2024.06.09

CARS

「一見さんが迂闊に手を出してはならない!」 モータージャーナリストの渡辺敏史がポルシェ911GT3 RSほか5台の注目輸入車に試乗!

モータージャーナリストの渡辺敏史が5台の注目輸入車に試乗

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シトロエンE-C4シャイン「コスプレは意匠のみにあらず」

そもそもC4は、旧き佳き時代のシトロエンのエッセンスを端々にちりばめたように企画された、そんな一面がある。GS風だったりXM風だったりと、ディテールからそれを嗅ぎ分けるのもクルマ好きのお楽しみだが、コスプレは意匠のみに留まらない。プログレッシブ・ハイドローリック・クッション=PHCダンパーとアドバンスト・コンフォート・シートという2つのアイテムで作り込んだ銘柄としては、最も乗り心地で往年のハイドロ感を感じさせてくれるのではないかと思う。

そこにBEVならではの無音に近い車内空間やシームレスな加減速感が組み合わせられたのがE-C4だ。走る分には、代々のシトロエンが度々例えられてきた宇宙船的なフィーリングそのものである。なんなら回生から油圧へと切り替わる際に効きが強く表れるブレーキの癖さえシトロエンらしく思えてしまうから困ったものだ。航続距離は405kmと今日びのBEVとしてはちょっと心許ないが、行動半径や充電環境が許すなら、その乗り味だけでちょっと手を伸ばしてしまいそうな魅力がある。




ポルシェ911GT3 RS「気概が求められる」

911は真ん中のカレラを軸に、全能安楽的ターボ系と求道官能的GT3を正対に据えながら、仏像のように三尊のフォーメーションを組んでいる。対してRSはそこから一線を画する不動明王的な立ち位置にあったわけだが、近年その炎量が二次曲線的に増しているように思うのは僕だけだろうか。最新のGT3 RSは走り出した瞬間から、ピットレーンを移動するレーシングカーのような剥き出し感や直結感をその振る舞いで思い起こさせる。バネ下のアタックやノイズの入りっぷりも半端ではない。マウント類もビシビシに締め上げられているだろう、微振動もあちこちから伝わってくる。これでサーキットに行かないのは人もクルマも生殺しだよなあと、そこで思い出したのは80年代のレーサー・レプリカと呼ばれていたバイクだ。公道性能など眼中なしで一点の目標のためにすべてをかなぐり捨てる、このクルマからはそんな鬼気迫るオーラがビシビシ発せられている。オーナーに求められるのは進んで護摩行に臨むような気概だ。一見さんが迂闊に手を出してはならないものだと思う。




フォルクスワーゲンID.4ライト「過日の絶品を思い出す」

VWのBEV戦略の柱となるIDシリーズ。その内で要となる世界戦略車がID.4だ。ランニング・チェンジは細かく行われており、直近では航続距離の延長に加えて搭載バッテリー容量を少なくして価格を抑えたライトもいよいよ上陸を果たした。航続距離はプロの618kmに対して435km。使い方に応じて選んでくださいというわけだが、行動半径は小さくなるも日常的なニーズはライトでカバーできると思う。

デザイン的な差異以上に既存車との違いを感じるのはパッケージングだ。BEV専用プラットフォームを用いるだけあって、前席の足元まわりや後席の居住性は実寸の割に広々としている。始動の儀式もなくドライブ・セレクターの操作が起動コマンドになるなど、インターフェースの合理性も先進的だ。回生減速度調整のためのパドルが欲しくはなるが、加速や制動のシームレス感はさすが手練れの自動車屋のそれ。低重心+後輪駆動を活かしたライド・フィールのすっきりぶりやまろやかさに、個人的には過日の絶品、ゴルフVIのコンフォートラインを思い出してしまった。

文=渡辺 敏史

(ENGINE2024年4月号)

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