2024.01.23

CARS

価格を超えた価値あるクルマは、こいつにトドメをさす! 清水草一が選んだのはフェラーリ458イタリア これしかないでしょう!【『エンジン』アーカイブ蔵出しシリーズ フェラーリ篇】

雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は、フェラーリの伝道師として自らも458を購入した清水草一氏による2013年10月号の記事を取り上げる。清水氏いわく、かつてのモデルとは比べものにならない、と素晴らしさを語りこれぞ価格を超えた価値ある1台だ、断言する。


フェラーリを超えたフェラーリ

価格を超えた価値あるクルマは、フェラーリにとどめを刺す。単に新車価格に対して、というのではない。それを売却する時どうなるのかまでを考えたら、フェラーリはとてつもなく安い。地上で最もお買い得なクルマは、間違いなくフェラーリだ。庶民の私が、これまで10台のフェラーリを乗り継げたのは、その安さゆえである。



私の周囲のオーナーたちも、口を揃えてその意見に賛同してくれている。「フェラーリに乗っちゃったら、もう他のクルマには乗れません」と。わずかな年間償却額で、世界最高峰が味わえるのだから当然だ。

が、彼らの間ですら激震を走らせているモデルがある。それが458イタリアだ。乗った者は皆、しばし呆然とし、激しく魂を奪われる。そしてつぶやく。「今までのフェラーリはなんだったんだ……」と。

今までのフェラーリも、もちろん最高に素晴らしい。が、458イタリアの素晴らしさは次元が違う。

これまでのフェラーリは、一にエンジン、二にカッコ。サウンドで絶頂に達しつつ、降りて眺めればまた陶酔という自動車芸術であった。が、458イタリアはそこに、「ハンドル切って失禁」という、新たな要素が加わった。別にワインディングを攻める必要などない。環八の交差点を軽く左折するだけで、失禁なのである。

「なんだこれは! この気持ち良さはなんだ!」

誰もがそう叫ぶ。ハンドルをこぶし1個分切っただけで、従来のクルマとはまったく別の何かを感じる。それは、ワープ感覚とでも言おうか。クルマを含む物体はすべて、慣性の法則に従って直進したがり、曲がる時は嫌々である。が、458イタリアは違う。歓喜にまみれつつ自ら進んで曲がる。そしてそれが、環八の左折でも味わえる。そこには物理法則を超えた悦びがある。

恐らくはEデフの、左右駆動力配分によるものだろうが、未だに理由は完全には解明されていないので、魔法だと解釈してもいい。



この快感を知ってしまったら、これまでのフェラーリに必要だった、「芸術的なレーシング・エンジンをレッド手前までブチ回す」という儀式はいらない。あの、細胞を沸騰させるような快楽が、そこらの四つ角で達成されるのだから! もちろん、ワインディングやサーキットを攻めれば両方味わえるので、絶頂の二乗ですが。

さらには、308以降の量産フェラーリ中最高と断言できるこのスタイリング。絶頂の三乗である。

私は昨年、458イタリアを購入してから、これまでとは次元の違う幸福感に包まれている。それは、自動車の頂点に君臨するフェラーリの中でも、別次元の甘美さであった。見て善し、乗って善し、そして常に浴びせられる周囲からの大絶賛。

これほどのクルマを、フェラーリ本社はまもなく旧型にしてしまうという。なんというもったいなさ! 私にはまだ、これ以上の美女など想像もできないのだが。

文=清水草一 写真=阿部昌也

(ENGINE2013年10月号)

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