2025.01.11

CARS

R32GT-Rの走りをEVで再現したらどうなるか? 日産がオートサロン2025に出展したR32EVにその答えがある

日産は東京オートサロン2024で、BNR32型スカイラインGT-Rを電気自動車=バッテリーEV(BEV)にコンバートした「R32EV」を公開した。2023年3月から社内の有志が製作してきたBEV版R32GT-Rが、ついに日の目を見た。

クルマのデジタルリマスター版

ガソリン車の魅力をEVで表現する、それを日産は「クルマのデジタルリマスター版」のようなものと形容する。コンディション維持が難しいアナログ車の高揚感や気持ちよさを、デジタル技術で後世に伝える手段を探求、すなわち内燃機関版のR32GT-Rの走りの魅力をBEVで再現し、今後のBEV開発に活かすことが狙いだ。



動力源以外はノーマルにこだわる

見ての通り、ボディは2.6リッター直6ツインターボを搭載していたオリジナルのまま。それは、ベースとなった内燃機関モデルと同じ全長×全幅×全高=4545×1755×1340mmというボディ・サイズからもわかる。充電用のポートは既存の給油口部分に組み込まれた。

パワートレインは217.5ps/340Nmのモーターを前後に1基ずつ搭載。駆動方式は内燃機関版と同じ4WDだ。モーターはリーフ用を活用しているが、BEV版では増加する車両重量で馬力荷重比が内燃機関版と同等になるように出力とトルクの最高値を調整。また、エンジン車特有の加速感を再現するための制御を施した。変速機は備わっていないが、疑似変速機能を採用。それを操作するために、R32のデザインに倣ったシフトレバーも備わる。



デザインはそのままにインチアップ

バッテリーは実験車であるBEVのレース仕様車、「リーフ・ニスモRC02」と同じものを採用。容量は62kWhと推測される。

車両重量は1797kg。最初期モデルのR32GT-Rは1430kg、17インチ・ホイールを履く最終型の「VスペックII」でも1500kgだったから、最終型と比べても300kg近く増加している。



300kg増に対応

これに対し、タイヤとブレーキを強化。タイヤは245/40R18へとR32GT-R純正サイズより拡大。ブレーキは現行R35型GT-R用ブレーキを装着している。ホイールは16インチだったR32の5本スポーク・デザインを18インチで再現した。脚まわりはオーリンズ製ダンパーを使用するニスモのスポーツサスペンション・キットが組み込まれている。

バッテリーは室内後部のスカイラインのロゴ入りカバー内に搭載。そのため、乗車定員は2名となる。フロント・シートは特注のレカロ製で、表皮はオリジナルに近いもの用いている。



イメージを維持しつつ進化

インテリアも極力、内燃機関版のイメージを踏襲しているが、入手が難しいパーツへの対策が取られている。そのひとつがメーター。内燃機関版の指針式と全く同じデザインが表示されえる液晶パネル式に変更。現状ではイメージ画像が貼り付けられているが、指針式の3連メーターと空調、オーディオが収まっていたセンターコントロールも内燃機関版と同じデザインを液晶パネルで再現し、操作できるようにするという。また、ステアリング・コラムには内燃機関版にはなかった疑似シフト用のシフトパドルも増設している。

そのほかには、専用のサウンド・システムを装備。RB26DETT型直6ツインターボのアイドリングやブリッピング時の音や振動、変速時のエンジン音変化を再現している。

EVコンバートというと、かつては自動車趣味の中でもマニアックな部類だったが、電動化が加速する昨今は事業化する企業や、自動車メーカーによる試作例も増えつつある。今回のR32EVは、残念ながら商品化を前提としたものではないことが明言されているが、エンジンのままでは存続が難しい旧車を再生する手段のひとつとして、技術が進歩することに期待したい。



文=関 耕一郎

(ENGINE WEBオリジナル)

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