2024.06.15

CARS

重さ1700kgをこえる4シーター・クーペが叩き出した驚異の記録、7分38秒5 日産GT-R誕生時の貴重なリポートを発掘

日産GT-Rはこうしてデビューした!

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別次元の安心感

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僕は日産がテストに使った日本仕様の997型の6段MTつき911ターボにもおなじ条件で乗った。ちがいはあきらかだった。速度無制限区間の直線でも、200km/hをこえるスピードで進入できるゆるい超高速コーナーでも、GT‐Rは911ターボとは別次元の安心感をもたらした。そして3速を多用する山間のワインディング・ロードを、疾風のように駆け抜けた。GT‐RのVDCは、テールを振り出すことも許すスポーティな設定を持ち、その領域にまで踏み込むドライバーには限界コーナリング時にエクストラの楽しみを与えるけれど、そんなときでもステアリングを握る手には、リア・タイヤが滑りつつもたしかに接地していることが伝わる。サスペンションにはまだまだ余裕があることがわかる。そんな状況でもクルマはいたってクールなのだ。だから、ドライバーもクールに運転できる。GT‐Rドライビングを、いついかなるときでも支配するクールな空気には瞠目するほかなかった。

ドイツから戻って数週間後、こんどは「仙台ハイランド・レースウェイ」と周辺の一般路で、先行生産のGT‐Rに乗った。全長4km強の仙台のサーキットは、GT‐R開発陣が「ミニ・ニュルブルクリンク」として常用した攻略のむずかしい、それゆえに走りがいのあるコースだった。僕はそこをじぶんの限界に挑んで走った。それでもクールな心理状態は維持できた。そして、ドイツで得たよりもさらにいい印象を得、同時に心底、運転して楽しいクルマだとおもった。GT‐Rは日本が生んだベストのドライバーズ・カーであり、ポルシェやフェラーリのどのモデルと相対しても、少しもヒケをとらない1台であることへの確信は、揺るぎのないものになった。

最高達成

こうしてGT‐Rを絶賛するのは、「走る、曲がる、止まる」というクルマの基本性能における、それがかんがえ得る最高の達成であるからだ。諸性能についての詳論は後段に譲るとして、僕が感銘を受けた最大のポイントは2つある。ひとつは、レクサスLSはおろかどんな高級サルーンも実現しえなかったまったく振動のないボディであり、それがどんな場所を走っていても、ほかのクルマで得たことのないスムーズな走行感覚を与えている。もうひとつは、抽象的ないいかたになるが、どんなに限界的な速度を発揮し、どんなに限界的なコーナリングに挑んでいても、ドライバーがエンジンや足回りといったクルマを構成する諸物件と密に対話しながらドライブできることだ。ドライバーは、ステアリングとシフト・パドル、そしてペダルを通して、つねにクルマに話しかけているわけだけれど、その話しかけにひとつひとつ、くっきりと応えてくる。開発責任エンジニアの水野和敏さん、開発責任ドライバーの鈴木利男さんが、ドライバーとの対話能力が比類なく高いクルマをつくろうとして、それをみごとに達成したのだ。

部分的に特記したいのは、エンジンもデュアル・クラッチのトランスミッションも、レベルがものすごく高いことだ。V6ツイン・ターボは、ターボであるにもかかわらず軽々と、しかももっともよく調教された高性能エンジンだけに見られる緻密な、雑味のないスムーズなメカニカル・ノイズを上げてまわっていく。そのためか、わかりやすいエキサイティングなサウンドの高まりはないが、上質感は比類ない。変速所要時間が0.2秒というデュアル・クラッチ式のトランスミッションにいたっては、夢のような変速マナーを示す。GT‐Rの変速のすばやさを味わうと、0.06秒をうたうフェラーリ430スクーデリアの所要時間は0.3秒以上にちがいないとおもえてくる。ショックは一切ないのに、変速音とトルク・アウトプットの変化が変速の事実を、手ごたえとともに知らせる。そこがVW/アウディ系DSGの無抵抗的スムーズさとは一線を画している。もうひとつ、サーキットを全力アタックしてもちっともへこたれなかった、たんなるスチール製のブレーキも賞讃に値する。

これほどまでにさり気なく異次元の高性能を発揮し、ドライバーのことをおもってつくられたクルマはない。GT‐Rの真価はそこにある。

文=鈴木正文(本誌) 写真=小林俊樹/日産自動車



NISSAN GT-R
SPECIFICATIONS

ENGINE
VR38DETT twin-turbocharged 3.8-liter V6.
480ps@6,400rpm. 60kgm@3200-5200rpm.
Cast alminium cylinder block with plasma-sprayed bores.

DRIVETRAIN
ATTESA ET-S All-Wheel Drive (AWD)
Independent rear-mounted transaxle integrating transmission, differential and AWD transfer case.
Electronic traction control plus 1.5-way mechanically locking rear differential.
Vehicle Dynamics Control (VDC-R) with three driver-selectable settings.

TRANSMISSION
6-speed Dual Clutch Transmission with three driver-selectable modes.
Fully automatic shifting or full sequential manual control via gearshift or steering wheel-mounted paddle shifters.
Dual clutch design changes gears in less than 0.5 second (0.2 second in R mode).

SUSPENSION
4-wheel independent suspension with Bilstein DampTronic(R) system with three driver-selectable modes.
Front double-wishbone/rear multi-link configuration with aluminum members and rigid aluminum subframes.

BODY/CHASIS
Exclusive Premium Midship platform with jig-welded hybrid unibody.
Aluminum hood, trunk and door skins. Die-cast aluminum door structures.
Carbon-reinforced front crossmember/radiator support.

(ENGINE2008年2月号)

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