2025.05.01

CARS

「プレミアムカーと見紛うほどの高級感」と大谷達也(モータージャーナリスト)が5台の注目輸入車に史上して唸ったクルマとは?

大谷達也さんが乗ったのは、ベントレー・ベンテイガEWBマリナー、ポルシェ911カレラ、フォルクスワーゲン・ティグアンeTSI Rライン、メルセデスAMG E 53ハイブリッド・4マチック・プラス、マクラーレン750Sスパイダーの5台

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フォルクスワーゲン・ティグアンeTSI Rライン「フォルクスワーゲンの新境地」

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フォルクスワーゲンのクオリティ改善が著しい。一時は電動化戦略のあおりを受けてクルマ作りに「迷い」が生じているようにも思えたドイツの名門ブランドだが、オリバー・ブルーメがグループのCEOに着任して以来、目覚ましい勢いで製品が進化している。その急先鋒に立つのが新型ティグアンである。

フォルクスワーゲン・ティグアンeTSI Rライン

彫りの深い外装はプレミアムカーと見紛うほどの高級感。とりわけフロント・マスクとリア・ライト周辺の造形、それにシャープなキャラクター・ラインで縁取った前後フェンダーの作り込みは見事というほかない。

インテリアも素材が上質なうえ、デザインも秀逸だ。でも、その本当の見どころは走りの質感にある。マイルド・ハイブリッドを得たパワートレインはドライバビリティの向上が顕著。しかも伸び側と縮み側を個別に制御する2バルブ式ダンパーを得たDCC Proシャシー・コントロールは落ち着きの良さと軽快なハンドリングを両立しており、フォルクスワーゲンの新境地というべき仕上がり。これぞ「ホンモノのVW」だ!

メルセデスAMG E 53ハイブリッド・4マチック・プラス「スポーティなのにエレガント」

プラグイン・ハイブリッドを得て、メルセデスAMGは大きな変貌を遂げた。およそ2年前にスペインで直列4気筒エンジンを積むC63S Eパフォーマンスに試乗して以来、私はそんな風に捉えている。

ひと世代前のメルセデスAMGはエンジン音が猛々しいうえに乗り心地もハードで、洗練という言葉からはほど遠いモデルが少なくなかった。スポーティさを必要以上に強調しているように、私には思えたのだ。

メルセデスAMG E 53ハイブリッド・4マチック・プラス

けれども、巡航中のC63S EやE53は、騒がしいエンジン音を轟かせることなく、耳を澄ませば上質なメカニカル・サウンドがようやく聞こえる程度。足まわりの印象は、C63S EとE53で微妙に異なるものの、高いパフォーマンスを維持しながら快適性にも心がけるという方向性は共通している。そういえば、コンプリートカーを作り始めた当初のAMGもこんな風だった。

そしてワインディング・ロードでは期待どおりの正確なハンドリングとスタビリティを発揮する。スポーティなのにエレガント。それが最新E53の真骨頂だ。

マクラーレン750Sスパイダー「細大漏らさず知ることができる」

マクラーレンが誇るスーパーカー・シリーズのなかでも特に重要なモデルが750S。いまから15年前にデビューした初作12Cの血筋をダイレクトに受け継いでいるだけに、数あるスーパー・スポーツカーのなかでもとりわけ高い評価を受ける快適性、レスポンスに優れるだけでなくスタビリティの面でも傑出したハンドリング、そしてミドシップでありながら斜め後方も視認できる視界のよさなどを最高レベルで実現している。

マクラーレン750Sスパイダー

ただし、今回試乗して改めて印象に残ったのが、適度の洗練さと強烈なビビッド感を両立させたドライビング・フィールにあった。

まずは運転席に腰掛けてステアリングを握れば、クルマで起きていることすべてを細大漏らさず知ることができる。そう言い切っても大げさではないくらい、様々なインフォメーションがドライバーにもたらされるのである。

しかも、不快なノイズやバイブレーションはすべてシャットアウトされているのだから大したもの。これこそ、マクラーレンが真のドライバーズ・カーと呼ばれる所以だろう。

「原点回帰」大谷達也から見た、いまのガイシャのここがスゴい!

「BEVを柱とする電動化戦略がつまずいて、いまや迷走中のヨーロッパ自動車産業界」。日本の経済メディアはそんなことを勝ち誇ったかのように書き立てているけれど、すでに彼らは次の一歩に向けて動き始めている。電動化を進めるいっぽうでカーボン・ニュートラル燃料の実用化を見据えて内燃機関の改良に取り組み始めた姿勢はその第一歩にあたるもの。ただし、それだけで中国に代表される新興勢力に勝てるほど、甘い勝負だとは彼らも思っていない。



では、どう戦うのか? 100年以上にわたってヨーロッパの自動車メーカーが築き上げてきたドライビング・ダイナミクス、デザインやクラフトマンシップ、さらにはクルマ1台をまとめ上げる総合力を駆使して、なにより操って楽しいクルマ作りに取り組んでいるように思える。それこそが彼らだけが持つ強み。つまりは「原点回帰」が、欧州車の最新トレンドというべきものなのだ。

文=大谷達也

(ENGINE2025年4月号)

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