2024.10.17

CARS

【速報!】限定799台、5億7600万円のスペシャル・フェラーリ登場! その名は「F80」 イタリアの本拠地マラネロで開かれた内覧会からエンジン編集部のムラカミが速報する

最高出力は1200馬力! モーターだけでは1mmたりとも走らないハイブリッド・フェラーリが登場!

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「ニュー・フェラーリ・スーパーカー・アンテプリマ」と題された内覧会は、マラネロの本社敷地内に新設されたばかりのeビルディング2階の特別に仕立てられたプレゼンテーション・ルームで行われた。その会場前に展示されていたのは、フェラーリがこれまでに放ったスペチアーレ(スペシャル・モデル)、すなわち288GTOを皮切りに、F40、F50、エンツォ・フェラーリ、ラ・フェラーリの5台。それに続く、生まれながらのアイコニック・モデルとして登場したF80は、ひとことで言うと、過去のスペチアーレへのオマージュをデザインなどにふんだんに取り入れながら、中身は主にレース・フィールドからフィードバックさせた最先端のテクノロジーを惜しみなく注ぎ込んだ、車名どおり1947年に創業されたこのブランドの来るべき80周年を祝うにふさわしい唯一無二の1台になっていたのだ。

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最高出力は1200馬力。ミドシップに搭載される3リッターV6ターボ・エンジンが発生する900馬力に加えて、前に2基、後ろに1基搭載される電気モーターが300馬力を生み出して4輪を駆動させる。前輪を駆動させるのは2基のモーターのみで、トルクベクタリングの機能も持つと言うから、SF90のシステムに似ているが、異なるのは、F80では電気モーターのみでの走行は1ミリもしないことだ。それはこのクルマの性格にふさわしくない、と言う理由で採用されなかったのだという。



フェラーリがこのハイブリッド・パワートレインを選択した理由は明確で、F40の時代のF1の主流がターボ・エンジンであり、エンツォ・フェラーリの時代には12気筒がそうであったように、現在のF1やWEC(世界耐久選手権)で使われているのが、V6ターボ+電気モーターのハイブリッド・ユニットだからだ。ル・マン2連覇の499Pと同じアーキテクチャーをF80に転用することは、ごく自然な選択だったというのである。すなわち、その時代の最先端のテクノロジーを注ぎ込んだ時代を象徴する1台であることこそが、フェラーリのスペチアーレの絶対条件なのだ。



そして、ハイブリッド・システムに使われる電気モーターや800Vの高電圧バッテリー、インバーターなどの開発、テスト、製造のすべてを初めてフェラーリ自身の完全な内製でやっているというのにも驚かされた。高額のスポーツカーをスマホと同じ使い捨て商品としないために、すべてを自社開発することによって、将来の電池交換やアップグレードにも対応できるようにしているというのだ。

F80では新たに「eターボ」システムも採用している。各ターボ・チャージャーのタービンとコンプレッサーの間に電気モーターを組み込み、低回転域からのレスポンスを向上させるのに加えて、高回転時には回生にも使う、最新のポルシェ911GTSにも採用されているのと似たシステムだ。


 
シートは「1+」のレイアウト

シャシーはむろんカーボン製。その前後にアルミニウム製のサブフレームをチタン製のネジを使って固定する。ドアはエンツォやラ・フェラーリと同様のバタフライ式で、ルーフ部分まで含めて、ほぼ90度まで開く。特筆すべきは、室内のレイアウトで、二人乗りのシートが左右で少しオフセットしており、ドライバーがまるでシングルシーターのレーシング・マシンに乗っているような感覚になるよう配置されていることだ。あくまで主役はドライバーであり、フェラーリはこのレイアウトを「1+」と表現していた。実際に乗り込んでみると、室内空間は極めてタイトだ。キャビンが、ボディの横幅よりグッと絞られているので、わずかに後ろにズラされた助手席との間は狭く、窓もすぐ近くまで迫っており、フェラーリが言うところのコクーン(繭)に包まれたような感覚である。フットスペースは少し高くなっており、その先にペダルがあるから、足をまっすぐに投げ出したレーシングカーのようなスタイルで運転することになる。



一方、助手席は固定式となり、足元も高くなっていて、さらにタイトな空間となっている。内装で目新しいのは、ステアリングホイールがこれまでのフェラーリのロード・モデルより径が小さく、上下がフラットなものになったことだ。スポーク上のスイッチ類も、昨今のフェラーリのタッチ式のものではなく、正確に操作できる物理スイッチに先祖返りしていた。リアウインドウはなく、後ろを振り返っても背後はまったく見えないので、バックミラーにはカメラで捉えた映像が映される。



もう一つの、レース由来の先進技術は、エアロダイナミクスということになるだろう。極力フラットにしたアンダーボディに加えて、フロントのSダクトの内部には2枚のフラップが備えられており、状況に応じて、ダウンフォースを発生させたり、DRSの役割を果たしたりする。それはリアの巨大なアクティブ・ウイングも同じで、ハイ・ダウンフォース時には気流に対して11度傾いてダウンフォースを発生させ、逆にロウ・ダウンフォース時には先端が上に傾くようになっている。さらに、リアの下部には巨大なディフューザーを備えており、車体下に低圧力ゾーンを作り出す。その結果、時速250kmでの走行時に、最大でフロントが460kg、リアが590kgの計1050kgものダウンフォースを発生させるというのだから、まさにレーシングカー並みと言っていいだろう。
 
プロサングエ譲りのアクティブ・サスを採用
 
実際、4輪ダブルウィッシュボーン式の足回りのダンパーはインボード式となっており、ほとんどレーシングカーと変わらない設計だ。しかし、異なるのは、レーシングカーではレギュレーションで禁止されているケースが多い、アクティブ・サスペンションが採用されていることだ。プロサングエで導入されたカナダのマルチマティク社製のものをF80用に徹底的な再設計を施して使っているという。4輪を独立して制御し、硬さのみならず、高さを25mm変化させることもできる。これを使って、グランド・クリアランスを最適な状態に制御し、安定したダウンフォースの確保に繋げているというのだ。加えて、このアクティブ・サスペンションは、プロサングエと同様にロードカーとしての乗り心地の快適性にも、大いに貢献しているに違いない。なにしろ、フェラーリが設定したF80の開発コンセプトは、「サーキット志向のスーパーカーでありながら、プロダクション・モデルと同等に運転しやすいモデル」を作ることにあったというのだから。



ちなみに、F80のeマネッティーノによるドライビング・モードの選択肢は3つ。デフォルトは「ハイブリッド」で、エネルギー回生とバッテリーの充電力維持を優先し、「パフォーマンス」ではサーキットにおける長いスティントで一定のパフォーマンスを継続的に発揮、「クオリファイ」では持てるパワーをすべて解き放って最大のパフォーマンスを一気に爆発させる。興味深いのは「パフォーマンス」と「クオリファイ」では、「ブースト・オブ・パフォーマンス」という新機能が使えることで、走行中にコンピューターがコースを記録するようになっており、1周慣熟走行をすると、コーナーやストレートを特定してパワーデリバリーに必要な情報を収集し、もっとも必要な区間でパワーブーストを発揮するように自動的に設定されるというのだ。



発表されたスペックは、0-100km/h加速が2.15秒、0-200km/h加速が5.75秒。最高速度は350km/hでリミッターにより規制される。ニュルブルクリンクではまだテストしていないということだったが、フィオラノのテスト・コースでのラップ・タイムは1分15秒3というから、昨年、フェラーリ・ロードカー最速記録を更新したSF90XXストラダーレの1分17秒309を、一気に2秒も縮めたことになる。

最後に、デザインについても触れておこう。パッと見て目に入るのは、黒いバイザーエレメントで隠された左右のヘッドライトを黒い帯状のガーニッシュで繋いだ12チリンドリとも共通する新たなフェラーリのフロントマスクである。これは、ヘッドライトを隠すことによって、クルマのフロントから人間の顔に見える要素を排除することを狙っているのだとか。一方、サイドを見ると、フロントとリアのホイールアーチ部分には、明らかにF40からの引用とわかる垂直のパネルが付けられている。全体的には、エンツォやラ・フェラーリと比べると、エンジンに空気を導くように車体上部の左右に設けられたNACAダクトなど、より機能がそのままデザインに直結した要素が多くなり、その点ではF40やF50の方向性に回帰したように私は感じたが、みなさんはどうだろうか。

それにしても、もっとも衝撃的だったのは価格かもしれない。イタリアにおける税込の販売価格は360万ユーロ。すなわち、日本円にして5億7600万円ということになる(1ユーロ=160円で計算)。高い税金を差し引いても、約5億円といったところか。なんと、11年前のラ・フェラーリと比べると約3倍にも高騰しているのだ。予定生産台数はラ・フェラーリの499台に対し、300台増しの799台。マーケティングの結果、スペチアーレを求める特別な顧客は増加しており、この台数が妥当ということになったのだという。どうやら、プロサングエ、12チリンドリと立て続けにヒットを飛ばしてきたフェラーリの勢いは、まだまだ止まらないようだ。

文=村上政(ENGINE編集部)


■フェラーリF80
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン+電気モーター4WD
全長×全幅×全高 4840×2060×1138mm
ホイールベース 2665mm
車両乾燥重量 1525kg
パワートレイン形式 120度V6DOHCターボ+前2、後1電気モーター
排気量/ボア×ストローク 2992cc/88×82mm
最高出力(モーター) 900ps/8750rpm(前142ps×2、後81ps)
システム総合最高出力 1200ps
最大トルク(モーター) 850Nm/5550rpm(前121Nm、後45Nm)
トランスミッション デュアルクラッチ式8段自動MT
サスペンション(前後) ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式カーボンセラミック・ディスク
タイヤ (前)285/30R20、(後)345/30R21
車両本体価格(税込み) 360万ユーロ(イタリアでの販売価格)

(ENGINEWEBオリジナル)

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