪れた源義家が温泉を見つけ、連れていた愛馬の傷を癒すために洗ったのだとか。すると愛馬が回復したので、近くの石につなぎ停めて義家自身も入浴。それが「つなぎ」の由来だそうだ。開湯900年の歴史がある名湯なのだ。

初日の旅はここまで。

なかでも私が選んだ温泉宿「四季亭」は、料理にも力を入れている。月ごとに献立の変わる夕食は、6月のものに変わったばかりだった。地元の食材をふんだんに使った懐石料理は、私にはただひたすら「美味しい」としか言いようがないのだけれど、特に印象的だったのは先付の1つ「岩手県産姫竹と稚鮎あられ揚げ」、「岩手牛の鉄板焼」、「三陸産海鞘(ほや)と海老の天婦羅」だ。

宿の名前の通り季節ごとに四季折々の品が用意される懐石料理は、岩手の大地で育った岩手牛に三陸の海の幸、みちのくの山の幸と、地の食材がふんだんに使われていた。

新鮮な海鞘は甘みと柔らかさが感じられて臭みやえぐみなどは無縁だったし、旨みがぎゅっと詰まった牛肉は、バターと絡めるのも抜群だった。何杯食べても足りないくらいの白ごはんも、岩手県産ひとめぼれ。さっぱりとした口当たりとほどよい粘り気は、食材の味を堪能するのにちょうど良かった。客室露天風呂も源泉掛け流しというこちらの天然温泉は、pH値9.1のアルカリ性。天然の保湿成分というメタケイ酸もたくさん含まれているそうで、肌がとっても滑らかになったような気がした。

◆次はいよいよ東北最高のワインディング! この旅の続きは後篇で!

文=村山雄哉(ENGINE編集部) 写真=茂呂幸正

大浴場(内風呂)

■BMWアルピナ D3S
駆動方式 エンジン・フロント縦置き4WD
全長×全幅×全高 4725×1825×1440mm
ホイールベース 2850mm
車両重量(車検証) 1910kg(前軸990kg、後軸920kg)
エンジン型式 直列6気筒ディーゼル・ツインターボ+48Vスターター・ジェネレーター
排気量 2992cc
ボア×ストローク 84.0×94.0mm
最高出力 355ps/4000-4200rpm
最大トルク 730Nm/1750-2750rpm
トランスミッション ZF製8段AT
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ (前)255/35ZR19、(後)265/35ZR19
車両本体価格(税込み) 1220万円

(ENGINE2023年8月号)

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