高級車の概念を変えた4人乗りのレクサスLMに新たに追加された3列シートの6人乗りモデル、version L。実は「これがLMの本命」と考えていたモータージャーナリストの島下泰久さんは、LM500h"version L"に乗って何を感じたのか。
LMの登場で変わったラグジュアリーカーの世界多様性が叫ばれる今の世の中では、ラグジュアリーの価値も様々だ。それに呼応してレクサスは、フラッグシップを1台に集約せず、群でアピールすると宣言している。
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LS、LC,LXとともにそれを構成するLMは、その中でもとりわけ新しいジャンルを切り拓く存在である。デビューから1年が過ぎて、その姿を街で見かける機会が本当に多くなった。ショーファードリブンの世界は、LMの登場以前と以後で、まったく違ったものになったと言っても過言ではない。
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その魅力を再確認するべく今回連れ出したのは、新たに設定された3列シート6人乗り仕様のLM500h"version L"である。朝の東京。街に佇むその姿の存在感に、まず気分がアガるのを感じた。サイズは大きいが、それを伸びやかさに変えた姿は、凡百のMPVと呼ばれるクルマとは明確に一線を画している。
個人的に見どころと感じているのは、移ろう面が動きを表現したサイドビュー。機能性重視の箱型が定番のMPVに、優美さを付け加えている。しかしながら前後それぞれからの眺めも、やはり印象的だ。フロントは何といってもそのシグネチャーランプ。遠目にも、レクサスを強くアピールしている。そしてリアは左右のテールランプを繋ぐLEDストリップだろう。要するに全方位にわたって、そのすべてが他車とは見間違えようのないLMの存在感、もっと言えばレクサスそのものを、主張しているのだ。
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街で見かける機会が増えた。そう書いたが、実際には単に台数が増えているというだけではなく、見かける度にその印象の強さが増しているということかもしれないと、ふと思った。
◆レクサスLM500h"version L"の詳しい情報はこちら家族や仲間と過ごす空間ドアを開けてドライバーズシートへ乗り込む。何度触れていても、思わずため息が出るのが、その調度の作り込みの良さだ。日常でも、質の高いものに触れている人が乗るであろうクルマだけに、当然そこに抜かりはない。
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見映えもそうだが、とりわけ印象的なのはタッチの上質感である。ドアハンドルからスイッチ類まで、手応えは重みとしっとり感のあるものに統一されている。こうした確かな作り込みが、気持ちを静かに昂揚させるのだ。
前方の景色は4人乗りのEXECUTIVEと変わらないはずだが、version Lの室内に流れる空気は、また違ったものがある。リアコンパートメントとの間の隔壁が無いため、2列目あるいは3列目まで含めた後席の乗員との繋がり感が得られやすいからだろうか。
EXECUTIVEのリアコンパートメントがVIPや客人だけのための空間ならば、version Lのそれは、家族や仲間を乗せた光景をイメージさせるものだ。もしも、これが自宅ならば、自分の自慢の空間で、リラックスして過ごしている家族や友人たちを見るのは、きっと嬉しいに違いない。それと同じ感覚を、まさかクルマで味わえるとは。
続いてセカンドシートへ腰を下ろす。左右独立のL-アニリン本革張りのパワーシートは、月並みな言い方ながら、まるでビジネスクラス。頭部を側面まで支える大型のヘッドレスト、オットマンはもとより、シートヒーターやベンチレーション、更には背中から大腿部までを押圧してくれるリラクゼーション機能まで備わり、身体だけでなく心までリラックスさせてくれる。
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前方まで開けた視界は心地良い開放感に繋がっていて、外の景色が流れる様もよく見え、落ち着ける。もし乗員が望めば、助手席を前方に倒すことも可能だ。
付属のマルチオペレーションパネルを使えば、これらシートに備わる機能に加えて空調、サンシェード、照明などをスマートフォンのような使い心地で操作できる。お気に入りは、リアクライメイトコンシェルジュ。空調、シートポジション、サンシェード、照明などを統合制御して、最適な室内空間を作り出す機能で、例えばプリセットされた「Dream」では室内の明るさを落とし、照明を暖かめに。足を中心に全身を暖めて、まさに夢心地の空間を演出してくれるといった具合である。
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そしてサードシート。こちらもたっぷりとしたサイズで、クッションも肉厚だ。スライドやリクライニング、USB-C端子なども備わるから、成人男性でもくつろいで過ごすことができる。適度な囲まれ感の心地よさに、こちらを特等席と感じる人も居るに違いない。
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しかも、このサードシートは左右に跳ね上げて空間を荷室に充てることもできる。version Lを選ぶ理由として、このスペースユーテリティを挙げる人も、きっと少なくないだろう。3ないし4人で、例えばアウトドアアクティビティのためのギア等々をたっぷり積んで移動するためにLMを使う。そんなラグジュアリー且つアクティブなライフスタイルも想像できる。
◆レクサスLM500h"version L"の詳しい情報はこちら
ステアリングを握って改めて感じたこととはレクサスを語る上でのキーワードのひとつとして「おもてなし」がある。今まで、それはクルマあるいはブランドからユーザーに対してのものだと捉えていたが、LM500h"version L"で過ごしていると、それはユーザー自身から、クルマに招き入れる人に対してのおもてなしの気持ちを喚起するということでもあったのか、と思い至る。
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それはステアリングを握って改めて感じることでもある。レクサスLMは、同乗者に配慮した運転が、とてもしやすいクルマなのだ。ステアリングもアクセルもレスポンスは正確でとがったところがなく、急な加速や姿勢変化を起こしにくいし、切れば切っただけ曲がり、踏めば踏んだだけ加速してくれるから、無駄な力が入らない丁寧な運転に自然と導かれるようなところがある。
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何より絶品なのがブレーキだ。電動ブレーキサーボによる、前後制動力配分の巧みな制御が可能にした4輪が沈み込むような減速感は、後席乗員にとっては頭が前方に持っていかれるようなことがなく、快適に過ごすことのできる大きな要素と言っていい。
こうした走りの良さは、当然操る歓びにも繋がっている。この大きな体躯のLMが、意のままに動くのは、今もってやはり驚きだ。
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この手のクルマでは、同乗者だけが楽しくて、ドライバーは阻害された気分になるという光景が想像されがちだが、LM500h"version L"ならば、ステアリングを握る役目も、とても楽しめる。例えるなら、招いた自慢の自宅で、楽しみながら料理を振る舞っているような感じ、だろうか。皆の笑顔に、自分も笑顔になれる。6人乗りのLMには、そんな心地よさを感じた。
登場以来、レクサスLMが厚く支持されているのは、単に豪華だから、立派だから、見栄えがいいから……といった理由ではなさそうだ。誰かをもてなして、自分も満ち足りる。ステアリングを握っていても、あるいは後席に居ても、そんなエモーショナルな時間を皆で共有できることこそが、LMの提示するフラッグシップとしてのラグジュアリー性であり、かけがえのない価値なのである。
文=島下泰久 写真=小林利樹
◆レクサスLM500h"version L"の詳しい情報はこちら◆モータージャーナリストの島下泰久さんのレクサスLM500h"EXECUTIVE"の試乗記はこちら■この記事に関するアンケートにご協力ください
(ENGINEWEBオリジナル)