2024.04.06

CARS

ヤフオク7万円で買ったシトロエン、修理の間は代車生活【シトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#35/ランチア・ゼータ2.0t(1997年型)短期リポート後篇】

ランチア・ゼータの燃料タンクの容量はなんと90リッター!

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加減速は自由自在

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それをもたらしくれるのは、エグザンティア・ターボCTアクティバと共通の、2リットルSOHC 8バルブ・ターボの、低い位置に搭載されているレイアウトと出力特性である。



低重心化による鼻先の軽さに加え、ごく低い回転域からターボが効くから、5段MTとの組み合わせなら加減速はほんとうに自由自在だ。シフトアップのたびに、大きな車体をあっさり押し出していく。

昔同じエンジンのエグザンティア・アクティバに乗った時、きっと最上級グレードだし、さぞ上まで回るスポーティなパワーユニットだろうと期待して、ちょっと拍子抜けしたことを思い出す。でも、むしろこれがいい。3000rpmも回せば十分なのだ。しかも回転計をまったく見なくても、シフト・タイミングは自然と分かる。渋滞時など横着をして1速、3速、5速とシフトを飛ばして変速しても、エンジンはよく粘ってついて来る。

こうした実用域での特性をとにかく扱いやすくしているからこそ、操るリズムを少し早くするだけで、身のこなしはぐっと小気味よいものになる。絶対的な速さでなく、路上における気持ちのいい速さ。2000年代以前の欧州の、特にイタリアの小型実用車は、みんなこんな感じだった。

自分のものにしたい

もしこの代車がランチア・ゼータでなく、フィアット・ウリッセだったりシトロエン・エバジオンだったりプジョー806だったとしたらどうか。たぶん僕はその実用性と操作感の心地よさだけ惚れてしまうな、と思った。

ゼータのホイール・キャップ。シンプルだが美しい。

けれど、これはランチアだ。アイドリングだけでなく高速巡航時も含め、耳ざわりな音だけをきれいに遮っているところや、少し柔らかめだけど、ぐらっと大きく揺れるような動きをいっさい出さずに曲がっていく足まわりの仕立ては、いかにもこのブランドらしい見事なものだと思う。

ただ速く走りたいと思うクルマはたくさんある。上品なクルマもたくさんある。けれど、綺麗に丁寧にスムーズに、いわば上品に速く走らせたい、と思わせるクルマはそうそうない。スポーティだけど奥ゆかしさがある、とでもいう感じだろうか。同じイタリア車でもいまのマセラティはもっと押し出しが強いし、ベントレーは優雅で近い気もするがやはりイギリスというお国柄が出ている。まして、どちらのブランドにも、こんなミニバンは存在しない。見た目にも室内の装いにもパワートレインの味つけにも足まわりのセッティングにも、ゼータはそんなことを思わせるものがある。

いまの僕の生活の中には、ゼータのようなクルマはまったく必要はない。でも、運動体としての気持ち良さと、秘められたスポーティさと、とてもエレガントな装いと、おまけにこの希少性は、自分のものにしたい、という欲望を強く募らせるのだった。

最後にゼータの燃費について記しておこう。高速道路が6割、一般道が4割くらいの比率で、ほぼ渋滞などにはまることなく750kmほど走って給油したところ、ハイオク74.96リットルを飲み込んだ。つまり約リッター10kmだから、普段乗っているエグザンティアとまったく同じである。

エグザンティアが自然吸気エンジンで4段ATで車重1340kgなのに対し、ゼータはターボ過給エンジンで5段MTで車重は1690kg。ちなみに排気量は同じ2リットルだ。燃料タンク容量はエグザンティアが65リットルしか入らないのに対し、ゼータは90リットルという大容量。つまり足の長さはゼータの圧勝ということだ!

このエグザンティアと同等の燃費という現実も含め、この短くも濃い代車生活のおかげで、近ごろ僕は国内外のウェブサイトを巡り、ウリッセ、エヴァジオン、806とともに、ゼータの売り物をついつい探してしまう始末である。

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=神村 聖(集合写真)/上田純一郎 撮影協力=カークラフト

■CITROEN XANTIA V-SX シトロエン・エグザンティアV-SX
購入価格 7万円(板金を含む2023年3月時点までの支払い総額は234万6996円)
導入時期 2021年6月
走行距離 17万4088km(購入時15万8970km)

(ENGINE WEBオリジナル)

◆エンジン編集部ウエダのシトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート連載一覧はコチラ
ヤフオク7万円25年オチのシトロエンの長期リポート連載!

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