2024.03.17

CARS

これが唯一の自然吸気V8 OHVを搭載するシボレー・コルベットの乗った自動車評論家のホンネだ!!「アメリカンV8は内燃エンジンの世界遺産である!」by 清水草一

唯一の自然吸気V8 OHV! シボレー・コルベット

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今年もやりました「エンジン・ガイシャ大試乗会」。2024年、大磯大駐車場に集めた注目の輸入車36台にモータージャーナリスト36人が試乗! リア・ミッドに鎮座する伝統の自然吸気6.2リッターV8 OHV。シボレー・コルベットに乗った清水草一さん、高平高輝さん、佐野弘宗さんのホンネやいかに?


「本物はこっちだ!!」清水草一

今さら記すまでもないが、アメリカンV8は内燃エンジンの世界遺産である。それは大排気量のV8 OHVでなくてはならないと思っている。フェラーリは必ずしも12気筒である必要はないが(私見です)、アメリカンV8はOHVであってほしい。大排気量V8 OHVなんて、他にどこにも残っていないじゃないか。

よってコルベットは、話題のZ06ではなく、スタンダードモデルでいい。いや、スタンダードモデルでなければならない。Z06はDOHCだからっ!

コクピットはドライバー・オリエンテッドの考え方が貫かれている。右ハンドル仕様のペダル・レイアウトに違和感はない。バケット・シートは掛け心地、ホールド性ともに抜群だった。


実際、コルベットのスタンダードモデルに乗り、6.2リッターV8 OHVの咆哮を聴けば、「本物はこっちだ!」と叫びたくなる。コルベットにとって絶対性能などどうでもいい。このフィーリングがすべてだ。

本音では、コルベットはFRのままでいて欲しかったとも思っているが、FRのトラクション能力では、アクセルを床まで踏みつけるのが難しい。その点、ミドシップ化されたこの7代目は、心置きなくV8パワーを解き放ち、『蘇える金狼』の如く「ハッハハハハハ!」と高笑いすることもたやすいのであった……。




「世界一売れている」高平高輝

世界一のご長寿スポーツカーであるコルベット(初代のデビューは1953年!)が現行C8シリーズでミドシップに生まれ変わった時には本当に驚いた。でも伝統的なFRコルベットのファンは受け入れるのか? と心配したが、依然として新型も世界一売れているスーパースポーツカーである。

C8コルベットはミドシップされる6.2リッターV8エンジン以外、オール・アルミ・ボディもサスペンションも8段DCTもすべて新開発で、さらに史上初めて最初から右ハンドル仕様も用意されている。

すでによりワイドなボディに自然吸気5.5リッターDOHCV8を積む高性能版Z06も登場済みだが、スタンダード・モデルでもその実力は世界レベルである。

リア・ミッドに搭載されるエンジンは自然吸気6.2リッターV8 OHVと伝統を継承する。ドライサンプ・オイル・システムを採用し、サーキットにおける潤滑性能が高められている。自社開発の8段DCTが組み合わされる。

大排気量V8の余裕は街乗りでも明らかで、絞り出すのではなく知らないうちにパワーが滑らかにあふれ出す感覚は独特で、いっぽう回せば緻密にリニアに盛り上がっていくのは自然吸気ならでは、である。

いささか劇画的なスタイルやインテリアには好き嫌いがあろうが、ゆっくり流しても飛ばしても洗練されている。きっとスポーツカーの歴史に残る一台となるだろう。シボレーの、米国の底力を体感してほしい。



「フレンドリーなオーラ」佐野弘宗

今の日本市場では生粋のスポーツ・ブランドで押しているシボレーだが、米本国での本来の姿は、民衆的なポピュラー・ブランドである。

だから、1420~1800万円という価格も絶対的に安くはないけれど、きょうびのスーパーカーとしては爆安というほかない。

シボレーならではのフレンドリーさは価格だけなく、デザインや使い勝手、乗り心地にも一貫する。内外デザインは一見ギミックっぽいところも多いが、実際には車両感覚はバツグンだし、コクピットまわりの人間工学も考えぬかれている。

リア・ミッドに鎮座するのは伝統の自然吸気6.2リッターV8 OHV。最高出力502ps/6450rpm、最大トルク637Nm/5150rpmを発生する。8段デュアル・クラッチ・トランスミッションを介し、後輪を駆動。0-100km/h加速2.9秒を誇る。全長×全幅×全高=4630×1940×1220mm。ホイールベース=2725mm。車両重量=1670kg。クーペは1420万円~。コンバーチブルは1800万円。

センターコンソールに縦一列のスイッチは確かに使いやすくはないが、ここにあるのは頻繁に触る必要がない空調関係のみ。ドライビング関連の機能はすべて、運転席からピタリと手の届くところに集中しているのだ。

乗り心地もしかり。運動性能は完全に超一流スポーツカーなのに、乗り心地はすこぶる優しい。コルベットで走っているときに浴びせられる周囲の視線も、欧州スーパーカーでありがちな畏怖系より、もっと屈託がない気がする。この素直に元気をくれる明るいオーラは、コルベットならではだ。

写真=神村 聖(メイン)/茂呂幸正(サブとリア)

(ENGINE2024年4月号)

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