色気を振り撒くオープンカー　新型マセラティ・グランカブリオに試乗！　乗れば、もれなく「甘い生活」がついてくる！！

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マセラティ・グランカブリオ・トロフェオにイタリアで行われた国際試乗会で乗った！

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映画の世界の中にいる気分

前日の雨模様から一転、夏の青空となったマッジョーレ湖畔の道を、オープンにしたジャッロ・コルセのグランカブリオ・トロフェオで流すところから試乗は始まった。

コンフォート、GT、スポーツ、コルサの4つあるドライブ・モードのうち、エンジン始動時にデフォルトで選ばれるのはGTだ。GTモードでは、どっしりと安定したいかにも4WD車らしい乗り味が際立っている。高速道路を矢のように走るにはこのモードが最適かもしれないが、湖畔の道をゆったりと走るには、前20インチ、後21インチの大径タイヤを履いた足はやや硬めだと感じられてコンフォートに切り換えた。

　
ルーフを開けていても、両側の4枚の窓を閉めていればほとんど風の巻き込みはない。さらに、手動式ではあるが、荷室に備えられているウインド・ディフレクターを後席上部に装着すれば、高速走行時でも普通に会話ができるほどに風仕舞いがいいことを、後にスーパーストラーダで確かめることができた。

しかし、湖畔ではむしろ風を感じたくて窓を開けて走った。そうやって肘をドアにかけて運転していると、なんだか映画の世界の中にいるような気分になってくる。クルマが勝手にオーラをふりまいて走っているので、周囲の視線がこちらに向けられる。目が合うとニコッと微笑み返して、ちょっとだけ手を上げて合図する。そんな映画俳優がやるみたいな、けれど冷静になれば赤面ものの仕種が、ごく自然にできてしまうところに、この世界にほかに例を見ない色気を持ったオープンカーの最大の効用があるのではないかと思えてくる。

「乗れば、もれなく『甘い生活』がついてくる」というのは先月号のイタリア車特集につけたサブタイトルだけれど、マセラティ・グランカブリオこそがそういうイタリア車の代表選手だと言って間違いないだろう。

やがて、山道に入った。道幅がどんどん狭くなる。ところどころ、前日の雨の影響で濡れた路面も出てきた。それでも、GTモードで走っていれば、安定感抜群なので、安心して進んでいくことができた。重量配分の良さのおかげでコーナリング時のノーズの入り方も自然で、大きさがまったく気にならないとは言わないが、このボディでこれだけ操縦性が良ければ相当なものである。

この日は土曜日だったので、モーターバイクや自転車で山道を走る人がたくさんいたが、その人たちと手を振り合ったり、笑顔を交換したりして走るのがすこぶる楽しい。なにしろ、向こうもマセラティの派手なオープンカーがやってきたというだけで、ヒューヒューと口笛を吹くような仕種をしたりするので、ついついこっちもその気になって、「そうだろう、いいクルマだろう」と応えたくなってしまうのだ。自分のクルマでもないのに。

しかし、この日最大の楽しみはランチの後に待っていた。試乗車をブルー・モデナの個体に乗り換えて、さらに別の山を目指す。こちらは午前中の山道と違って道幅も十分にあって、まるで会津の猪苗代湖のまわりの山道を走っているような最高のドライビング・ロードだったのだ。思わずドライブ・モードをスポーツへと切り換えた。それまでの重厚感あふれる乗り味が薄れて、後輪駆動車のような軽快感が出てくる。さらにコルサ・モードにしてみたら、これがもう楽しいのなんのって。もう軽快そのもの。コーナー進入時のノーズの入り方も鋭くなれば、立ち上がりのトラクションの掛かり方も後輪から押し出すようになって、まるでダンスしているみたいな走りが楽しめるのだ。なんとこの巨大なオープンカーにして、である。

そして、程よく汗をかいて到着した山頂から見た7つの湖を見渡す絶景の素晴しかったこと。遠くミラノも見える。これぞ「甘い生活」だ。

文＝村上政（ENGINE編集長）　写真＝マセラティS.p.A.

■マセラティ・グランカブリオ・トロフェオ
駆動方式　フロント縦置きエンジン4WD
全長×全幅×全高　4966×1957×1365mm
ホイールベース　2929mm
車両重量（EU値）　1895kg
エンジン形式　90度V6ツインターボ
排気量　2992cc
ボア×ストローク　88×82mm
最高出力　550ps /6500rpm
最大トルク　650Nm/3000rpm
トランスミッション　8段AT
サスペンション（前）　ダブルウィシュボーン／エアスプリング
サスペンション（後）　マルチリンク／エアスプリング
ブレーキ（前後）　通気冷却式ディスク
タイヤ（前／後）　 265/30ZR20 ／295/30ZR21
車両本体価格（税込み）　3120万円

（ENGINE2024年9・10月号）

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