2024.05.14

CARS

「最後のルノー・スポールであり、最後のエンジン車だ!」モータージャーナリストの石井昌道がルノー・メガーヌR.S.ウルティムほか5台の輸入車に試乗!

モータージャーナリストの石井昌道さんが乗った輸入車はこれ!

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モータージャーナリストの石井昌道さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! アルファ・ロメオ・トナーレ プラグイン・ハイブリッド、シボレー・コルベット、ランドローバー・ディフェンダー110 V8、メルセデスAMG EQE53 マチック・プラス SUV、ルノー・メガーヌR.S.ウルティムに乗った本音とは?


人の感覚ありき  

日本車は世界トップレベルであることは間違いなく、それを誇らしく思ってはいる。とくに自動車雑誌の編集部でアルバイトを始めた1990年は日本車が飛びきりに元気でガイシャに目が行かないほどだったが、仕事でいろんなクルマに触れるうちに、何かが足りないように思うになっていった。数字には表れない感覚的な性能において惹かれることが、圧倒的にガイシャのほうが多いのだ。例えばステアリングから伝わってくる、タイヤが路面を捉えているフィーリングなどが濃厚。ただ移動するだけなら希薄でも構わないかもしれないが、フィーリングがいいほどクルマとの一体感が生まれて運転が楽しくなっていくとともに、ロング・ドライブでの疲労度にも違いが生まれてくる。シートの座り心地なども然り。最近では日本のメーカーも“人間中心”という言葉をよく使うが、本当にそれが実現されているのはガイシャのほうなのだ。




アルファ・ロメオ・トナーレ プラグイン・ハイブリッドQ4ヴェローチェ「2面性を楽しめる」


アルファ・ロメオはSUVであってもスポーティに走らせるのが大好きな人たちが造っているのだということは、FR系プラットフォームのステルヴィオで感じていたが、ハードウェアはまったく違うFF系プラットフォームのトナーレでも同様だった。ステアリング・ギア比がクイックで切り始めるとノーズがグイッとインへ向いていく。まるでクルマが曲がりたがっているようなのだ。一昔前のアルファ・ロメオも、そういった味付けだったがシャシー性能が追いつかず、いざコーナーに入っていくと急にアンダーステアになったり、逆に巻き込んだりしたものだが、テールがムズムズとしながらもコントローラブルで、じつに心地良くコーナーをクリアできる。PHEVはバッテリーをフロアに搭載して重心が下がっているから、SUVのネガが消えていて素晴らしいハンドリング・マシンになっているのだ。一般的なハイブリッドに比べればモーターは強力なので低速からのダッシュは鋭く、速度が伸びるとエンジンパワーが本領を発揮。エンジン車やBEVでは得られない2面性を楽しめるのもPHEVならではだ。




シボレー・コルベット「文句の付けようがない」 

レースでライバルに勝つために、60年以上の歴史のなかでもっとも衝撃的なミドシップ化という道を選んだコルベット。そう聞くと、かなりスパルタンな乗り味を想像するかもしれないが、海岸沿いの有料道路を淡々と流して走ると、驚くほど乗り心地が良く、昔ながらのアメリカ車のフンワリとした感覚すらある。これでワインディング・ロードを走ったらどうなっちゃうのかな? と心配するほどなのだが、いざアクセレレーターを踏み込みコーナーへ飛び込んでいけば見事なハンドリングを見せつける。とにかくサスペンションのクオリティが高いのだ。余計なフリクションのないストローク感、どんな場面でも接地性が良くて変化が少なく、安心してV8のパワーを解き放っていける。それに加えてミッドシップ化で得られた良好な重量配分とコルベット特有の重心の低さで、それほど足の硬さを感じないのにとんでもなくコーナリングが安定しているのだ。そういった特性だから荒れた路面にも強く、ドライバーに自信を持たせてくれる。文句の付けようがないスーパースポーツに生まれ変わったのだ。




ランドローバー・ディフェンダー110 V8「痛快でたまらない」

オフロードの王者にして現行モデルは快適かつデザインでも魅せるようになったディフェンダー。リセールバリュー・ランキングでトップになるほどの人気で、多くの人が選んでいるのが大型SUVと相性のいいディーゼルというのも納得がいく。お財布に優しく1タンクあたりの航続距離も長いから当然だろう。ところが、新しく加わったのはちょっとしたキワモノといえるV8のモデルだ。レンジローバーのようにBMW製を搭載するのではなく、自社開発の由緒あるAJ型ユニットはスーパーチャージャーによって低回転域からスムーズに強大なトルクを生み出すから、ちょいとアクセレレーターを踏み込むだけで車両重量2450kgの車体を素早く加速させる。本格オフローダーのサスペンションはソフトタッチだから、明確にお尻が沈み込んでいくのがわかって面白い。そうはいってもシャシーがエンジンに負けているなんてことはなく、登りのワインディング・ロードではちょっとしたスポーツカー顔負けのペースで駆け抜けていける。本格オフローダーでこんな走りができるのが痛快でたまらないのだ。




メルセデスAMG EQE53 マチック・プラス SUV「究極のレベル」 

ここ数年は仕事の半分近くがBEVであったりするほど、多くのモデルに試乗しているが、テクノロジーの進歩に舌を巻くことも少なくない。その1つがメルセデス・ベンツが真打ち登場とばかりに送り出してきた、BEV専用プラットフォームのフラッグシップ・モデル達だ。そのうちの1台であるEQE SUVを今回走らせてみると、改めて凄みを感じた。とにかくノイズの抑え込みが半端なく、各部のフリクションの少なさによる上質な乗り味など、高級車として究極のレベルにあるのだ。BEVはエンジン音がない分、ロード・ノイズや風切り音、特有のエレキ・ノイズなどが目立ちがちになるものだが、EQE SUVは「やればここまで出来るのか!」と感心させられるほど静か。かつて静粛性といえば日本車がナンバーワンで、欧州車は音に無頓着だと言われていたが、いまはメルセデス・ベンツの足元にも及ばないほどになってしまった。欧州プレミアム・ブランドが本気を出したときのおそろしさをまざまざと見せつけられるとともに、最新テクノロジーを味わう幸せを噛みしめることができるのだ。




ルノー・メガーヌR.S.ウルティム「最高の気分になれる」

アルピーヌへ改名することが決定しているから、このメガーヌR.S.が最後のルノー・スポールであり、しかもアルピーヌはBEV専売になるから最後のエンジン車でもある。それを記念して送り出されたのがウルティムだ。2004年に2代目メガーヌで初登場したメガーヌR.S.は、公道を走れるFFレーシング・カーのようでいつも乗る度に興奮させられてきたが、これでお別れだと思うと寂しさがこみ上げてくるとともに、短い試乗でも存分に味わわせてもらおうと峠道へ向かった。走り出した瞬間はツンツンとした硬めの乗り味だが、速度を上げるとしっとりと落ち着いていき路面の荒れを見事に吸収する。ウルティム専用の軽量ホイールによって、これまで以上に足捌きが上手なのだ。4コントロールやHCCといった独自のシャシー・テクノロジーによるハンドリングはFFスポーツの1つの完成形。迫力のあるエグゾースト・ノートを聞きながらドライビングしていると最高の気分になれる。BEVでもいいクルマを造ってくれるだろうが興奮度の高さでこれを超えることは、まだ想像ができないのだ

(ENGINE2024年4月号)

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