ロールス・ロイス・ゴースト・シリーズIIに南仏で試乗。
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ロールスにもスポーティはあるところが、実際に乗ってみると、とてもそうは思えない進化ぶりを実感させられることになったのだ。私が最初に乗ったのは、試乗車が1台しかなかったエクステンデッド・ホイールベースだったが、ホテルの敷地内を走り始めた瞬間から、なんとも言えない滑らかな動き出しを体感することができて、「そうだ、これこそがロールス・ロイスの走りだ」と、独りごちてしまった。アクセルを踏んだら踏んだ分だけスーッと前に行き、ブレーキを踏んだら踏んだ分だけスーッと減速する。そこにはなんのストレスも感じさせない驚異的なスムーズさが伴っている。
さらに素晴しいのはステアリング・フィールで、今どきのクルマとしてはかなり大きめの径を持ち、リム部分が細めのそれをコーナーで切り込んでいくと、まるで裏ごしに裏ごしを重ねたクリームのような滑らかな感触が手のひらに伝わってくる。しかし、同時に路面からのインフォメーションも確実に手のひらに伝わってくることを明記しておく必要があるだろう。乗り心地もそうなのだが、ロールス・ロイスのいわゆる「マジック・カーペット・ライド」というのは、少なくともゴーストの場合、空飛ぶ絨毯のようにフワフワと浮いたような感覚のものではまったくない。ボディの動きがウルトラ・スムーズで乗り心地が抜群にいいことは間違いないが、しかし、路面の荒れや変化など、ドライビングに必要な情報は確実に伝わってくるようになっている。それは音も同じで、室内はとても静かだが、まったく無音なわけではなく、アクセルを踏んだ時には、遠くからエンジンの回転する音や、路面の段差を越えた時などはトントーンという音がわずかなショックとともに聞えてくる。必要な情報が必要な量だけ伝えられるよう細心の配慮がなされているのだ。

次に全長が17cm短いノーマル・ホイールベースの試乗車に乗り換えると、これはもう明らかに軽快感が増して、2.5t近い重量があるにもかかわらず、ワインディング・ロードでは気持ちのいい走りっぷりを見せてくれた。とはいえ、スポーツカーのようなシャープな動きをするわけではない。あくまでゆったりとした動きなのだが、それがドライバーの感覚とピッタリ合っていて行き過ぎも遅れもないから、とても気持ち良く走れるのだ。ロールス・ロイスの辞書には“スポーティ”という言葉はないというけれど、これをスポーティと言わずして何と言うか、と私などは思ってしまう。最後にブラックバッジにも乗ったが、これは私にはいささかトゥーマッチな感じがした。ノーマルで十分以上に速いし、ハンドリングと快適性の点でもベスト・バランスといえるのではないか。そして、そのバランスの良さは明らかに、これまで以上に進化している。これぞドライバーズ・ロールス。最高の出来映えだ。文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=ロールス・ロイス・モーターカーズ■ロールス・ロイス・ゴースト・シリーズII(ブラック・バッジ)駆動方式 フロント縦置きエンジン4WD全長×全幅×全高 5545×1998×1573mmホイールベース 3295mm車両重量(EU値) 2490kg(2505kg)エンジン形式 直噴60度V型12気筒DOHCツインターボ排気量 6750ccボア×ストローク 88.4×88.9mm最高出力 571ps/5000rpm(600ps/5250rpm)最大トルク 850Nm/1600rpm(900Nm/1700rpm)トランスミッション 8段ATサスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/エアスプリングサスペンション(後) マルチリンク/エアスプリングブレーキ(前後) 通気冷却式ディスクタイヤ(前/後) 255/45R20/285/40R22(255/35R22/285/30R22)車両本体価格(税込み) 3875万4040円(4645万4040円)(ENGINE2025年2・3月号)
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