2024.05.27

CARS

「これはもう自動車の範疇を超えた、1つの空間芸術作品だ」 モータージャーナリストの金子浩久がロールス・ロイス・ゴーストほか5台の輸入車に試乗!

モータージャーナリストの金子浩久さんが5台の注目輸入車に試乗

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フィアット・ドブロ「アクティブに使いこなそう!」

箱型ボディは荷物をたくさん積むことを主な目的としていて、ヨーロッパでは商用、業務用として使われることも多い。バンパーなどの外装の樹脂パーツだけでなく、車内もブラック基調のプロ仕様といった感じ。シフトセレクターがミニマルなダイヤル式であることだけでなく、操作系統はシンプルなダイヤルやレバーなどが多用されている。しかし、左右独立調整式オートエアコンやアップル・カー・プレイ/アンドロイド・オートなどに対応したモニター画面、USBソケットなど必要なものは装備されている。ADASもACCだけでなく車線逸脱警告も標準装備。現代のクルマとして必要な安全性と利便性が担保されていて心強い。1.5リッター4気筒ディーゼルで前輪を駆動する走りっぷりも用途や見た目をうれしく裏切って快適だ。危惧した箱型ボディの共鳴もなく西湘バイパスを往復した。後席の3つのシートが独立していて、ホールド性も良好。助手席背もたれも倒せて長いものも積める。クルマをアクティブに使いこなすための1台で、今日の4台の超高級車とはまた違った世界が広がっていた。




メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス「特別な1台」

同乗試乗の2台目はメルセデスAMG S63。乗車する前からただならぬ妖気のようなものを発しているのを2人目のEPC会員さんと一緒に感じ取った。乗る前から、すでにボディ・カラーにやられた。「カラハリゴールド」と名付けられた、メタリックを含む金色なのだが、深みと艶が他の金色と明らかに違っている。遠くからでも存在感は抜群なのだが、近づいて見ても引き込まれてしまう。各部分のエッジにはクロムメッキが施されていて、それも普通のクロム色ではなく、やや金色掛かって見えた。「こんなところも特別仕立てですよ」とEPC会員さんが見付けたのは、トランクフード右側に貼り付けられた「S 63」のエンブレム。表面はクロム色だが、黒いはずの側面が赤。そうした特別仕立ては内外にいくつもあった。4リッターツインターボエンジン(450kW)にモーター(140kW)が組み合わされたPHEVで、一瞬だけアクセルペダルを深く踏み込んでみた加速は超強烈だったが、荒々しさは皆無。乗り心地も洗練の極致。PHEVの電気パワーを、エコよりも走行性能にフル活用したAMGセダン。




ロールス・ロイス・ゴースト「空間芸術作品」

鮮やかな“トゥカナ・パープル”というボディ・カラーに細いライム・グリーンのコーチラインが入ったゴーストの観音開きドアを開けると、車内でも眼を奪われる。黒の革シートと白のドア・ハンドルとセンター・アームレストを基調としながらも、ダッシュボードの庇部分にはコーチラインのライム・グリーンを反復させている。星空のように無数の細かな光が天井で煌めいている。他のクルマで同じことをしたら派手になり過ぎてしまうのだけれども、ロールス・ロイスでは上品そのものだ。全長5546mm、全幅2148mm、重量2.5tを超えるにもかかわらず、走り出せば巨大さを感じない。571馬力を発生するV12エンジンはジェントルそのもので、工事中の荒れた路面とは思えないほど西湘バイパスを滑らかに走っていった。柔らかく穏やかな乗り心地が快適そのものだが、抑制も効いているところが現代的だ。意匠や素材遣いなどだけでなく、きっと他にもさまざまな凝った技巧が備わっているのだろう。これはもう自動車の範疇を超えた、1つの空間芸術作品だ。

文=金子 浩久

(ENGINE2024年4月号)

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