2025.02.08

CARS

ヤフオク7万円のシトロエン、日本製パーツの流用で、経年劣化でボロボロの複雑怪奇なハイドロ配管を新たに造り直す! シトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#62

カークラフトにて作業中のエグザンティアと、2人いる主治医のひとり、篠原大輔さん。オーディオのコントロールを司るステアリング・スイッチに続き、困難かつ忍耐力を要する今回の作業は、主に彼が取り組んでくれた。

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LHM配管引き直し開始

入庫先のカークラフトは、リポート車がやって来ると、すぐにLHM配管の造り直しに着手した。ホースは普通に入手できるポリウレタン製の、オリジナルの車体後部などでも用いられている日本製のチューブに。そしてこのチューブ同士を連結させる継手は、前回のリポートで報告した通り、これまた日本製のチューブフィッティングと呼ばれる工業用の品を使う。現代のメイド・イン・ジャパン品質のパーツで、約30年前のフランスのオリジナル配管を超える逸品を産み出そう、というわけである。





僕が調べた限り、複雑な分岐のLHM配管の代用は、銅パイプをロウ付けして造ったり、ホースをそのまま引き直したようなものはあったが、この継手を使った手法は見たことも聞いたこともなかった。



もしこれが無事成功すれば、同じようなシステムを使うエグザンティアやXMはもちろん、ハイドローリック・シトロエン乗りにとって、大きなニュースになるに違いない。

ここからの作業の流れは、漏れている部分の確認、LHMの摘出、エンジン・ルーム内のタンクとフィルターを外しての点検と清掃にはじまり、複雑な配管を1本ずつ摘出し、径と長さ、取り回しをひたすら確認し、記録していき、そこから1つ1つ既存の継手を試しながら組み立てていくというもの。どの配管も劣化がひどく、ゴムは弾力もしなやかさも完全に失い、軽く力をいれるだけでポキンポキンと折れてしまう状態だった。狭い部分を通っていることも多く、取り外すのだけでも本当にやっかいだった。

嫌がらせに近いレベル

取り替える新たな配管の配置についても、今までなかった継手をどこにどう固定するか。既存のステーは使えるか。新たに固定しなければならないなら、その術をどうするか。オリジナル通りの流れが本当にベストなのか。今後も整備をするにあたって、作業性はどう確保するか……。考えることは無数にあって、とにかくトライ&エラーの連続である。ただ部品を交換するだけの整備では、こんなことは絶対にできないだろう。既存部品と格闘し、なんとか取り外し、油で汚れた手を一旦止め、計測し、写真を撮り、また記録をし、代用部品と向き合う。地味だし、根気はいるし、マニュアルなんか一切ない。

こちらがオクトパスと、一体になったホースの側の残り半分。どれほど困難な作業だったか、お分かり頂けるだろうか。

「過去にアクティバでもホースの交換をしましたが、そのときはまだ部品があったので傷んだ部分を入れ替えただけだったんですよ。だからあまり気にしていなかったのかもしれませんが、ここまで複雑に配管の径が違うとは……。構造上の理由があるとは、ちょっと思えなかったですね」

作業を行ったカークラフトの篠原大輔さんは、ボロボロになった配管を前にそう話してくれた。たぶんLHMの流速や流量を計算して、というよりは、サプライヤーの都合や信頼性を重視しての設計だったのだろう。エグザンティアの先代にあたるBXや、兄貴分のXMと部品を共有するため、細かな条件などもあったのかもしれない。とはいえ、ほとんど造り直す側にとっては、嫌がらせに近いレベルの複雑さだ。

大輔さんは、時に古い配管の順番や取り回しを変更しつつ、効率的で整備性もきちんと確保した新しい配管を見事完成させてくれた。径や長さなど細かな数字などはノウハウとして公開はしないが、様々な工夫や作業内容については、90枚以上ある写真とキャプションを参照して欲しい。

今回はリターン・ホースと呼ばれる、各部からタンクへ戻ってくる配管の引き直しが主な作業だが、サプライ・ホース、つまりタンクから送り出す方の配管も、一部初代フィアット・パンダの純正エアコン部品を流用して造っている。

なおキャリアカー搬送の原因となったLHM漏れに関しては、通称メイン・アキュムレーター、正式名ハイドローリック・サーキット・ブレーカーという部分の、エア抜き用のOリングからと判明した。こうして無事、エグザンティアのLHM配管は見事に生まれ変わったのである!

仕上がったエンジン・ルーム全景。LHMの流れるラインはこうして一新された!

さて次回はLHM配管が無事完成したので、車検のためのメンテナンス業務を紹介する予定だったのだが、ここで発覚したサスペンション・モードの固着、通称“ハード・ロック”問題を解決するべく、保管していた車載のサスペンション・コンピュータ内部をバラすことになった。

はたして過去に何があったのか? 回路の一部は、熱で焦げかけていた! ……というわけで、LHM配管に関する引き直しのコストなどに関しては、それらの作業とともに、次回以降に報告する。

■CITROEN XANTIA V-SX
シトロエン・エグザンティアV-SX
購入価格 7万円(板金を含む2024年2月時点までの支払い総額は287万7353円)
導入時期 2021年6月
走行距離 18万4305km(購入時15万8970km)

文と写真=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦/岡村智明/カークラフト

◆エンジン編集部ウエダのシトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート連載一覧はコチラ
ヤフオク7万円25年オチのシトロエンの長期リポート連載!

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ちょっと古いクルマが面白い!

(ENGINE WEBオリジナル)

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