2024.11.25

CARS

【海外試乗】新たなマスクを得たボルボのフラッグシップ、XC90に北欧で乗る まだまだ内燃エンジン車の進化も続く!

デンマークとスウェーデンを繋ぐトンネルと橋、通称オースレン・リンクを行くボルボXC90。

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中国・上海とオランダ・アムステルダムで飛行機を乗り継ぎ、辿り着いたのは北欧デンマークの首都・コペンハーゲンにあるカストルプ空港。そのはずれにあるパーキングで待っていたのは、近年のボルボにとって久々となる内燃エンジン搭載のニュー・モデルだった。

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出発地はコペンハーゲン

いつまでも暖かく夏の気配を残す11月の東京から、一路コペンハーゲンへ。空港から一歩外へ出ると、そこは冬だった。冷気が肌を刺し、薄着の身が一気に引き締まる。ダウンとコートを羽織り、一息つく。空港も市街地も電気自動車だらけだ。インセンティブも大きいようだし、厳しい寒さではプレヒーティングが有用なこともあり、タクシーは100%電気。見上げればビル壁面の巨大広告は、中国の新興、シャオペンのもの。あちこちで見かけたことのないクルマが、音もなく走っている。なぜこの地が改良されたボルボの旗艦SUVの、しかも内燃エンジン搭載のXC90試乗の出発場所に選ばれたのか、僕は考えていた。



コペンハーゲンは都市としては大きくないが、デンマークの首都だ。試乗のルートはここからオースレン・リンクというトンネルと橋を経て国境を越え、スウェーデン南のマルメ近郊を走り、ふたたび空港に戻ってくる。地図によれば道は片側2車線の幹線道路が中心だが、小さな村や町も通り抜ける。たっぷり走れるのはうれしいが、ボルボの試乗会でよくある氷上などクローズド・セッションはなし。これは「欧州のいまの都市部と郊外、両方のリアルを見せよう」ということなのだろうか?

というのも、ボルボは近年XC40リチャージとC40から改名したEX40とEC40、ミニバンのEM90、スモールカーのEX30、そして大型SUVのEX90というぐあいに、一気呵成に電気自動車を市場へ投入してきた。2030年までに全ラインナップを電気自動車にするという目標を掲げていたからだ。EX90には大型サルーンのES90が続く。

しかし2024年9月のEX90とXC90のお披露目の際に、これを修正。現状の顧客の要望をふまえ、2030年までに90〜100%を電気自動車とプラグイン・ハイブリッドに、残りをマイルド・ハイブリッドとする、より現実的な目標へ変更したのだ。つまり、プラグイン・ハイブリッドはもちろん、マイルド・ハイブリッドの開発も続行。世界情勢も含め先行きが見えない中、どこに焦点を定め、そして定めたら、いかに早く切り替えるかが肝心。目の前を走るクルマたちを見ると、それをひしひしと実感する。
 
上手な差別化

2代目となるXC90は、ジーリー傘下となって最初に莫大な投資をして登場したモデル。ボルボのターニング・ポイントであり、近年のデザインの先駆けとなったクルマでもある。2014年の登場以来アップデートは幾度もされてきたが、ここまで見た目の印象が変わるのは初だ。ひとことでいえば、若返った感じ。バンパー、ボンネット、フェンダー、ライトを一新。中でも注目されるのはボルボの象徴、アイアンマークの矢印にそって斜めに走る桟と、クロスするようにまた桟が組み合わさる、不思議なグリルだろう。



実車を見るまで、基本的に水平基調を旨としてきた改良前に比べてどうかと思っていたが、違和感はない。細身になったトールハンマーと呼ばれるT字LEDライトとの相性もいい。XC90はグリルレスとドット・パターン・ライトという身内の鉄仮面顔の電気自動車群と差別化しつつ、新しさを備えた、うまい落としどころを見つけたと思う。試乗車には用意はなかったが、ダークでシックなグリルも設定されるという。
 
味方が即呼び出せる

2台用意されていた車両のうち、最初に乗ったのはデニム・ブルーのB5というベーシックな仕様だ。



ドアを開けると、見慣れたオーソドックスな真円のステアリング・ホイールと、サイズがたっぷりしたシートの眺めにほっとする。



前席の座面前部が伸縮式で、膝裏のちょうどいいところまで支えてくれる構造自体は変わらず、しかも再生素材の表皮はクラシカルな雰囲気で、ざっくりとしていて風合いもいい。色味はネイビーのみで、マッサージ機構との組み合わせの関係でこのヘリンボーン織シートの導入は未定だそうだが、上陸を期待したいところだ。



インストゥルメント・パネルも刷新されたが、改良カ所は中央部に集中。当然ドライビング・ポジションには影響なく、高い位置から見下ろす形でぴたりと出る。液晶はぐっと大きくなり、左右の空気吹き出し口の造形は違うが、それ以外スイッチなど配置も従来通り。だが、携帯電話のワイヤレス充電器など、現代のクルマとして求められるアイテムは外していない。

新しいXC90のパワートレインは2本立てで、このB5が2リットル直4ターボと統合型スターター&オルタネーターによるマイルド・ハイブリッド。



日本チームのもう1台、ブライト・ダスク、いうなれば“明るい黄昏”という色のT8が、2リットル直4ターボとセンター・トンネル部の18.8Kwhのバッテリー、そして後軸上モーターを組み合わせたプラグイン・ハイブリッドだ。





ナビの英語音声に従い、T8を引き連れて先導する。すぐスウェーデンに渡るオースレン・リンクだ。東京湾アクアラインと同じく、長いトンネルを越えると高架橋で海の上へ。風は結構あるようだが、ふらつくこともなく、直進性はいい。その上同乗者が横からGoogle由来の車載システムの設定を変更し、あっという間にインターフェイスの日本語化と、ガイドが日本語音声に切り替わった。



ローカライズは完璧といっていい。走り慣れないスウェーデンで、いっきに百万の味方を得た気分になる。

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