今年もやりました2025年版「エンジン・ガイシャ大試乗会」。上半期注目の総勢33台の輸入車にモータージャーナリスト33人が試乗!
ボルボ EX40ウルトラ・ツイン・モーターには、小川フミオさん、関耕一郎さん、渡辺敏史さん、斎藤慎輔さん、飯田裕子さんの5人が乗った。今回は小川さん、関さん、渡辺敏史さんの「ここがスゴイ」リポートをお届けする。
「もっとも理知的なBEV」小川フミオ
いま日本で買える欧州製BEVのなかで、もっとも理知的なモデル。
ベースのXC40は2017年発表だから、長寿の部類。乗ると、ものすごいトルク感だったり、エンターテイニングなライティングだったり、そういうものはない。言ってみれば、XC40がBEVになった。それだけのクルマ。しかしもとXC40オーナーだった私としては、そこが好きなのだ。

BEVとしての機能を果たせば、無駄な機能は必要ないんじゃないかといいたげなEX40のありかたに賛成。パワーも実用上問題ないし、ハンドリングがいいし、パッケージングにもすぐれている。
そしてファブリックのシート地がすばらしい。インテリアの上質感とは、これみよがしのぜいたくさでなく、知性的なものだと、ホント納得できる仕上がりだ。EX40のインテリアの考えかたこそ、日本のメーカーは参考にしてもらいたい、とつねに私は思っている。
でも、不思議とフォロワーが出てこない。残念だけど、それゆえにEX40の存在感がひときわ目立つ。おそらくエバーグリーンな1台だ。
「実用車として文句なし」関耕一郎
今回試乗した5台の中で『100年に一度の変革期』をもっとも感じさせるのが、ボルボEX40だったのは間違いない。
いち早く完全電動化へ舵を切ったメーカーの、前後にモーターを積む小ぶりのクロスオーバー。加速は力強く、0-100km/hタイムは2.1t超のSUVとは思えない4.8秒とか。同じCセグメントのエンジン車なら、VWゴルフRやアウディS3といったパフォーマンス・モデルで4.7秒。まさに、モーター特有のトルク特性の賜物だ。

これがほぼ無音で展開されるので、落ち着いた走りと相まって、1クラスも2クラスも上のクルマかと錯覚する。
車間維持での自然な車速コントロールも、緻密な制御が効く電動パワートレインの利点で、自動運転との相性もよさそう。ついでにエネルギー回生までしてくれて、5時間走り回っても電池残量はまだ20%弱ある。実用車として文句なしだ。
操作の多くが画面経由なのも今風だが、せめて運転中も回生を調整しやすいパドルかスイッチはほしい。それが変革できていない人間の、ささやかな要望だ。
「哲学は不変」渡辺敏史
Cセグメント系SUVであるXC40をベースとしたボルボ初の量産BEVは、登場から約5年の時が経つ。当初はFWDベースだった駆動系はRWD系へと移行、2024年秋からはボルボのBEVを総称する「EX」が充てがわれての改名……と、多くの変遷を経ている。
これもBEV黎明期ゆえの惑いか……と思いながらクルマをみてみると、確かに内外装にも大きな変化はない。が、それは旧態然に対するネガティブな印象でもない。基本意匠のレベルが高くて褪せた感じがない上に、適度にアナログ感のある操作系も馴染みの良さが感じられる。

そしてボルボといえば放っておいても期待してしまう椅子の立て付けや掛け心地も良好だ。同様にこなれているのが走りの味付けだ。ツイン・モーターということもあって踏めば存分に速いが、動力性能や運動性能でも極端な刺激は追わず、速度調整のしやすさや加減速時の車体の動きの滑らかさ、中立的なハンドリングなど、ともあれ先立つものは安心と快適。そんなボルボの哲学はこのクルマでも不変だった。
ボルボ EX40ウルトラ・ツイン・モーター
“EX”の名を冠するボルボの純電気自動車シリーズの日本における第2弾。この40の後には旗艦SUVのEX90や大型ミニバンのEM90、そしてサルーンのES90も3月には公開となる。試乗車はツイン・モーターという名の通り前後にそれぞれ最高出力110kWと190kW、最大トルク252Nmと420Nmという2つのモーターを搭載し4輪を駆動する。変速機は1段固定式。全長×全幅×全高=4440×1875×1650mm。ホイールベース=2700mm。車両重量=2160kg。車両本体価格=789万円。
写真=山本佳吾/小林俊樹/茂呂幸正
(ENGINE2025年4月号)