2025.06.28

CARS

近藤サトさん(フリーアナウンサー)にとって、クルマも着物も自己表現のひとつ そしてもっと大事なのはそのストーリー 

美しい着物姿の近藤サトさんとBMW740dXドライブ

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キドニーグリルは着物の袖

そんな近藤さんが撮影用に選んだのが最新のBMW7シリーズだ。

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「四角張ったデザインのクルマが好きなんです。今回の7シリーズを見たときにすごくカッコイイと思いました。いま、ぬめっとしたカドのないデザインのクルマが多いじゃないですか。4ドア・サルーンらしいフォルムが好きです」

BMW740d xDrive現行型のBMW7シリーズは2022年に登場した。撮影に使用したのは3リッター直6ディーゼルに電気モーターを組み合わせたマイルド・ハイブリッド・モデル。

大きなキドニーグリルはどう思われますか?

「これを見よと言わんばかりの大きさとデザインですよね。縁取りが光ったりして。これは着物の袖だと私は思いました。ヨーロッパの人が“これがカッコイイでしょ”と思って仕上げたデザインに着物との共通点を見たとき、人間の美意識って変わらないんだなと思いました」

そう言われてキドニーグリルを見ると確かに着物の袖に似ている。

「実は世界的にとても美しいと言われているクルマに乗っていたことがあります」

そう言って近藤さんは紙焼きの写真を見せてくれた。なんとそこに写っていたのは、フェラーリ250GT SWB! えっー!

「夫が主にヨーロッパとビジネスをしているんです。いまから20年ぐらい前だと思います。イギリスでこのクルマを見つけてオーナーになりました。クルマを日本に持ってくるのではなく、買ったディーラーに保管してもらって私たちがイギリスに行って乗るというスタイルです」

助手席で1歳の長男を抱き、ご主人とハンプシャーを旅した。

「地べたに座っている感じでした。ギア・チェンジをするたびにガコガコと音がして、快適とはほど遠いドライブでした。イギリスの田園風景をずっと眺めていると、遠くに石が。あれがストーンヘンジかという思い出深い旅でした」

250GT SWBはその後すぐに手放したという。ちなみにオーナー・リストには前オーナーとして、エリック・パトリック・クラプトンの名があったそうだ。

ご主人は相当のクルマ好きと推察するが、いまどんなクルマに乗られているのだろうか?

「それはちょっと。でも日本での思い出のクルマはマセラティ・クアトロポルテですね。ファミリーカーとして使っていたので、家族の思い出がたくさんあります」

クルマ好きな夫を持つ妻としてどんな思いで助手席にいたのだろうか。クルマ好きな読者諸兄も直接奥さんには聞きにくいだろうから、代表して聞いてみた。

「家族の乗り心地とか、荷物がたくさん運べて便利とか、そういうことを一切考えないでクルマを買う人だったので、あなたにとってクルマは自己表現の手段なのね、家族を持てなすものではないのねというところに辿り着きました。でも、夫はクリエイターなのでそれも必要かなと。夫のセンスとしては筋が通っているから、まあそうだろうなと思うようになりました」



近藤さんにとっての自己表現はもちろん着物である。

「今日の着物の模様は波です。グレーとか墨色とかが好きなんです。髪との相性もいいので。だから7シリーズのボディ・カラーを聞いて、絶対この着物にしようと思いました。牛首紬という石川県の紬を京都で染めています」

紬というカジュアル・シーンで着る着物に、フォーマルな波の染付をするという禁じ手をしているのだという。わかる人にはわかる自己表現というのが、なんとも粋だ。

「クルマも着物も自己表現のひとつだという点でとても親和性があると思います。クルマ好きの人たちが愛車にパートナーを乗せ集まり、パーティではパートナーが着物姿で登場するというイベントをエンジンさんやってください(笑)」

ここで大事なのはクルマの価格自慢ではなくストーリーだと近藤さんは言う。

「これは祖母から貰った着物で、これこれこういういわれがあるというストーリーが価格を凌駕するんです。250GT SWBだって価格ではなく子供が1歳のときに初めて乗ったクルマだとか、いい旅の思い出を作ってくれたクルマだとかいうストーリーの方が大事なんです」

文化的生活を醸成するのはモノの価格ではなく、人々のストーリーだ。

文=荒井寿彦 写真=筒井義昭 ヘアメイク=若宮祐子(ヘアメイク特攻隊)

■近藤サト(こんどう・さと)
岐阜県生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。1991年フジテレビに入社。『FNN NEWSCOM』や『FNNスーパータイム』などの報道番組を担当するほか、情報番組のナレーションなどを務めた。1998年フジテレビを退社。フリーランスに転身後は、落ち着いた声質を活かしてNTV『真相報道 バンキシャ!』などのナレーションを中心に活躍。また母校である日本大学芸術学部の特任教授も務める。

(ENGINE2025年6月号)

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