2023.12.19

CARS

【前篇】「ドッカン・ターボかよ? と思うぐらいのロケット加速!」 ホットハッチのジュリエッタはどんなアルファ・ロメオだったのか?【『エンジン』蔵出しシリーズ/アルファ・ロメオ篇】

アルファ・ロメオのジュリエッタ。

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雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回の「アルファ・ロメオ篇」は、当時日本で新車で買えたジュリエッタの2013年の比較試乗の記事を取り上げる。その魅力を探るために、エンジン編集部はグレードの異なるテスト車4台を一度に借り出し、富士山の麓を目指した。アルファ・ロメオはなぜクルマ好きの心を揺さぶるのか? 4C日本上陸直前。アルファ完全復活を心待ちにするエンジン編集部員たちによる、2013年のENGINE 12月号、【前篇】のリポートをお届けしよう。

ジュリエッタという響き

荒井 ジュリエッタのテスト車は4台。1.4リッター・ターボを搭載するベーシックのクラシカと、そのスポーティ版となるスポルティーバ。どちらもツイン・クラッチのアルファTCT、パドル・シフトの付いた2ペダル・モデルです。残り2台は1.75リッター直噴ターボを搭載するクアドリフォリオ・ヴェルデで、右ハンドルと左ハンドルの2台を用意しました。どちらも6段MTが採用されています。

ジュリエッタでのコーナリングは快感を呼び起こす。中高速コーナー、とくに中速で大きく回り込むようなところでは喜びそのものだ。軽いブレーキングで速度を合わせ、イーブン・スロットルでトラクションをかけながら駆け抜ける。前輪駆動車に一般的な肩を突っ込むようなダイアゴナル・ロールではなく、体感的にはほとんど水平にロール軸が通った独特の味わい。昔のアルファ・スッドがそうでした。アルファ164もそれに近かった。前輪駆動でもアルファはアルファ。楽しいんですよ。


村上 乗った瞬間にアルファ独特の香りというか、空気を感じた。

新井 昔はシートの下に芳香剤が入れてあって、本当にアルファの香りがしました。

村上 いまはそういう香りはないけれど、内外装ともに独特のオーラがある。ステアリング・ホイールの真ん中のエンブレムを見ただけで、ウキウキする。アルファ・ロメオって幸せなクルマだよ。ジュリエッタという車名も素晴らしい。響きがいいよね。アルファ・ロメオ・ジュリエッタと言うだけで口が嬉しくなる。

新井 1954年、アルファ・ロメオ初の大衆向けスポーツ・シリーズに付けられた名前がジュリエッタでした。シェークスピアの「ロミオとジュリエット」にちなんだ名前です。

村上 ロメオとジュリエッタというわけ。そういう明るいセンスがいい。実際、ジュリエッタは街の風景を明るくするし、乗っている人を見るだけで、“あの人はクルマ好きなんだな”って思う。そういうクルマはなかなかない。

齋藤 ジュリエッタに限らず、アルファ・ロメオに乗っている人は全員クルマ好き。クルマ好きじゃないのに、たまたまアルファに乗っている人なんていないから(笑)。

写真はスポルティーバ。1.4リッターのスポーティ・モデルで、フロント・フェンダーにスポルティーバのエンブレム、18インチの専用アルミ・ホイールを備える。スポーツ・サスペンションと18インチ・タイヤの組み合わせにより、街中での乗り心地は硬め。


振り向きたくなる

荒井 見た目はどうですか?

村上 カッコいい。リアのスタイリングに尽きると思う。追走してると、数字の“6”を横に倒したようなテール・ランプがカッコよくて「ジュリエッタ!」って叫びたくなる。

齋藤 後ろから近づいたら、絶対に追い越して振り向きたくなる。

荒井 で、がっかり(笑)。

齋藤 いやいや。確かに、ワルター・デ・シルヴァが率いた時代の初代156や147は、天才の仕事だなっていう顔をしてた。パッと見た瞬間に虜になっちゃうような美人。ジュリエッタは愛嬌がある顔だよね。美人は3日見ると飽きるって言うから、ジュリエッタはずっと乗ってても飽きないと思う。

村上 ジウジアーロのブレラやベルトーネのアルファGTも端正でスキのない顔立ちをしていたけど、ジュリエッタはその血を引いていない。

クアドリフォリオ・ヴェルデはハンドル位置が違う2台を用意した。写真の通り、右ハンドルにはフット・レストがなく、クラッチ・ペダルを踏む角度も異なる。


塩澤 コレクションでランウェイを歩くモデルだって個性的だけど美人っていうわけじゃない。でも、スタイルは抜群。そういうクルマだよ。

齋藤 そう! スタイリングが素晴らしい! しかもクルマだから太らない。体型維持。

荒井 みんなアルファ・ロメオに甘いんじゃないの? アルファ・ロメオは愛嬌じゃないでしょう。でも、内装の赤いスティッチなんか、相変わらずアルファ・ロメオらしくていいと思った。大ぶりのシートもいい。

齋藤 インテリアのクオリティは高い。もう、グラブ・ボックスの蓋が外れたり、ルーム・ミラーが落ちてきたりしない。

荒井 大甘ですな(笑)。

シフトレバーの前にあるDNAスイッチはD(ダイナミック)が気持ちいい。


DNAスイッチ

村上 走りで昔と一番違うのはDNAスイッチが付いたこと。

塩澤 N(ノーマル)とD(ダイナミック)じゃあ、全然違う。Nは靴の上から足を掻いているみたいだけど、ひとたびDにスイッチすれば、素足を鉄の熊手で引っ掻いているような激しさ。落差に呆気にとられた。

齋藤 イタリア車は全部そう。フィアットのATだってノーマルからスポーツにすると激変する。はっきりと違わなければ、スイッチの意味がないとイタリア人は思っている。

荒井 どっちが本来の姿?

齋藤 もちろんDです。Nはイタリアのひどい通勤渋滞をジリジリ進むときに使う。デフォルトがNなのは、燃費やCO2の規制があるから。渋滞以外はDにして乗るべし!

1.75リッター直噴ターボの加速は強烈。


村上 今回の4台のなかで一番ベーシックなクラシカだってエンジン音はすごいし、Dにしたときの加速は強烈だった。1750にいたってはドッカン・ターボかよ? と思うぐらいのロケット加速。実際にはターボはそんなにドッカンではないのかもしれないけど、スロットルがガバッと開くから突然速くなる。

齋藤 それが本来の姿なのはパッションの国、イタリアで生まれたから。日本でやり過ぎと感じても、イタリアで乗ればフツー。熱いんです!

新井 下のトルクがちょっと足りないから、回さざるを得ない。で、3000rpm~6000rpmぐらいにトルクの山があって、そこに入ると炸裂するんです。1750でDの場合、4000rpm~5000rpmのところでグワーッと加速する。

村上 Nだと激しく加速するところが2000rpmぐらいに下がってくるけど、どっちにしろグワーッとなる。一般的には1.4のマルチエアの方が扱いやすいかもしれない。

齋藤 吸気側も排気側もカム・シャフトの位相を連続的に変えてる。スロットル・オフでも空気を排気してターボの回転落ちを減らしていたり、いろいろやってる。

◆次なる激論のテーマは「速さの質」。この続きは【後篇】でお楽しみください!

語る人=村上 政+塩澤則浩+齋藤浩之+荒井寿彦+新井一樹(すべてENGINE編集部) 写真=小野一秋

■アルファ・ロメオ・ジュリエッタ・クラシカ
駆動方式 FF
全長×全幅×全高 4350×1800×1460mm
ホイールベース 2635mm
車両重量 1400kg
エンジン形式 直列4気筒マルチエア16バルブ+ターボ
排気量 1368cc
ボア×ストローク 72.0×84.0mm
最高出力 170ps/5500rpm
最大トルク 23.5kgm/2250rpm(Normal/All weather)25.5kgm/2500rpm(Dynamic)
トランスミッション 6段乾式デュアル・クラッチ
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット(スタビライザー付き)
サスペンション(後) マルチリンク(スタビライザー付き)
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッド・ディスク/ディスク
タイヤ 225/45R17
車両本体価格 348万円

■アルファ・ロメオ・ジュリエッタ・スポルティーバ
駆動方式 FF
全長×全幅×全高 4350×1800×1460mm
ホイールベース 2635mm
車両重量 1400kg
エンジン形式 直列4気筒マルチエア16バルブ+ターボ
排気量 1368cc
ボア×ストローク 72.0×84.0mm
最高出力 170ps/5500rpm
最大トルク 23.5kgm/2250rpm(Normal/All weather)25.5kgm/2500rpm(Dynamic)
トランスミッション 6段乾式デュアル・クラッチ
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット(スタビライザー付き)
サスペンション(後) マルチリンク(スタビライザー付き)
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッド・ディスク/ディスク
タイヤ 225/40R18
車両本体価格 368万円

■アルファ・ロメオ・ジュリエッタ・クアドリフォリオ・ヴェルデ
駆動方式 FF
全長×全幅×全高 4350×1800×1460mm
ホイールベース 2635mm
車両重量 1460kg(右ハンドル)1440kg(左ハンドル)
エンジン形式 直噴直列4気筒DOHC16バルブ+ターボ
排気量 1742cc
ボア×ストローク 83.0×80.5mm
最高出力 235ps/5500rpm
最大トルク 30.6kgm/4500rpm(Normal/All weather)34.7kgm/1900rpm(Dynamic)
トランスミッション 6段マニュアル
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット(スタビライザー付き)
サスペンション(後) マルチリンク(スタビライザー付き)
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッド・ディスク/ディスク
タイヤ 225/40R18
車両本体価格 388万円

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(ENGINE2013年12月号)

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