2025.05.27

CARS

6代目になった新型トヨタRAV4を、36年という歴史を踏まえて考察する

無機質で先進的な印象の6代目トヨタRAV4の“コア”。

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トヨタは6代目となるRAV4を発表。モノコックSUVの先駆けであり、トヨタの冒険心を体現してきた伝統が、強く感じられるモデルとなっている。

革新的だった初代RAV4

1989年の東京モーターショーに出展されたコンセプト・モデルのRAV-FOURは、その4年後に市販へ向けたプロトタイプのRAV4へ発展し、1994年に発売。





まだSUVという呼称も一般的ではなく、四駆といえばラダーフレームが当然だったなか、一般的ではなかったモノコックに、セダンなどから流用したコンポーネンツを組み合わせるというクルマづくりは革新的だった。



その後、街乗りSUVが一般化する中、存在が埋没しがちになったことから、4代目は日本市場での販売を見送り。しかし、新プラットフォーム採用で、悪路走破性と快適性をともにレベルアップした5代目を再投入し、再び人気車種の座を勝ち取っている。

新型、つまり6代目 RAV4は、全高を5mm低めたほかは従来モデルの外寸を維持しつつ、よりユーザーの嗜好に沿うよう、3つのタイプを用意した。



主に街乗りを想定したスマートな外観のコア、オフロードユースを念頭に置いた無骨さを前面に出したアドベンチャー、そしてスポーツ走行への期待に応えるGRスポーツだ。

いずれも、新世代トヨタのデザイン・モチーフから発展したSUVハンマー・ヘッドを基本に、グリルをはじめとするエクステリアを明確に区別した。

コアは、バンパー前面に統合したボディ同色グリルと両サイドの開口部で、無機質で先進的な印象を強調。



アドベチャーは開口部をセンターに集中し、バンパー両端はブロック形状のパネルとしたほか、ワイド・トレッド化で力強さを表現。また、オフロードでの利便性を考慮して、ラダー・タイプのルーフ・レールを装着した。



そしてGRスポーツは、GRモデルに共通するメッシュ形状のファンクショナル・マトリックス・グリルを採用。



GRヤリスやGRカローラにも通じる、高速域での空気抵抗を低減する開口部形状に、空力性能を高める前後スポイラーや軽量ホイールを装着し、20mm拡幅したトレッドや専用チューンのサスペンションとEPSも与えた。さらに、パフォーマンス・ダンパーを装備するなどボディ剛性強化も図り、ワインディングでも安心して、走る楽しさを味わえる仕様になったという。



歴代RAV4は、トヨタの電動車開発においても重要な役割を担ってきた。モノコックでありながらも、SUVならではの同クラスのセダンなどより有利なスペースを活かし、燃料電池車(FCEV)のテストベッドに選ばれたほか、BEVもFCEVも、最初の市販車はいずれもRAV4がベースだった。

モーターだけで150kmも走る!?

新型はラインナップの完全電動化を図り、PHEVとハイブリッド(HEV)を設定。PHEVは、フロント・アクスルをSiC半導体などを用いて小型・高効率化し、バッテリーの大容量化とあわせて、EV航続距離を150kmと、従来の95kmから大幅に伸ばした。



同時に、モーター出力の12%向上で動力性能も強化。GRスポーツでは最高出力が320馬力に達するという。約30分での80%チャージを可能にする急速充電や、V2H外部給電にも対応し、利便性も高まった。HEVは、トランスアクスルやPCU、バッテリーなど各部を見直し、モーター出力をアップしている。



水平基調で平衡感覚を掴みやすくしたダッシュボードは、上面を約40mm低い配置とし、前方視界を改善。インテリアのレイアウトは、各種機能を一体的に配置するアイランド・アーキテクチャーとして、視線移動の少なさや操作性の高さを追求している。操縦系では、シフト・バイ・ワイヤや、細かいコントロールがしやすいオルガン式アクセレレーター・ペダルを装備。PHEVは、電動ブレーキ・システムを搭載する。



パッケージングも工夫し、リア・ウインドウの角度を立て、ルーフのピークをほぼ後端まで持ってくることで、荷室容量は749リットルと、ボディ・サイズを変えることなく先代比16リットルも拡大。

また、後席フォールド時のフロア傾斜を5度へ半減させ、よりフラット化を実現している。最大容量は明示されていないが、ゴルフ・バッグが7個、サーフ・ボードは15枚積むことができるという。荷室拡大の弊害として、平面的になりがちなリアまわりは、フェンダーの張り出しで動きのあるデザインとしている。



ハード面のみならず、ソフト面の革新も新型RAV4のトピックだ。トヨタがソフトウェア開発の新たなプラットフォームとして導入を進めるアリーンを、市販車で初採用。インフォテインメント・システムのインターフェイスからADASまで、性能向上や開発のスピードアップを実現した。

安全装備では、3D映像で死角ゼロを目指すパノラミック・ビュー・モニターを、トヨタ車として初搭載している。

まだまだ本格クロカンが四駆の主流だったなかでの登場だったが、乗用車感覚で扱えるコンパクトなライトクロカンとして誕生し、着々と支持を拡大したRAV4。日本未発売の4代目を含めれば30年を超える歴史を刻み、180の国と地域で累計1500万台を販売してきた。その走行距離を合計すると、じつに地球6000万周に相当するという。

新型RAV4は、ハード/ソフトの両面で、トヨタのクルマづくりの新たな一歩を刻む意欲作。日本での発売は、2025年度内を予定している。

文=関 耕一郎

(ENGINE Webオリジナル)
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