2023.07.23

CARS

ジープにとって電動化は吉か凶か ラングラーをはじめ、3車種のPHEVを乗り比べる

2023年1月に発表された欧州カー・オブ・ザ・イヤーで、Bセグメント・サイズを持つジープの電気自動車「アヴェンジャー」が選ばれた。ジープもまた電動化に邁進していることを教えられるニュースだ。その波は日本にも押し寄せていて、2020年の「レネゲード」に続いて、最近、「グランドチェロキー」と「ラングラー」にもプラグイン・ハイブリッド(PHEV)が仲間入りした。東京都内でこの3車種を同じ日にドライブできる試乗会が行われたので、乗り比べをしてみた。

2通りのパワートレインを使い分ける

同じPHEVでも、パワートレインが横置きのレネゲードと縦置きのグランドチェロキー/ラングラーとでは内容がかなり違う。



後輪をモーターのみで駆動するレネゲード

レネゲードはフロントに1.3リッター直4ターボ・エンジンとスターター・ジェネレーター(モーター)、リアに駆動用モーターを置く方式で、前後アクスルはつながっていない。欧州産(レネゲードもイタリア製)のPHEVではよくある方式だ。

日本上陸直後にも乗ったことがあるので、おさらいの気持ちで走り出す。発進はモーターなので後輪駆動。市街地はほとんど電気だけで走れる。そこからスロットル・ペダルを踏み込んでいくと、エンジンが始動して4WDになる。エンジンが回っても音は気にならないものの、始動した瞬間はわかる。



想像以上の本格派

センターコンソールにはドライブ・モードのボタンとダイヤルがある。ボタンは電動比率の切り替えで、「ハイブリッド」、「エレクトリック」、「Eセーブ」の3つを用意。ダイヤルはガソリン車同様にオフロード・モードの選択で、ダイヤルの中のボタンでロー・レンジと4WDロック、ヒルディセント・コントロールも選べる。

バッテリーが空に近くなっても、発電によって4WDをキープしてくれることを含めて、カジュアルタッチのデザインから想像する以上にオフロードへの備えを用意してあるところが、さすがジープだと思った。



エンジンとモーターで前後輪を駆動

ラングラーとグランドチェロキーのPHEVのメカニズムは共通で、2リッター直4ターボ・エンジンにスターター・ジェネレーターを結合し、クラッチを介して駆動用モーター置き、トルクコンバーター、AT変速機、トランスファーとつないで前後輪を駆動する。つまりこちらは前後アクスルがプロペラシャフトでつながる、伝統的な構造を受け継いでいる。また、

電動モードが「ハイブリッド」、「エレクトリック」、「Eセーブ」なのはレネゲードと共通。ただし上級車種らしく、センターのディスプレイでEセーブの度合いが調節できる。グランドチェロキーではバッテリー節約とバッテリー充電のモードがあり、充電目標レベルが40%、60%、80%から選べるようになっていた。



車種ごとの差別化

2台の違いはプラットフォームやボディ以外にもあって、ラングラーは左ハンドルのみ、グランドチェロキーは逆に右ハンドルのみとなり、オフロード・モードの操作方法も違う。

グランドチェロキーはレネゲードに似ていて、5つあるモードをダイヤルで選択するのに対し、ラングラーはレバーで「2WD」、「フルタイム4WD」、「パートタイプ4WD」、「ローレンジ」を切り替え、別のスイッチでフロントとリアのデフロックを行うという、旧来のクロスカントリー4WDと同じトラディショナルな作法を残す。オフロードを知り尽くしたブランドらしい車種ごとの差別化だ。



軽快感のラングラー、静粛性のグランドチェロキー

モーターのつかない2リッター・ターボでも、不満のない走りを見せてくれることは経験済み。なのでバッテリーなどの追加で300kg以上重くなっても加速に問題はなかった。ただし、軽快感では車両重量が150kgほど軽いラングラー、静粛性では価格が約200万円高いグランドチェロキーに分があることもわかった。

グランドチェロキーは街中をゆっくり走る時はほぼ電動だが、勢い良く加速しようとすると、すぐにエンジンが始動する。ただし、遮音が行き届いており、サウンドはきめ細かいので、エンジンが回っても気にならない。逆にラングラーは、たしかにエンジンが掛かる機会は少ないものの、ロードノイズを含めたさまざまな音がそれなりに入ってくる。

グランドチェロキーではパドル、ラングラーではレバーで作動させる変速機のマニュアル・モードはエンジンブレーキ用で、それまで電動走行していても、レバーを操作するとエンジンが始動して変速ギアが落ちていく。オフロードのダウンヒルで重宝しそうだと思った。



グランドチェロキーは万能性が際立つ

乗り心地やハンドリングについても、乗用車らしさでは圧倒的にグランドチェロキーが上で、ラングラーは至る部分でクロスカントリー・ビークルっぽさを感じる。それでも日本ではジープらしさ重視でラングラーを選ぶ人が圧倒的に多いのが現状だが、PHEVでは左ハンドルのみとなることもあり、グランドチェロキーの万能性がより際立っていた。

3台を試乗して、ジープこそPHEVだと感じた。このブランドが本領を発揮する山を目指すには、それなりのロングランを要する人が多い一方、目的地では野生動物たちの生活を邪魔せずに移動したいという気持ちになるからだ。今回は東京都内が舞台だったが、機会があればそういうシチュエーションでも試してみたい。



文=森口将之 写真=郡 大二郎

(ENGINE WEBオリジナル)

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