2024.09.24

CARS

贅沢は敵、というより素敵! BMW760iL(2008年) 6リッター、V12ツイン・ターボ搭載の旗艦は運転席がよかった!【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】

BMWの旗艦、V12を搭載する760ilの蔵出し記事【エンジン・アーカイブ】

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【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】ご存じ中古車バイヤーズ・ガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の過去の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている人気企画の「蔵出しシリーズ」。今回は、2009年10月号に掲載したBMW760iLのリポートを取り上げる。BMW7シリーズの頂点モデルである6リッター、V12を塔載する760Li。ツイン・ターボを得て544psのスーパー・パワーを発揮する真っ白な1台に、ミュンヘンを舞台に開かれた国際試乗会で試乗。当時は世界的な自動車不況のまっただなか、この贅沢な1台をどう評したのか?

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生意気な感じ

760Liは760iのロング・ホイールベース(LWB)バージョンである。常識的にいえば、760iはじぶんで運転するクルマ、760Liは運転手付きで後席に乗るクルマ、ということになる。しかし、稀代のスポーツ・サルーン・メーカー、BMWが仕立てると、LWBの760Liは、たんによりゆとりのある後席スペースをもつ760iといった趣で、やっぱりドライバーズ・シートがベストの場所としかおもえなかった。

760Liの、ドライバーにとって魅力的なインテリア。7シリーズの他のモデル同様、センター・コンソールはドライバー側に傾斜している。メーターが収まるパネルにもナッパ・レザーが使われている。ステアリングにシフト・パドルは付かない。


11月には日本に上陸するというこの7シリーズの最高峰は1920万円。12気筒同士で比べると、メルセデス・ベンツS600L(2026万円)より安く、アウディA8L6.0クワトロ(1787万円)より高い。もっとも、このへんの価格帯における100万円ぐらいの差に、さほどの意味があるとはおもえない。この価格差が意味するのは、3台のステータス性についてのパブリック・イメージのちがいにすぎない、と見るのが正解だろう。

V12ツイン・ターボは544ps/5250rpmと750Nm/1500-5000rpmを発生するが、EU複合サイクル燃費は12.9リッター/100km(7.75km/リッター)と、旧型比5%も改善されている。


さて、BMW本社が用意したニュー760Liのテスト車はすべて、パール・ホワイトにペイントされていた。インテリアのレザーはいくぶんグレイの気配のある白で、ダッシュボードとドア・パネルに挿入されたウッドは、僕の乗った個体では、ピアノ・ブラックにかがやいていた。白と黒のあざやかなコントラストが見せるシンプルなモダン感覚には、かつてのロールズ・ロイス的な、精妙な細工によって装飾される重厚きわまりない(ヴィクトリア朝的)自動車の室内を、遅れた美意識の所産として見下すようなイキがり、いうなれば若さの傲慢を、感じとれないでもなかった。真っ白な内外装のV12のショーファー・ドリブン・カーに乗る男、あるいは女―。生意気な感じではないか。

5212×1902×1484mmのボディは3210mmのホイールベースの上に載る。760iは140mm短くなる。車重は2175kg。


しかし、そういう若い、モダンで、生意気な感じは、1977年に初代の7シリーズが誕生したときからBMWのフラッグシップ・サルーンにつきまとうもので、そこに大型BMWの値打ちもあるのだ、とおもう。昨年秋のパリのオート・サロンでデビューした現行5代目もそこはしっかり継承していて、たとえば、曲線や面のうねりぐあいにではなく、けれん味のない直線的な水平の線と面にこだわった内外デザインなどに、モダニストの面目を見ることができる。現行メルセデス・ベンツSクラスの、フェンダーやボンネットに繰り返し用いられる力こぶのような膨らみのデザインが、いささか露悪的にパワー信仰を告白しているとしたら、この760Liは、544psもの出力を誇る6リッターのツイン・ターボV12を隠しもちながら、そのデザインにパワーの神殿を暗示するものを見せない。計算されたアンダーステイトメント(過小主張)の美学をもってみずからを、大型・超高性能高級車の世界における一陣の涼風たらしめようとするかのようだ。


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