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2023.11.15

CARS

「GT-Rは間もなく死ぬ」のか？　自動車評論家の清水草一が、GT-Rの2024年モデルと日本で一番売れているEVのサクラに乗って、日産の未来を考えた！

清水草一

いまの日産を象徴する2台、GT-Rとサクラ。

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小さな貴族

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日産のもう1つの「極」が、軽EVのサクラ。発売以来好調に売れている。

近距離用に割り切った設計と、内外装の質感の高さは、マニア視点でもセカンドカーに欲しくなる。バッテリー容量20kWh、航続距離180km（実質150km程度）は、ご近所用として必要十分。急速充電速度の遅さもあって、ロングドライブは困難だが、おかげで外で高い電気を充電せずにすむとも言える。走りの質感は、通常の軽のはるか上を行っている。しかもサクラのルックスは、化粧品のパッケージのようにお洒落さん。サクラは小さな貴族だ。



先般、中国BYDが、コンパクトEVのドルフィンを日本に投入した。航続距離はサクラの2倍以上で、価格は約1.5倍。ドルフィンのほうが断然コスパが高いが、それでもサクラのほうが魅力的に見えるのはなぜだろう。サクラは、日本人の「縮み」志向にしっくりくるとしか言いようがない。現状、日本国内でEVに乗るならば、サクラが第一候補だ。

今年1～8月、サクラは2万5182台売れた。これは、同期間国内で販売されたEVの約4割に当たる。断然トップである。

しかしサクラは国内専用。日本では無敵でも、テスラやBYDが年間100万台売ることを考えると、象に対する蟻でしかない。日産三菱連合が、この小さな日本のEV市場のために、わざわざ軽EVを開発してくれたことに感謝するが、これが日産というグローバル企業に与えるメリットは、あまり大きくはない。

ダッシュボードを横方向に貫くゴールドの差し色はグレードによって差はあるものの、すべてのサクラで共通のもの。ステアリング・ホイールは真円の2スポーク・タイプ。シートは色および合皮とファブリックの組み合わせで3種から選択できる。

ステアリングおよび運転席のヒーターは試乗車のGグレードでは標準装備となる。後席は2段階のリクライニング機構も備わる。

同期間、日産製EVの根幹を成すべきアリアの販売台数は、グローバルで2万台余り。年間1000万台レベルに達しつつある世界のEV市場の中では大河の一滴だ。アリアも悪くないEVだが、ライバルと比すれば平均点でしかないし、そもそも量産に手間取った時点で負けている。

日本におけるサクラの独走は、ガラパゴスゆえである。世界のEV市場は、元をたどれば日産リーフが切り開いたものであることを考えると、暗然たる思いにかられずにはいられない。

しかし、未来を憂いてばかりいても仕方ない。とりあえず今この日本で、最も魅力的に感じるEVは、このサクラだ。そのことをポジティブに捉えるしかあるまい。

文＝清水草一　写真＝阿部昌也



■日産サクラG
駆動方式　フロント1モーター前輪駆動
全長×全幅×全高　3395×1475×1655mm
ホイールベース　2495mm
トレッド（前／後）　1300／1295mm
車両重量（前軸重量：後軸重量）　1090kg（590kg：500kg）
最高出力　64ps/2302-10455rpm
最大トルク　195Nm/0-2302rpm
バッテリー容量　20kWh
変速機　1段固定式
サスペンション（前）　マクファーソンストラット＋コイル
　　　　　　　（後）　トルクアーム式3リンク＋コイル
ブレーキ（前／後）　通気冷却式ディスク／ドラム
タイヤ（前）　165/55R15
　　　（後）　165/55R15
車両本体価格（税込）　304万400円

■GT-Rプレミアム・エディションTスペック
駆動方式　フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高　4710×1895×1370mm
ホイールベース　2780mm
トレッド（前／後）　1600／1600mm
車両重量（前軸重量：後軸重量）　1760kg（970kg：790kg）
最高出力　570ps/6800rpm
最大トルク　637Nm/3300-5800rpm
排気量　3799cc
変速機　6段デュアルクラッチ式自動MT
サスペンション（前）　ダブルウィッシュボーン＋コイル
　　　　　　　（後）　マルチリンク＋コイル
ブレーキ（前／後）　通気冷却式ディスク／通気冷却式ディスク
タイヤ（前）　255/40ZRF20
　　　（後）　285/35ZRF20
車両本体価格　1896万700円

（ENGINE2023年12月号）

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