2024.11.04

CARS

1レースで1000本以上! ヨコハマタイヤのサステナブル素材を33%用いたタイヤで戦う日本最高峰のフォーミュラ・レース

近年、日本のモータースポーツのなかで盛り上がりを見せている注目のカテゴリーの1つが、全日本F2000選手権の流れを汲む日本のトップ・フォーミュラ・レースとして昨2023年に50周年を迎えた全日本スーパーフォーミュラ選手権である。

様々な話題で盛り上がりをみせる

現在、運営母体であるJRPの会長には自らもレーシング・チームも所有する近藤真彦氏が就任。全ドライバーの無線やオンボード映像、テレメトリーがリアルタイムで視聴できるアプリ「SFgo」をスタートさせたほか、今シーズンからは国内トップ・フォーミュラ初の女性ドライバーとなるJuju(野田樹潤)選手や、レッドブル育成ドライバーとしてFIA F2で活躍ししていた岩佐歩夢選手がフル参戦を果たすなど様々な話題を提供しながらも、毎戦レベルの高い戦いが繰り広げられている。



「NEXT50」、次の50年に向けて

そんなスーパーフォーミュラのもう1つの特徴が、「NEXT50」と銘打って昨年から始まったカーボンニュートラルへの積極的な取り組みだ。

具体的には2023年から投入されたニューマシン、「ダラーラSF23」のエンジン・カウルに麻由来の天然成分を混ぜたバイオ・コンポジット素材を使用。またタイヤには従来と同等の性能を維持しつつ、33%のサステナブル素材を使用したレーシング・タイヤを用いている。そのタイヤを開発、製造しているのがヨコハマタイヤである。



1966年からレース用タイヤを供給

1917年に設立された老舗タイヤ・ゴム製造会社である横浜ゴムが手掛けるヨコハマタイヤが初のレーシング・タイヤとなる「Y-415」と「Y-416」を開発したのは1966年のこと。そして1978年にアドバン(ADVAN)ブランドがスタートすると、翌1979年にフォーミュラ・パシフィックからフォーミュラカー用タイヤの開発に参入し、1980年からはF2への供給も開始。以来、1996年まで国内トップ・フォーミュラに参戦を続けてきた。

そして2016年から再びオフィシャル・タイヤ・サプライヤーとして、国内トップ・フォーミュラの舞台に復帰。毎戦400〜500本のドライタイヤと、600~700本のレインタイヤと機材を7台の大型トラックに積み込み、全チームとそのドライバーの走りを支えている。ちなみにドライよりレインの本数が多いのは、それぞれ最大6セットずつの使用制限があるものの、安全性に考慮し、万が一のためにレインは多め用意しているのだそうだ。



バイオマス資源や循環性資源由来へ転換

では、現在使われているサステナブルなレーシング・タイヤとはどういうものなのだろうか?

横浜ゴムMST開発部長の斉藤英司氏によると、タイヤの原材料としてこれまで使っていた、原油や地下資源から精製や合成した素材から、バイオマス資源や循環性資源由来の素材へ転換を図ったものだという。



性能は従来のタイヤと同レベル

現在、他社を含め世界中でサステナブルなレーシング・タイヤの開発、実用化が進められているが、ヨコハマタイヤではドライタイヤのトレッド面にバイオマスオイルや再生亜鉛華、サイドウォールに天然ゴムや再生ゴム、再生亜鉛華、タイヤの骨格となるカーカス部に天然ゴムや再生亜鉛華を使用している。

もちろん、そうした素材を33%使用してもグリップや耐久性を従来のタイヤと同レベルに維持するように製造されている。しかし、サステナブルな材料の入手量や仕入れコスト、製造コスト、製造工程などを考えると、一般タイヤへの普及にはまだまだ大きな壁があるのは否めない。



製造過程もサスティナブル

一方で、スーパーGTと違ってタイヤ・メーカー間の競争がなく、同じ構造と性能のタイヤをワンメイクで提供でき、F1に次ぐスピードを誇るカテゴリーであるスーパーフォーミュラは、研究開発の舞台としても、供給の規模においても最適な環境なのだそうだ。またヨコハマタイヤでは三島工場のモータースポーツ用タイヤ生産ラインをすべて再生可能エネルギー電力で賄っており、会社全体としてカーボンニュートラル化に取り組んでいる。



サステナブル素材比率60%に挑戦中

さて、さる10月12日から13日にかけて富士スピードウェイで行われた第6戦と第7戦では、もう1つ注目すべき動きがあった。エキシビションとして、「赤虎」、「白虎」と呼ばれる「ダラーラSF19」の開発車両に近藤雅彦JRP会長自らが乗り込みデモランを披露するシーンがあったのだが、ここで使用されたタイヤは現在使われている材料に加え、籾殻シリカや植物由来オイル、サーキュラー・カーボンブラックを使用することで、サステナブル素材の比率を60%に引き上げたプロトタイプ・タイヤだったのだ。

外から見る範囲では、現在使用している33%のサステナブル素材を使用したスリックタイヤと見分けのつかないものだったが、まだ開発段階で、実戦に投入するには製造面を含め、まだまだクリアするべき課題が多く、実用段階には程遠いそうだ。

かつて本田宗一郎はF1を「走る実験室」と表現したが、スーパーフォーミュラは今、ハードはもちろんソフトの面においても、将来に向けて様々なトライを行ない、確実に成果を生み出しつつある。その一端が、ヨコハマタイヤのサステナブル・レーシングタイヤというわけだ。



文=藤原よしお

(ENGINE WEBオリジナル)

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