2023.11.27

CARS

【保存版】「退屈しないんだよ、ジュリエッタは!」 新世代アルファとして登場した「ジュリエッタ」はどんなアルファ・ロメオだったのか?【『エンジン』蔵出しシリーズ アルファ・ロメオ篇】 

雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は2012年、待ちに待った“ジュリエッタ”が日本に上陸したのを機に、当時の編集部員3名が試乗して座談会を行った記事をお送りする。長く新型車のリリースがなく、ブランド消滅の危機まであったとされたアルファ・ロメオ。記事は、待望のジュリエッタに乗った当時の編集長の鈴木正文、編集部員の村上、齋藤の興奮した様子が伝わる内容になっている。果たして、ジュリエッタは走れば走るほどに味わいの深まる、シャシー・ファスターなスポーティ・ハッチだった。

advertisement


「ついに上陸した新世代アルファ・ロメオ! ジュリエッタは期待に違わぬクルマだった!」ENGINE 2012年2月号

スズキ ジュリエッタ。名前がいいよねぇ。アルファ・ジュリエッタ。前振りとして国際試乗会にいった齋藤君に説明してもらいましょうか。行ってきたのはずいぶん前だよね。

走らせている間ずっと、どこかで爽快感が続く。ジュリエッタはこのクラスで断然スポーティだ。

齋藤 ええ。ヨーロッパでは1年前に発売されてすぐさまスマッシュ・ヒットになって、イタリアだけでなく、フランスなどでも人気を博しているようです。ずいぶんと見かけるようになりました。日本導入が2012年1月の今になったのは、ひとつにはTCT(ツイン・クラッチ・トランスミッション)を搭載した2ペダル・モデルの生産立ち上がりが少し遅れたからです。それと、どうも東日本大震災の影響もあったようです。日本のサプライヤーに頼る部品もあったと関係筋から聞きました。それはともかく、日本についにやってきたジュリエッタですが、3モデルあります。どれも右ハンドルで、エンジンはガソリン仕様の2種類。スプリントとコンペティツィオーネはともに1.4リッターのターボ過給型。クアドリフォリオ・ヴェルデは1750ccのターボです。変速機は1.4が6段TCT。1750は6段ですが、3ペダルのMTです。

日本へやってきたジュリエッタは右ハンドル仕様。右は1.4TCTマルチエア・コンペティツィオーネの場合。ナビはオプション。ステアリング・ホイールやペダルの配置にオフセットはほとんどなし。(1.4TB マルチエア・コンペティツィオーネTCT)

スズキ TCTはどこの会社の?

齋藤 フィアットの子会社で、パワートレインの開発・生産が専業のFPT(フィアット・パワートレイン・テクノロジーズ)社のものです。新しい3軸式のマニュアル・ギアボックスを開発するのに合わせて設計されたツイン・クラッチ変速機で、独自のものです。内部構造がMT版と大部分同じ。乾式単板クラッチを使うきわめてシンプルな仕組みが特徴です。エンジンと一緒に回転するクラッチ・プレートが1枚だけあって、その両側にプレッシャー・プレートが設けられています。普通のMTだとプレッシャー・プレートはスプリングの力で押し付けられるのですが、TCTではこれを油圧で押し付ける。その作動油圧を電子制御しているわけです。仕組みを見せられると、こんなに単純なやり方があったかと、感心します。噛み合うギアセットを選ぶシフト・フォークの作動も人力の代わりに油圧で行う。その置き換えが行われているだけです。

アップライトというほどではないが、ヒップポイントは少し高め。大柄な体格にもフィットするシート。(1.4TB マルチエア・コンペティツィオーネTCT)

スズキ フィアット・グループといえば、色々なブランドを抱えて、ひとつのプラットフォームから次々とクルマを派生させてきた歴史があるけれど、ジュリエッタの場合はどうなっているの?

齋藤 鋼板を小さく分割してサイズや形状の自由度を上げるというモジュラー・プラットフォームのコンセプトでやってきたことがランチアのデルタでひと段落がついて、そこまでの経験を活かした上で新規に起こしたスティール製の新型プラットフォームを使っています。これがジュリエッタで初めて投入されたものです。軽量で剛性がきわめて高いのがウリで、前面衝突時の乗員保護性能も、市販開始時点でクラス・トップという結果が出ています。このプラットフォームがジープ/クライスラーも含めたフィアット・グループのすべてのブランドで使われることになっているそうです。これをベースにしたジュリエッタのボディ剛性の高さはちょっと信じられないほど高いものになっているのが、乗ればわかりますよね。

後席もルーミィだが、頭上の余裕はさほどない。このシートは革とファブリックのコンビネーション・タイプ。(1.4TB マルチエア・コンペティツィオーネTCT)

村上 フィアットやランチアでも使うことになるわけ?

齋藤 サスペンションなどは変えるでしょうが、使うことになるみたいですよ。まず、アルファの開発要件を満たすように作ったことによる恩恵に、他ブランドが与るわけです。

スズキ エンジンはアルファ専用?

齋藤 1990年代に開発された4/5気筒で1.4~2.5リッターをカバーした通称スーパーFIRE系のエンジンは御役御免になりました。で、それよりも前からある小さなFIRE系の最大排気量である1.4リッターにターボ過給を施したユニットが、ガソリン・エンジンの主軸になっています。欧州市場向けには120psと170psがあって、日本へは170ps仕様だけが入ります。120ps型はコンベンショナルなDOHC4バルブ・ヘッドですが、170ps型は電子制御した油圧で吸気バルブの開度特性を自在に操るマルチエア・ヘッドを載せています。アイドリング・ストップ機構も付いています。もうひとつの1750という懐かしい排気量のエンジンは、基本設計でいうとフィアット・グループでは最新のものです。159系の後期型に採用されたほか、ランチアのデルタにも載っています。デルタの場合には200psでアイシンの6ATと組み合わされていますが、ジュリエッタのクアドリフォリオ・ヴェルデ用は235psとハイ・チューンで、TCTとは別系列の大容量型6段MTが組み合わされています。2ペダルの設定はそもそもありません。予定もなさそうです。というわけで、パワートレインの基本はアルファ専用ではないのですが、組み合わせ方や出力特性が専用の仕立てになっています。スロットル開度特性をガラリと変えるアルファDNA(ダイナミック/ノーマル/オールウェザー)というプログラム切り替え機構が専用といえますかね。

1.4TB(トゥルボ・ベンジーナ=ターボ・ガソリン)のマルチエアは、170psを搾り出す。ジュリエッタは脚に余裕があるので、これでも少し物足りなく思えてしまうけれど、速さに不足なし。最高速度218km/h。(1.4TB マルチエア・コンペティツィオーネTCT)

▶エンジン・バックナンバーおすすめ記事をもっと見る

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement