2024.05.05

LIFESTYLE

著名な陶芸家がかつて住んだ朽ちかけた古民家をリノベーション 古道具屋のオーナー夫妻が暮らす思わずため息がもれる素敵な空間とは?

森の小路の奥に突如現れる仁平邸の南側。柔らかな木漏れ日が静かに室内に流れ込む。

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雑誌『エンジン』の大人気連載企画「マイカー&マイハウス クルマと暮らす理想の住まいを求めて」。今回は、陶芸の町として全国的に知られる栃木県益子町。古道具屋のオーナー夫妻が改築した築45年の古民家の庭先には、1929年製のA型フォードを含む3台の古いクルマが停められていた。ご存知、デザインプロデューサーのジョースズキ氏がリポートする。

築45年の古民家を改築


益子の町の中心部から少し離れた、自然豊かな森の中に建つ仁平透さん(45歳)一家の家。600坪の敷地は周囲も森で、隣家すら見えないロケーションだ。焼き物の町として広く知られている益子は、「民藝運動」の中心的な存在だった、陶芸家の濱田庄司が100年前に居を構え活動の拠点とした町である。この運動は、手仕事で作られた日常使いの道具に美を見出そうとするもの。こうした歴史の積み重ねもあり、益子の陶器市には数十万人が訪れる。

森の小路の奥に突如現れる仁平邸を、玄関のある北側から眺める。左手の建物は陶器 工房。

そんな町にある仁平邸は、築45年になる住宅だ。田舎に多い庄屋造りの古民家と異なり、どこか桂離宮に通じる美意識が感じられる。実はこの家、濱田庄司の三男の、陶芸家の篤哉(1986年没)が建てたものだ。篤哉は早くに亡くなり、長いこと住み手がなかった家に仁平さんが手を入れ、3年前にリノベーションが完成した。


もっとも仁平さんは、建築家ではなく古道具屋さん。経営する店舗など自ら改装を行ってきた。その独特なセンスから全国的な人気があり、益子にある2軒の店は、今や町の看板的存在で、東京の新丸ビルや青山にも店を構えている。扱っているのは家具や食器が中心で、高価な骨董とは対極にある、手頃な価格で普段使いができる道具。民藝に通ずるこの考えは、仁平さんの所有する3台のクルマからも感じられる。

古いクルマ3台の生活

クルマ好きで、ゴルフIやフォルクスワーゲン・ヴァリアントに乗ってきた仁平さん。「セダンが欲しい」と、数年前に入手したのが、現在手元にあるボルボ・アマゾン(1968年製)だ。そのアマゾンがやってきて程無く、友人が手放すこととなり引き取ったのが、W108型のメルセデス・ベンツSクラス(1969年)である。50年以上も前のクルマだが、「非常によくできた一台」で「普段の足」にしており、東京との往復もこのW108を使う。



自然豊かな環境に建つ古い家で暮らす仁平さんにとって、参考になったのが昭和の趣味人、故白洲次郎・正子夫婦のスタイルだ。彼らが暮らした武相荘の長屋門脇の車庫には、今も1916年製のアメリカ車、ペイジが停めてある。その姿に刺激を受け手に入れたのが、ネットで見つけた、T型フォードの次の世代にあたるA型フォード(1929年製)だ。このA型もしっかり走る。取材したのは冬の日だったが、エンジンは一発で始動し、ぐずることなく動いてくれた。このA型で東京への往復(片道100キロの距離)を試みた際も、クルマは全く問題無かったという。大変だったのは、燃費が悪いので途中で何度も給油したうえ、重い操作系と格闘し、体力的にきつかったこと。普段は、「時速80キロを自主規制の最高速度とし、週に一時間ほど、付近のドライブを楽しんでいる」。


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