2024.09.17

CARS

アウトバーンで288km/h出た! モータージャーナリストの桂伸一が試乗 2008年モデルのV8ヴァンティッジは、どんなアストン・マーチンだったのか?【エンジン・アーカイブ「蔵出し記事シリーズ」】

モータージャーナリストの桂伸一さんがドイツで試乗。

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N24と同じ感覚

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舞台はアウトバーンに移り、各ギアでフル加速を試す。1速75、2速120、3速160、4速200、5速250km/h、とハイ・ギアードなここまでの展開は、4.3リッターのV8ヴァンティッジ・ロードスターに試乗したときのメモと変わらない。6速は、大型トラックに行く手を阻まれたため、それ以上突きつめることはやめたが、メーカーのデータによると288km/hと、4.7リッターは最高速が10km/hほど伸びている。空気の壁を切り裂いて突き進むエンジン出力の威力だ。

外観は変吏なしで、新型であることを見せびらかさない。0-100km/hは5秒から4.8秒へと確実に性能は向上しているのに。


つい数時間前までニュルのバック・ストレッチ約3km、アクセルを床まで踏み込んでいた情景が蘇る。レース仕様のV8ヴァンティッジN24は車重1350kg。標準から250kgも軽量化されている。だから加速も旋回も制動も、アスリートのように俊敏だった。

N24の最高速はストレート・エンドの下りで記録される270km/hオーバー。つまり、最高速に関しては4.7リッター化されたロード・カーのヴァンティッジのほうが速い。車重は1630kgあるが、4.7リッターV8は、4.3リッターのままのN24の415psを上回る425psと47.9kgmのスペックを誇る。最高速に向けてグイグイ背中を押し出される強力な加速Gと、荒れた路面でもリフトを感じさせることなく、吸い付くように最高速に向って行くその安定性は、ロード・カーもN24も同じ感覚だ。

4.7リッター化にあたり、もうひとつ大きな変化があった。乗り味である。厳密にはそれは結果論で、目的はダンピングの適正化にあったはずだ。4.3リッターの特にクーペは、微低速域で、サスペンションのスムーズなストローク感に欠けた。凹凸を踏みながら加速に移ると、駆動輪であるリア・タイヤがドタバタと暴れたのだ。

その点、4.7リッターはサスのストローク感そのものがスムーズで、入力を正確にビルシュタイン製ダンパーが減衰して受けとめる。スムーズにストロークするから、乗り味そのものもスムーズになっている。従来からクーペよりもロードスターのほうがバネ・レートその他諸々の関係から滑らかな乗り味だったが、新型の場合、クーペはより良く、ロードスターはさらにコンファタブルである。

ちなみに、クーペで30%以上、ロードスターは20%以上強化したスポーツパックの設定もある。日本での使用を考えると標準で十分だが、200km/hが現実の欧州で乗ってみると、“走り中心”に考えるのならこっちか、という気になる。

ハンドリングは正確さに鋭さをプラスした。狙ったラインに乗せやすくなっている。加速時に10%、アクセル・オフ時に30%のロック率を持つLSDは、安定方向に効くほか、車輌安定装置のDSCをOFFにすると、旋回中、容易にパワー・スライドを誘発する。フロントのグリップによるきっかけと、あり余るエンジン出力により、このテのプレイはお手のモノだ。通常はもちろん、DSCはONの安定走行をお薦めする。

文=桂伸一 写真=ASTON MARTIN



■アストン・マーティンV8ヴァンティッジ
駆動方式 FR、トランスアクスル方式
全長×全幅×全高 4380×1865×1255mm(クーペ)
ホイールベース 2600mm
車両重量 1630kg(クーペ、MT)
エンジン形式 オール・アルミV8DOHC32バルブ
排気量 4735cc
ボア×ストローク 91×91mm
最高出力 425ps/7000rpm
最大トルク 47.9kgm/5750rpm
トランスミッション 6段MT/6段セミAT(ロボタイズド式)
燃料タンク容量 80リッター
サスペンション前後 ダブル・ウィッシュボーン/コイル
ブレーキ 通気&溝式ディスク前355mm/後330mm
タイヤ・サイズ 前235/40ZR19 後275/35ZR19
タイヤ銘柄 ブリヂストン・ポテンザ

(ENGINE2008年8月号)

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