2024.02.08

CARS

2代目トゥインゴのGT スポーツ・ハッチを作らせるとルノーは巧い! こんな中古車、あったら欲しい!【『エンジン』蔵出しシリーズ/ルノー篇】

ルノー・トゥインゴGT(2009年)

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中古車バイヤーズガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回は、蔵出しシリーズ初登場のルノーを取り上げる。3代目が生産終了となり、さよならモデルを販売中のトゥインゴだが、ここでは2代目のスポーティ・モデル、トゥインゴGTが待望の上陸を果たしたときの、2009年2月号のリポートをお送りする。


「GTの名は伊達じゃない 少し遅れてやってきたトゥインゴGT 真価は巧みな過給にあり」ENGINE 2009年2月号

目も覚めんばかりの鮮やかなブルー・メタリックに塗られたトゥインゴGT。標準型トゥインゴに少し遅れての輸入開始となったスポーティ・モデルに乗った。

エンジンは1148ccのSOHC16バルブ・ユニットに小型ターボチャージャー(空冷インタークーラー付)を加え、最高出力100ps/5500rpm、最大トルク14.8kgm/3000rpmを捻り出す。変速機は3ペダルの5段マニュアル型。標準型より半インチ幅広い6Jリムの15インチ軽合金ホイールに185/55R15タイヤを履く。価格は240万円。


実直なシティ・ラナバウト然としていた普通のトゥインゴとどのように違うのかな? という思いを胸に走り始めた。と、これがなかなか俊敏だ。1148ccの小さな4気筒エンジンにターボ過給だから、ひょっとしたら下の回転域はスカスカで扱いにくかったりするのじゃなかろうか、という心配はすぐに消し飛んだ。100psという最高出力は1.4リッター級の高出力型自然吸気エンジンのそれに匹敵するものだけれど、無理してそれを捻り出している感じがぜんぜんしない。

繋がり具合が把握しやすく扱いやすいクラッチのおかげもあるだろうけれど、低回転域のトルクが必要十分にあるのが何より効いている。普通のトゥインゴが積む75psの自然吸気エンジンの圧縮比が同じ95RON(日本だとハイオク指定)を前提に9.8:1と比較的低めなのに対して、GTのユニットはターボ過給型であるにもかかわらず9.5:1と高い値を保っているのが強い。

余裕たっぷりとまではいかないが十分なサイズをもったシートは、しっかりとした張りのあるもの。


さらに、電卓を叩いてオーバーオールのギア比を算出してみると、GTは1速が3.8%、2速は3.1%低く、低速域でのピックアップを重視した仕立てが施されているのがわかった。逆に3速は1.5%、4速は0.7%高く、ターボ・エンジンならではの中高速回転域の太いトルクを活かそうという意図も読み取れる。最高速度が185km/hに達するGTの5速は、オーバードライブ・ギアではなく、それでしかまかなえない超高速域を広く受け持つが、そこでもてる力を使いきれるようにということでだろう、75ps型より低く(1.2%)されている。


なりに似合わず大人びた高速巡航

街中を走り回って雑踏を泳ぎまわることがぜんぜん不得意ではないことがわかり、ならばと、高速道路に上がると、感心するよりなかった。ターボの過給効果がじつに見事にコントロールされている。かつてのターボ・カーのように中速回転域に入るやいなやいきなり盛り上がりを見せて猛々しくダッシュする、などということがない。2500rpmを超えたあたりから明瞭になる太いトルクがフラットにそのまま5000rpm超まで維持され、まるで排気量の大きな自然給気エンジンで走っているような錯覚を覚える。メーカーの主張する“1.6リッター級のトルク”というのはまさに言いえて妙で、小排気量ユニットをブン回して速度を稼ぐのとは正反対の大人びた加速を披露するのである。ターボチャージャーが排気の脈動を吸収するからエンジン透過音も低く、高い速度を維持しても疲れない。そこもまた、高性能スモールカーの常識とは大きく違う。ハイスピード・クルージングが得意なのだ。GTというサフィックスにはきっちりとした裏づけがあるのである。



電子制御でよくコントロールされたエンジン特性とギアリングのマッチングは見事というほかない。こういうところが、日本車はまだまだなのだけれど、このトゥインゴGTは走らせれば走らせるほど、膝を叩きたくなる。スポーツ・ハッチを作らせるとルノーは巧い。


タイヤを上手く使った脚の仕立て

でも、ルノーは乗り心地のつくりかたも上手いという先入観は、強く持ち過ぎないほうがいい。かくいう僕自身がそうだったから言うのだけれど、高速域ではフロントにときにぐいぐいとチョッピィな動きが出る。速度を上げると、バネレートの高さと、相対的に軽めの前軸荷重のネガが出て、落ち着きを欠くことがある。脚はかなり締めてあるのだ。しかし、街中での乗り心地は好ましく感じられる。スポーティモデルらしく扁平率の小さいタイヤ(185/55R15)を採用しながらも、当たりの柔らかい高級タイヤ(テスト車はプレミアムコンタクト2)とすることでコーナリングフォースの急激な立ち上がりを避けながら、乗り心地を活かしているからだ。そこはさすがにルノーである。

文=齋藤浩之(ENGINE編集部) 写真=小野一秋

(ENGINE2009年2月号)

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