2025.05.11

CARS

ロールス・ロイス・ファントムの100年 世界最高峰の高級車の歩み【後篇】

ジョン・レノンがオーダーしたのはファントムV。

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1925年、シルバー・ゴーストこと40/50HPの後を受けて登場した「ロールス・ロイス・ファントム」が、今年で誕生100周年を迎える。

スーパースターとファントム

ファントムといえば、英国が誇るスーパースター、ザ・ビートルズとのエピソードも見逃せない。アルバム『ア・ハード・デイズ・ナイト』の成功を記念し、ジョン・レノンがオーダーしたのはファントムVだった。



内外装を黒で統一したジョンのファントムは、トリプレックス・ディープライトを採用し、英国初のブラック・スモーク・ウインドウを装着したクルマのひとつ。



1965年に『ローリング・ストーン』のインタビューで、プライバシーを守るためかと聞かれたジョンは「それもあるけど、それは遅い時間に帰宅するときの話だ。もし明るいうちに帰っても車内は真っ暗なまま。窓を全部閉めるだけで、まだクラブにいる感じさ」と答えている。

その後、『サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のリリースを控えた1967年に、鮮やかな黄色に塗り替えられ、渦巻く花や星座のシンボルで彩られたこのファントムVは、サマー・オブ・ラブと呼ばれるヒッピー・カルチャーの芸術的なマニフェストとみなされた。

ジョン・レノンのファントムV。

ザ・フールのマレイケ・コーガーにアドバイスされたというジョンだが、「ロールス・ロイスになんてことを!」と激怒した英国人女性に、傘で攻撃されたと明かしている。

もうひとり、ファントムVを愛したミュージシャンが、キング・オブ・ロックンロールことエルヴィス・プレスリーだ。1963年に購入した車内には、特注のマイクや、執筆用に設えた後席アームレストなどが装備された。ミッドナイトブルーの鏡面仕上げだった外装は、母親が飼うニワトリに突かれるということで、傷が目立たないシルバー・ブルーに塗り替えられたという、微笑ましいエピソードも残っている。

ミュージシャンでは、フランク・シナトラもロールス・ロイスのオーナーだった。また映画界では、ワーナー・ブラザースの共同創業者であるジャック・ワーナー、フレッド・アステアやグレタ・ガルボといったレジェンド・スターといった錚々たる面々がファントムを手に入れた。

時には俳優でもある

劇中車にも印象的なものが多く、1964年の『ゴールドフィンガー』以来、『ジェームズ・ボンド』シリーズには12回登場。



2024年には、シリーズの60周年を記念したワンオフ・モデルのファントム・ゴールドフィンガーが、ファントムVIIIベースで製作された。やはり1964年に公開された『イエロー・ロールス・ロイス』では、1931年型ファントムIIがスクリーンを飾った。



1991年にVIが生産を終え、しばらく途絶えていたファントムの名は、BMW傘下で2003年に復活。2012年のロンドン・オリンピック開会式に3台のファントム・ドロップヘッド・クーペが姿を現すなど、歴史的イベントに華を添えているほか、芸術的なブランドとのコラボやビスポークオーダーで人々の目を楽しませている。



今や8世代を数えるファントムは、これからも最高級車の代名詞的存在として、新たな歴史を刻んでいくのだろう。

文=関 耕一郎

(ENGINE Webオリジナル)

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