アウディが、欧州での新型A6発表に合わせ、歴代モデルの集合写真を公開した。独インゴルシュタットの本社に隣接するアウディ・フォーラムの前には、A6前身の100を含めた9世代のCシリーズが並んだ。ここからは後篇として第4世代からの車両とオーナーをご紹介する。
前編はこちらアウディ100からアウディA6へ
C4は、アウディ100としては1990〜94年と比較的短命で、最後の世代となる。日本をはじめ、欧州本土以外での発売は1991年で、エンジンは直列4気筒と直列5気筒にV6も加わった。いっぽう、直列5気筒ターボの200とV8は統合されてS4と名を変えた。

1994年にはマイナーチェンジに合わせて、車名をA6へ変更。同時にS4はS6へと改名した。ホルスト・ゲシンガーの愛車はラグーザ・グリーンの1996年型S6 2.2Tアバントで、みごとなローダウンっぷりが目を引く。彼はバケーションの移動で直列5気筒ターボの走りを楽しんでいるが、このエンジンが次世代へ引き継がれることはなかった。

1997年には、C5世代のA6へバトンタッチ。セダンはアーチ状のシルエットを描くキャビンや、シームレスなボディ・パネルが特徴的で、Cd値が0.28と、当時としては異例に優れた空力性能も話題となった。
クロスオーバー・スタイルのオールロード・クワトロが登場したのもこの世代だ。エンジンは直列4気筒とV 6が基本で、S6はV 8。さらに、V8ツイン・ターボのRS6がこの世代でデビューしている。アバントでも0-100km/hは4.6秒、最高速度は250km/hリミッターに余裕で到達するスーパー・スポーツ並みのパフォーマンスを誇った。

マキシミリアン・ビーバーのS6アバントも、0-100km/hの公称値が5.7秒という快速ワゴンだ。その速さや安定した走りに目をつけられてか、ベルギーで銀行強盗の逃走に使われたという驚きの経歴を持つ個体だが、今は大事に乗られ、ここまで14万kmにわたりオーナーを楽しませている。
日本人の手によるアウディ
C6は、かつて日産で初代のセフィーロやプレセアなどを手がけたデザイナー、和田 智氏の作品で、2004年に発売。現在に続くシングル・フレーム・グリルを、最初に採用したモデルでもある。先代は高性能モデルとしてV8搭載車が用意されていたが、代わりにV 10を搭載し、S6は5.2リットル自然吸気で最高出力が435ps、RS6は5リットル・ツイン・ターボで580psに達した。

ステファン・シュワントナーと12年余りを共にするこのA6アバントはオリジナル・エンジンですでに45万6000kmを走破。日常使いからバケーションまで、頼れる相棒を務めている。
アルミとスチールの混合による軽量化技術のアウディ・ウルトラ・ライトウェイト・テクノロジーを初採用したC7は、2011年にリリース。これまで車体のベースは独自のCプラットフォームだったが、VWグループのエンジン縦置き用モジュラー・プラットフォームであるMLBを導入し、上位のA8や、新型車のA7と基本設計を共有することとなった。
Cd値は0.25まで向上し、初のハイブリッドや、EVのコンセプト・モデルも登場している。高出力版のRS6は、アバントのみとなった。

イェンス・キュールマイヤーの愛車は、2013年型S6アバント。V8サウンドを轟かせながら、ファミリーカーとしての普段使いも、アルプスの峠アタックもこなす。
新型へ現役の座を譲ったばかりのC8は、2018年の発表。プラットフォームはランボルギーニやポルシェも使用するMLB Evoへ進化し、エンジン車はすべてマイルド・ハイブリッド化したほか、日本未導入ながらPHEVも設定された。上位モデルのS6はV6、RS6はV8を、それぞれツイン・ターボ化して搭載する。

シュテフェン・モーリングは、2022年からA6アバントと連れ添い、趣味のダイビングの装備を満載してクロアチアやイタリアのエルバ島、南仏など、欧州大陸のあちこちへ旅行に出かけるが、安心して家族とのドライブを楽しんでいるのだとか。
最新世代のC9は、まずはマイルド・ハイブリッド、続いて新世代バッテリーを搭載したPHEVを発表し、2025年夏頃の発売を予定している。
初代100からC8まで、今年4月の時点で983万6762台を販売したというアウディのEセグメントは、今後もオーナーの暮らしに寄り添い、新たなストーリーを紡いでいくのだろう。
文=関 耕一郎
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