世界限定1963台 ポルシェ911 S/Tに試乗!
一心不乱、半狂乱のドライブフィアット・パンダが最適な狭さの林道に入った。ほとんど2速もしくは3速に固定して走る。エンジンが相当にフレキシブルで高回転域を苦にしないからだ。五千回転あたりからサウンドの官能性が増し、時おり八千まで回しながら六千から七千あたりをメインに使っていてもまったく気にならない。七千回転くらいまでならエンジン回転に余裕を感じる。まるで苦にしている風ではないから、ふつうのクルマの三千、四千回転くらいの気分でいられるのだ。
現代のスーパーカーに比べるとナローな車幅にも感謝だ。パンダ用の道幅をまるで気にすることなく速度を上げていける。車体との一体感も凄まじい。速度がどんどん上がっていく。前輪はあくまでも自由に動き続け、後輪には常に確かなトラクションを感じている。出口での蹴り出しはどのような状況でも強力のひと言で、もちろん自慢の制動はといえば力もフィールも超一級となれば、助手席の大先輩どころか我も忘れてのドライビングとなった。久しぶりに一心不乱、どころか半狂乱のドライブとなる。これほど運転が上手くなった気分にさせてくれるスポーツカーもまた最近では珍しい。もちろん優秀なシャシー制御のおかげだろう。前述したようにスプリングとダンパーはハード的にGT3と変わらない。制御ソフトのコンセプトがまるで違う。サーキットでのトラクションを重視するGT3系とは違って、とにかくどんな路面でもアシをできるだけ離さないよう、つまりは“浮アシ立たない”よう制御されている。結果、ドライバーはステアリング操作だけに集中できるのだ。
何が楽しいって、タイトベントをクリアする感覚がたまらなかった。リアアクスル・ステアが残っているのかしら?と思うほど、クイックにノーズの向きが変わる。そして脱出した瞬間、舗装の荒れをものともせずに盛大に蹴り出す。こう書くと制御されたドライブの何が楽しいのか、とベテラン・ドライバーに指摘されそうだ。違う。3ペダルということもあり、常に自分で操っていると思い込ませてくれる。その上で官能的な自然吸気サウンドと力強いエンジン、正確無比なブレーキ、驚異的なシャシー性能などによって、まるでゲーム映像のように素早く流れる、けれどもリアルなフロント・スクリーン越しの景色を体験する。それこそドライバーを虜にしてやまない楽しさの源なのだった。文=西川淳 写真=ポルシェA.G.

■ポルシェ911S/T
駆動方式 リア縦置きエンジン後輪駆動全長×全幅×全高 4573×1852×1279mmホイールベース 2457mmトレッド(前/後) 1601/1553mm車両重量 1380kgエンジン 水冷水平対向6気筒DOHC排気量 3996cc最高出力 525ps/8500rpm最大トルク 465Nm/6300rpm変速機 6段MTサスペンション 前 ダブルウィッシュボーン/コイル後 マルチリンク/コイルブレーキ 前後 カーボンセラミック通気冷却式ディスクタイヤ 前/後 255/35ZR20/315/30ZR20車両本体価格(税込) 4118万円
(ENGINE2023年)
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