2025.03.03

LIFESTYLE

米アカデミー賞で作品賞受賞の快挙! 孤軍奮闘のストリップ・ダンサーがヒロインの『ANORA アノーラ』は日本の観客にどう受け入れられるか

主演のマイキー・マディソンはアカデミー賞で主演女優賞を獲得

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制作費は約600万ドルという低予算映画ながら、今年度の米アカデミー賞の頂点に立った『ANORA アノーラ』。ロシアの大富豪の息子に見初められたストリップ・ダンサーの“闘い“を描いた本作品は、一体どんな作品なのか?

自立した女性の物語

昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞し、先ごろ発表になった米アカデミー賞でも作品賞、監督賞、主演女優賞を含む5部門に輝いたのが『ANORA アノーラ』である。

ブルックリンでストリップ・ダンサーをしているヒロインが、ロシアの大富豪の息子と知り合い結婚。だがそれを知った息子の両親はヤクザまがいの部下たちを送り込んで、2人を別れさせようとする。屈強な男たちを前に、彼女が取った行動とは……。

『プリティ・ウーマン』を彷彿とさせるようなシンデレラ・ストーリーに見せかけて、中身は真逆。そもそもヒロインが結婚したのは、トラブルが起きた途端、ひとりで逃げ出すようなダメ男である。残された彼女は、過酷な現実にひとりで向き合わなければならなくなるのだ。


これまでも社会の貧困層やマイノリティに光を当てた作品で高い評価を得てきた監督のショーン・ベイカー。本作のヒロインもけっして社会的に恵まれてはいないが、そこに憐みの視点はない。性に対してあけっぴろげで(日本ではR18+指定)、損得勘定を隠さずに行動する姿には、反発を覚える観客もいることだろう。だが逆に、どんな相手に対しても怯むことなく、自身の権利を堂々と主張する姿を、かっこいいと感じる人も多いのではないか。まさにこれはあらゆる意味で自立した、現代を象徴する女性の物語である。

■『ANORA アノーラ』 全編をiPhoneで撮影した『タンジェリン』(2015)で世界的な注目を集めたショーン・ベイカー監督。その後も『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017)、『レッド・ロケット』(2021)など、発表する作品の多くが高い評価を受けている。ヒロイン、アノーラに扮するのは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』にも出演していたマイキー・マディソン。本作でアカデミー賞主演女優賞を獲得した。オスカーでは助演男優賞の候補に挙がったユーリー・ボリソフが、ヒロインの見張り役としていい味を出している。139分。全国ロードショー中 配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画 (c) Universal Studios. All Rights Reserved. (c)2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved. (c)Universal Pictures

文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE2025年4月号)

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