2025.05.07

CARS

メルセデス・ベンツEQSのフェイスリフト・モデルに試乗 2.5トンの巨体であることを忘れる走り!

メルセデス伝統のグリル・デザインで見た目も新しくなったEQS。EV版のSクラスと呼べるフラッグシップEVの走りを森口将之がレポートする。

メルセデスらしくない?新しいEQS

EVシフトが減速するなかで、メルセデス・ベンツも自身の電動化ロードマップの見直しに至ったことは、読者の方々はご存知だろう。EVの車名はすべてEQ◯とするというフォーマットも、Gクラスあたりから改めてきている。となると、EV専用車としてリリースされたEQSやEQEはどうなるのだろうか。2024年にマイナーチェンジを実施したEQSに乗りながら考えた。EQSには後輪駆動のEQS450+と、AMG EQS53 4マチック+があり、乗ったのは前者だ。

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実車に対面して最初に気づいたのはやはり、フロント・パネルに伝統的なグリルを模したグラフィックが与えられたことだ。メルセデスらしく見えて良いと思う人もいるだろうが、僕の気持ちは逆だ。あのピュアでクリーンなオリジナルデザインを描いた人は、この改変をどう思っているのだろうか、複雑な気持ちになった。

モダンだけどクラシックなインテリア

キャビンは3枚のディスプレイを内蔵して1枚のパネルとしたインパネに圧倒される。シートは前後とも、座面や背もたれはパシッと硬いが、ヘッドレストだけはラグジュアリー・ホテルの枕のようにふっかりしている。ボディ・サイズはSクラスに匹敵するが、デザイン優先のフォルムゆえ、後席は身長170cmの僕が脚を組むほどの広さはない。でも大きくリクライニングする背もたれなど、フラッグシップ・セダンにふさわしい機能はあますところなく備わっているし、モダンとクラシックを絶妙に織り交ぜた仕立てはさすがだ。


2.5tの巨体であることを忘れる走り

車両重量は2500kgに達するが、最高出力360ps、最大トルク568Nmを発生するだけあってダッシュは鋭いし、電動走行ならではの静粛性もまた、このクラスにふさわしい。それでいて無味乾燥にならないよう、急加速では調律された電子サウンドを響かせるなど、楽しさの演出も抜かりない。気になる航続距離は700kmから759kmへと伸びていて、これ以上望むのは不自然ではないかと思うほどだ。



乗り心地はエグゼクティブの移動体として見ても文句なし。エンジン車より理想的な重量物の配置に加えて、4輪操舵もついているので、ボディ・サイズを考えれば小回りは効くし、ペースを上げても大きさ重さを忘れさせるほど素直に曲がる。EVの可能性を極限まで追求した走りに、打ちのめされるような思いだった。

滅多にないゼロベースのクルマ

EQSに乗って感じるのは、技術で未来を制するというドイツならではの野心に満ちあふれていることだ。だからこそ作る側も乗る側も、EVはオワコンだからなどと扱わず、1台のクルマとして接してほしい。あのメルセデスがフラッグシップ・セダンを、コンセプトの段階からゼロベースで作り上げることなど、滅多にないのだから。

文=森口将之 写真=茂呂幸正

(ENGINE2025年6月号)

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