2024.03.06

CARS

燃料電池とPHEVを合体したホンダの新しいFCEVが登場 新たな取り組みで水素の普及を図る

ホンダの燃料電池車(FCVもしくはFCEV)への取り組みは早く、2002年には全長4165mmのコンパクトカー「FCX」を発表し、FCEVとして世界で初めて米国環境保護庁とカリフォルニア州大気資源局認定を取得。日本と米国でリース販売をスタートさせている。「FCX」の航続距離は355km(LA-4モード走行時)だった。

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クラリティ・フューエル・セルの後継車

2008年には航続距離620km(10・15モード)の「FCXクラリティ」を、2016年には航続距離約750km(JC08モード)の「クラリティ・フューエル・セル」(CLARITY FUEL CELL)のリース販売を開始した。しかし、販売の大半が官公庁を中心というのが実状。水素ステーションの整備もEVの充電スポットと比べると遅れ気味で、普及してきたとは言いがたい状況もあり、一旦FCEVをラインナップから落としていた。



2024年夏に販売開始

しかし、2024年夏にホンダが再びFCEV市場に帰って来る。今回、日本で発売を予定している新型車「CR-V e:FCEV」(シーアールブイ・イーエフシーイーブイ)をお披露目した。日本メーカーでは初めて外部給電が可能なプラグイン・ハイブリッド・タイプとなるのが大きな特徴だ。

一充填あたりの航続距離は600km以上、家庭などで充電すれば最大で60kmのEV走行が可能だ(航続距離はともにWLTCモードでの社内計測値)。つまり、日常の買い物や近距離の通勤などであればEVとしてまかなえることになる。燃料電池を併用すればロングドライブでの電池切れの心配も少なくなるし、水素はバッテリーEVの充電よりも短時間で充填できるのもメリットだ。



高出力の外部給電も可能

また、最大1500WのAC給電が可能な外部給電機能にも対応。普通充電ポートにAC車外給電用コネクターの「Honda Power Supply Connector」(パワー・サプライ・コネクター)を接続すれば、車両から気軽に電気を取り出すことが可能。日常やレジャー、災害時の停電などで頼りになる存在になる。

加えて、日本仕様にはラゲッジ内に設置されたCHAdeMO(チャデモ)方式のDC給電コネクターに、「Power Exporter e:6000」(パワーエクスポーターイー6000)、「Power Exporter 9000」などの可搬型外部給電機を接続することで、非常時や屋外イベントなどで高出力の電力供給が可能なDC外部給電機能も用意。最近は、自然エネルギー由来の電力を使うサスティナブルなイベントも多く開催されており、そういったシーンでもCR-V e:FCEVは重要な役割を担えるのだ。



登場すれば日本で買える唯一の存在

現在日本で買えるFCEVは官公庁のニーズも満たすセダンの「トヨタ・ミライ」とSUVの「ヒョンデ・ネッソ」だが、ともにプラグイン機能はない。プラグイン機能(充電機能)を備えたFCEVとしてはメルセデス・ベンツが世界初となるSUVの「GLC F-CELL」を日本でも発売したことがあるが、すでに販売は終了している。

CR-V e:FCEVはキャビンやラゲッジのスペースをセダンよりも確保しやすいSUVであるのも魅力だ。ラゲッジは荷物の整理もしやすい2段式。フレキシブルボードを用いることでフラットで広いラゲッジを作り出せるなど、水素タンクの張り出しを使い勝手の向上に積極利用するアイデアが盛り込まれている。日本市場だけでなく、同じく導入が予定されている北米市場でもヒットの資質は十分にありそうだ。



GMと共同開発

燃料電池システムはホンダと以前からタッグを組んでいるGMと共同開発され、両社の合弁会社であるミシガン州の「フューエル・セル・システム・ミシガン」(Fuel Cell System Manufacturing)で生産される。クラリティ・フューエル・セルに搭載されているシステムより、白金使用量とセル数の削減、量産効果などでコストを3分の1に抑えたという。さらに耐久性を2倍に向上させ、耐低温性も大幅に高めたとしている。

燃料電池システムを中心としたパワーユニットを一体化することで小型化、軽量化を実現し、ベースとなるCR-Vのエンジン・マウントをそのまま活用することでコスト低減にも寄与しながら衝突安全性も高まったという。振動や騒音もクラリティよりも大幅に小さくなり、動的質感の向上も図られている。

CR-V e:FCEVはオハイオ州の「パフォーマンス・マニュファクチャリング・センター(Performance Manufacturing Center)で生産され、日本に輸出されることになる。

ベース車を北米や中国などで販売されている6代目CR-Vとすることで、先述したように新規にプラットフォームや上屋などを起こすよりもコスト削減も期待できる。価格も抑えられれば、既述のパッケージング面の利点も含めて、歴代のホンダFCEVよりもヒット作になるかもしれない。なお、日本での販売方法や価格などは現時点ではアナウンスされていない。



文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)

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