2024.06.25

LIFESTYLE

「これは欲しい!」1950年代の名作スピーカーが復活 ブラウンの伝説のプロダクト・デザイナー、ディーター・ラムスの作品からその哲学を知る

数々のヒット作を手掛けたディーター・ラムス。写真:picture alliance/アフロ

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スマートフォンを始めとする現在のデジタル・デザインは、操作しやすいユーザー・インターフェースが基本。その源流となったプロダクト・デザイナーの哲学とは?

“Less,but better”というスローガン

近代モダニズム建築の三大巨匠のひとり、ミース・ファン・デル・ローエは、“Less is more”(少ないことは豊かである)を提唱した。彼の理念を間接的に引き継いだラムスは、ブラウン社での制作にあたり、さらに踏み込んだ“Less,but better”というスローガンを掲げた。「より良い」という一語は、安易なミニマリズムではなく、いかに実用に即するかというデザイン哲学の証左でもある。

現在のブラウンはシェーバーやキッチン用品などの家電で有名だが、創業時はオーディオ製品が主力だった。特に1958年に発表されたSK4は、航空機に使われていたアクリル板を天板に転用し、美しくレイアウトされたレコードプレーヤー、スイッチやつまみなどの機構部分をあえて見せるデザインを採用。「白雪姫の棺」という愛称で呼ばれ、MoMAのパーマネント・コレクションに選ばれた。

LE01/Hi-Fi ステレオのフラッグシップモデル29万7000円 白と黒の2色

ラムスはもともと建築家だったが、大工技術も学んでいる。デザイナーとしてセンスと計算、技術者として素材と製法それぞれに精通していたことが、優れた「用の美」を創り出す両輪となった。たとえば重要なボタンだけに色をつけて視認性と操作性を高める工夫なども彼が始めたもの。言語を問わずに直感的にわかるユニバーサルな仕様は現在のデジタル・デバイスの先駆であり、ジョナサン・アイブによるアップルのiMacやiPhoneにも大きな影響を与えた。

そして1959年の名作スピーカー、LEシリーズが先ごろ再発売。洗練のスタイルはそのままに、新たなチューニングが施され、Wi-FiやBluetoothなどの先端機能も搭載されている。

ローエたちのモダニズムは機能主義と呼ばれる。確かに機能と意匠の両立は、装飾的で権威的な歴史建築への叛旗であり、グッドデザインの民主化でもあった。ラムスは家電においてそのイノベーションを実現したといえる。いささかも古びないマスターピースの復刻を喜びつつ、間もなく92歳になる名匠の新作を夢見るのも悪くない。

LE03/簡素なスタイリングにラムスの美学が凝縮されたコンパクトスピーカー  5万9400円  白と黒の2色 問い合わせ=モダニティカスタマーサポート support@modernity.jp modernity.jp 

文=酒向充英(KATANA)

(ENGINE2024年5月号)

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