2024.09.06

CARS

フェラーリ12チリンドリ対抗のアストン・マーティンの旗艦車種、ヴァンキッシュが新型になって再登場

熱心にF1グランプリをご覧の皆さんの中には、2024年後半戦のスタートとなったオランダGPからアストン・マーティン・アラムコ・フォーミュラワン・チームのマシン、「AMR24」のHALO(ヘイロー)の書かれているマーキングが 「ASTON MARTIN VANTAGE」から「ALL WILL BE VANQUISHED 02 09 24」へと変わったことに気づいた方もいらっしゃるかもしれない。

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イタリア・ヴェニスで初公開

その予告通り、イタリア・ヴェニスで2024年9月2日、3代目となる新型「アストン・マーティン・ヴァンキッシュ」が発表された。



6年ぶりの復活

かつて2012年から18年に存在した2代目ヴァンキッシュが、それまでのフラッグシップであった「DBS」の後継モデルとして登場したように、今回の新型ヴァンキッシュも2018年に登場した「DBSスーパーレッジェーラ」(2022年からDBSに改名)の後を継ぐ、カタログ・モデルにおけるフラッグシップとなる。



835psの5.2リッターV12ツインターボ

その最大の特徴は、2023年登場の「DBS 770アルティメイト」を遥かに上回る最高出力835ps、最大トルク1000Nmにまで高められた5.2リッターV12DOHCツインターボ・エンジンにある。

これは強化されたシリンダーブロックとコンロッド、カムシャフト、インテーク・ポート、エグゾースト・ポートを含め再設計されたシリンダーヘッド、10%流量が増えたインジェクター、そして15%速度を増した低慣性ターボチャージャーの装着と、ほぼ全面刷新に近い改良によってもたらされたものだ。それに合わせてF1でテクニカル・パートナーを務めるバルボリンが専用開発したオイルを使用することで、莫大な出力に対しても最適な油温、油圧を維持することが可能だという。



0-100km/h加速は3.3秒


トランスミッションはリア・アクスルに搭載されたZF製の8段トルコンATだが、すでにヴァンテージやDB12で定評のある、ESP(姿勢安定制御装置)と統合されたE-diffがアストン・マーティンのV12モデルとして初めて搭載されたことも特筆に値する。

ちなみに0-100km/h加速は3.3秒、最高速度は345km/hと、いずれもDBS 770アルティメイトを上回るパフォーマンスを発揮するとアナウンスされている。



835psを活かすシャシー


一方、この莫大なパワーを受け止めるシャシーは、アルミニウム製VHプラットフォームを基本としつつ、新しいクロスメンバー、厚みを増したアンダーカバー、再設計されたフロント・サスペンションのピックアップ・ポイント、大径アンチロールバー、強化されたリア・サスペンションタワーなどにより、DBSに比べてフロントエンドの横剛性が25%、シャシー全体のねじり剛性が3%アップしていたDBS 770アルティメイトよりも、さらに横剛性を75%もアップ。またフロントアクスルとAピラー間が80mm延長され、ホイールベースが2885mmになっているのも大きな変化と言える。

加えて、ダンパーには「DB12」で定評のあるビルシュタイン製DTXダンパー、最適化されたロックtoロック2.27回転の電動パワステ、フロント410mm径、リア360mm径のカーボンセラミック・ディスクブレーキ、専用開発の21インチ・ピレリP Zeroを装備。無論ABS、トラクションコントロール、トルクベクタリングなどの電子デバイスも専用のセッティングが施され、835psをしっかりと活かすハンドリングを実現しているという。



ロングノーズ&ショートデッキを強調

エクステリアに関しては、同社のデザイン部門を率いるマレク・ライヒマンが「アイコニックなヘイローモデル」と称するように、よりロングノーズ&ショートデッキを強調したスタイルへと進化。新デザインのマトリックスLEDヘッドライト、冷却効率を意識してDBS 770アルティメイトに比べてもさらに13%拡大されたアストン・マーティンのアイコンでもある「ベーングリル」をもつフロント・マスクは、迫力がありながらもシンプルにまとめられたシックなデザインとなった。

また特徴的なサイドストレーキ、F1にインスパイアされたボンネット・ルーバーに加え、10mm拡大されたリア・ボディは、巨大なディフューザー、10.5kgの軽量化を果たしたエグゾースト・システム、7連のLED式ライトブレードと共に、1960年代の「DP212」~「DP215」シリーズを彷彿とさせるブラックアウトされたコーダトロンカ・スタイルとなり、これまでのアストンマーティン・デザインの文法とは異なる、新型ヴァンキッシュならではのアイデンティティが与えられた。



最新装備満載のインテリア

インテリアに目を向けると、10.25インチのTFTドライバー・ディスプレイを備えたコックピットは一見DB12と同じように見えるが、10.25インチのタッチスクリーンからつながるスティック・タイプのシフト・セレクターが備わるセンターコンソールは水平となるなど、デザインを一新。

またルーフ全体に広がるパノラミック・ガラスルーフのほか、すでにDB12、ヴァンテージ、DBXに導入されている次世代のインフォテイメント・システムや、バウワース&ウィルキンスのオーディオ・システムを標準装備となるなど、質感や仕立ての豪華さ、高級さだけでなく、快適性、情報性に関しても最新のハイエンド・ラグジュアリー・スーパーGTに相応しい中身を誇っている。

まだ正式な価格は発表されていないが、年間1000台以下の限定生産となっており、カスタマーへの最初のデリバリーは2024年第4四半期を予定している。



文=藤原よしお

(ENGINE WEBオリジナル)

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