2024.07.16

CARS

マルチェロ・マストロヤンニに抱かれているみたい 2008年型マセラティ・クアトロポルテSのテスト・リポート こんなに楽しいV8サルーンはない!

マセラティ・クアトロポルテSの2008年モデル試乗記

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デュオ・セレクトは需要がない

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フェイスリフトの中身を具体的に見てみよう。外装ではクワトロポルテも同Sも、前後バンパーを一新。フロントで35mm、リアで10mm長くなった。特徴的な縦方向グリルのフィン、サイド・マーカー込みのヘッドライトが新しい。グラントゥリズモのモチーフを取り入れた新デザインは、むろんピニンファリーナによる。内装ではセンター・コンソールのデザインが変わり、BOSEのマルチ・メディア・システムを新たに採用して、昨今の要望に応えている。

アルファ8Cコンペティツィオーネや身内のグラントゥリズモSと共通の4.7リッターV8は最高出力430ps/7000rpmを発生する。8Cは450ps、グラントゥリズモSは440psで、だんだん下がってきているけれど、最大トルクの490Nm(50.0kgm)は4750rpmの発生回転も含めてグラントゥリズモSと同じで、8Cより10Nmぶ厚い。つまりはより実用型になっている。

ボンネットの奥深くに潜むV8ユニット。テスタ・ロッサ(赤頭)が4.7リッターの証。


注目すべきは、グラントゥリズモSがトランスアクスル+エレクトロ・アクチュエイテッド6段ギアボックス(旧名デュオ・セレクト、またはカンビオコルサ)であるのに対して、クワトロポルテSは4.2と同じトルコンATのままであるということ。なぜATだけなのか、という質問にマセラティの回答はシンプルで、「需要がないから」。今年上半期で販売されたクワトロポルテはATが1673台、デュオ・セレクトはわずか83台に過ぎなかったという。

排気量が増えているにもかかわらず、車重は4.2の1990kgと同一。したがって前後重量配分も49対51のままだとされる。

動力性能は、0-100km/h加速5.4秒、ゼロヨン13.7秒、最高速280km/hを誇る。0-100km/hは5.5リッターのS550Lと同タイムなのだからアッパレ。しかもクワトロポルテはS550Lより80kgも重い。フェラーリ・エンジンがハンディをものともしていないのだ。ちなみに4.2は、それぞれ5.6秒、14.2秒、270km/hと発表されている。

マルチェロ・マストロヤンニ

ザルツブルク市街を抜けると、ドイツ領に入り、風光明媚で知られるベルヒテスガデンを通過する。山岳路を走るのに、現行生産車でクワトロポルテS以上に楽しい大型サルーンがあるだろうか、と私は思う。

まずもってフェラーリ製4.7リッターV8がイイ。このV8はトルクが身上で、4.2に較べてロー・エンド・トルクが1.5割がた増している。踏めば豊かなトルクがおのずと湧き出す。このエンジン、2500rpmで最大トルクの82%をつむぎだす。

グラントゥリズモとのスタイリング上の結びつきを示すテール・ライト。バンパー、アンダー・ドア・モールディングも新意匠。排気系にPEテクノロジーという技術を採用し、性能に影響を及ぼすことなくエミッションを低減。


仮に足らざるときは、自動変速機が補ってくれる。ZFの6段ATは、流行のデュアル・クラッチ・ギアボックスほどではないにしても、その変速は素早くスムーズで、不満が浮かばない。スポーツを選ぶと、変速はさらに速くなり、回転を高めにキープしてドライバーを高揚させる。

ただし、V8は許容回転の7200rpmまで回しても、むせび泣かない。ぶ厚い中低速トルクの恩恵で、むしろ4.2より静かになった、と思わせる。それでも、マルチェロ・マストロヤンニに抱かれているみたいにドキドキする。抱かれたことはないです。タクティクス(古い)。

乗り心地は電子制御のスカイフック・サスペンションをノーマルにしておくと、ゆったりしている。それでありながら、ノーズ・ダイブ、スクウォットがないことも印象的で、ボディはつねにフラットに保たれる。ATのスポーツ・モード・スイッチを押すと、スカイフックもスポーツになり、クルマがシャキッとする。どちらもいいけれど、ノーマルのほうがクルマの性格にあっている。

タイヤは19インチが標準で、路面が荒れていると、若干ゴツゴツする。ボディにドイツ車的な金庫感はないけれど、不満はない。むしろライブ感があっていいぐらい。

ワインディング・ロードのコーナーというコーナーを、トランスアクスルの初期型みたいにスッパスッパと切り捨てていく感じではない。前後重量配分49対51に象徴されるような、ノーズの軽さは感じない。パワー・ステアリングの設定は重くなっている。初期型が驚異的に軽くてよく切れるカタナだったとすれば、これは重い。スパッとは切れない。ターンインがムズカシイ。そのかわり、高速安定性はグッと増している。

文=今尾直樹(ENGINE編集部) 写真=コーンズ/Maserati S.p.A

■マセラティ・クワトロポルテS
駆動方式 フロント・エンジン/リア・ドライブ
全長×全幅×全高 5097×1895×1438mm
ホイールベース 3064mm
車両重量 1990kg
エンジン形式 90°V8DOHC32バルブ
排気量 4691cc
ボア×ストローク 94×84.5mm
最高出力 430ps/7000rpm
最大トルク 490Nm(50kgm)/4750rpm
トランスミッション ZF6段オートマチック
サスペンション前後 ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ 前デュアル・キャスト・ディスク 後ディスク
タイヤ 前245/40ZR19 後285/35ZR19
タイヤ銘柄 ピレリPゼロ
日本上陸予定 本年末~来年早々

(ENGINE2008年9月号)

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