2024.06.07

CARS

徳大寺有恒さんの言葉を思い出す ロールス・ロイス初の電気自動車、スペクターに試乗! やっぱりロールスはモノが違う!!

ロールス・ロイス初の電気自動車、スペクター

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2030年までに全モデルをEVにするというロールス・ロイスの第1弾、スペクターの試乗会が都内某所で開かれた。ロールス・ロイスは電気自動車でも最高に優雅なクルマに仕立てるのだ。エンジン編集部の荒井がリポートする。

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故・徳大寺有恒さんの言葉


2030年までに内燃エンジン搭載車の販売を終了し、全モデルを電気自動車にするというロールス・ロイス。その第1弾は流麗な2ドア・ファストバック・クーペとして登場した。スペクターと名付けられたロールス初のEVを都内で試乗することができた。

地下駐車場に置かれたスペクターは滑らかなショルダー・ラインを光らせていた。手元の資料を見ると全長5475mm。さすがロールス、デカいというのが見た目の第一印象である。とはいえ、ファントムのような威圧感がないのはクーペだからだろう。大きいけれどエレガントなスペクターである。

スペクターのコンセプトはまず、ロールス・ロイスであること。電気自動車であることはその次だったという。室内空間、快適性、乗り心地など完璧なまでにロールス・ロイスであった。


後ヒンジの大きなドアを開けて運転席に座る。ブレーキ・ペダルを踏むとドアは自動的に閉まることをスタッフが教えてくれた。

運転席まわりは贅沢の一言。レザーにしてもウッドにしてもモノが違うことを主張している。「ジャガーのウッドはひび割れするけど、ロールス、ベントレーはしないんだよね。そこが違うの」という故・徳大寺有恒さんの言葉を思い出した。

助手席前のパネルには細かい光の粒がモヤモヤと動いていることに気付き、すごい! と頭を上げたら、天井の内張りは満天の星だった。



クーペ・スタイルだが、2人掛けの後席にも十分余裕がある。ホイールベースは3210mmもあり、足が組めるほどだった。

望月カメラマンを助手席に乗せ、街へ出る。走り出したらとにかく気持ちがいいことに驚く。これは昨年の冬に乗ったファントムと同じ乗り味だと思った。スペクターは電気自動車、ファントムは6・75リッターV12ツインターボなのだけれど、静かさの質はまったく同じなのである。ロールス・ロイスが掲げる静粛性とは決して無音ではなく、ドライバーにとって必要な音を快適な音色で届けることだというけれど、それがこのスペクターでも完璧に再現されている。そのことが、私にファントムと同じだと思わせたのだ。



もうひとつは乗り心地である。ロールス・ロイスの真骨頂である「マジック・カーペット・ライド」はスペクターでさらに磨きがかかった気がする。望月カメラマンは助手席で「氷の上を滑っているみたいですね」と言った。

この静粛性と乗り心地がロールス・ロイスという特別な世界に私を誘ってくれるのは、スペクターもファントムも同じなのだ。内燃エンジンがどうのとか、電気自動車がどうのとか、そんなのどうでもいいじゃんと思えるほど、スペクターは超越した乗り味を提供してくれた。

2モーター、4WD

さて、スペクターの中身についておさらいしよう。最新のオール・アルミ製のスペースフレームは、これまでのどのロールス・ロイスのモデルよりも剛性を30%も向上させたのだという。102kWhのリチウム・イオン・バッテリーを搭載、フロント260ps/365 Nm、リア490ps/710 Nmという2基のモーターで4輪を駆動する。

車重2890kgというヘビー級ながら0- 100km/h加速は4・5秒という俊足を誇る。満充電での航続距離は5 3 0 km(W L T C モード)だという。

走り出しから高速巡航まで路面を流れるような極上の乗り味はワン・アンド・オンリー。


首都高速で俊足を試した。右足に力を込めると巨体は目の覚めるダッシュを披露した。電気自動車にあるウィーンといった無粋な音はまったく聞こえない。右足の操作に対する反応の繊細さは、さすがである。

首都高速のカーブやレーン・チェンジにおけるハンドリングも素晴らしい。ステアリング・フィールがこの上なく気持ちいいのもファントムと同じだ。とはいえ、目尻を釣り上げて走らせるようなクルマではない。ドライバーズ・シートに座った瞬間から、「優雅であれ」と諭されるようなクルマである。

優雅な生活で知られた音楽家、加藤和彦は著書『優雅の条件』で、ムダを享受できる人こそ優雅の条件を持った人といえると書いた。プライス4800万円からという巨大な超高級EVクーペをムダだと言う人もいるだろう。でもそれを享受できる人が優雅なのだ。ロールス・ロイスはそれを本当に良く知っていると思った。

文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦



■ロールス・ロイス・スペクター
駆動方式 前後2モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 5475×2017×2144mm
ホイールベース 3210mm
車両重量 2890kg
最高出力 430kW
最大トルク 900Nm
バッテリー容量 102kWh
一充電航続可能距離(WLTC) 530km
サスペンション 前 ダブルウィッシュボーン/エア
サスペンション 後 マルチリンク/エア
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前255/40R23 後295/35R23
車両本体価格 4800万円~

(ENGINE2024年7月号)

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