2025.06.19

LIFESTYLE

【6/20公開】約180億円もの私財を投入した『メガロポリス』に、巨匠コッポラの映画愛と執念を見た!

主人公、カエサルを演じるアダム・ドライバー。マーティン・スコセッシやリドリー・スコットなど、錚々たる映画監督たちからひっぱりだこの実力派だ。

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フランシス・フォード・コッポラ監督が40年間にわたり温めていた映画がついに完成。現代のアメリカを古代ローマになぞらえた意欲作だが、果たしてその出来栄えは?

『ゴッドファーザー』三部作や『地獄の黙示録』などの作品で、映画史にその名を刻むフランシス・フォード・コッポラ。今年で86歳を迎えた巨匠が、現代のアメリカと古代ローマの世界をシンクロさせた、壮大なる叙事詩の構想を練り始めたのは40年も前のことだ。幾度もの挫折を経験しながらも、所有するワイナリーの一部を売却し、1億2000万ドル(約186億円)の制作費を調達。ついに完成にこぎつけた『メガロポリスは』は、まさにコッポラの執念が生み出した大作である。

主人公のカエサルは時間を止めることができるという特殊能力の持ち主。映画のビジュアルも、ファンタジーのような人工的な美しさを宿している。

21世紀のアメリカ共和国、ニューローマ。この大都市では、享楽に耽る特権階級と貧困層との間の激しい格差が、深刻な社会問題となっていた。名門クラッスス一族の一員であるカエサル・カティリナは、自らが発明した新素材メガロンを使って、誰もが平等で幸せに暮らすことができる理想郷“メガロポリス”を作り上げようとする。だがその前には様々な困難が立ちはだかり……。

カエサルと対立するキケロ市長を演じるのはジャンカルロ・エスポジート。コッポラ監督と組んだのは『コットンクラブ』(84)以来となる。

カエサルと真っ向から対立する市長のフランクリン・キケロ、巨大な富と権力を持ち、カエサルの後ろ盾となるクラッスス3世、そして彼の思いに共鳴し、そのパートナーとなるキケロ市長の娘、ジュリア……。黄金色に輝く、絢爛豪華な絵巻物のような映像世界の中、様々な陰謀や欲望が渦巻く、ニューローマでの人間模様が描かれる。



かつてコッポラは、巨大なラスヴェガスのセットに莫大な制作費を投入し、自身を破産に追い込んだ『ワン・フロム・ザ・ハート』(81)という作品を手掛けたことがある。本作が漂わす、人工的な世界観は、どこかこの『ワン・フロム・ザ・ハート』に似ている。思い描いた映像を実現させるためには、採算も度外視する、という点においてもだ。



だがようやく完成した映画『メガロポリス』は、厳しい批評に晒されている。実際のところ、古代の哲学者の言葉や、現代アメリカ社会のメタファーなどがふんだんに盛り込まれた作風は、決して見やすいものではない。また眩いばかりの映像世界は、捉えどころのないイメージの洪水のようだ。

それでいて本作に不思議な魅力が残るのは、自分がつくりたい映画は何が何でもその通りにつくる、というコッポラの頑くななまでの姿勢や映画愛が、痛いほどに伝わってくるからだ。そのスケールといい、強すぎる思いといい、こんな映画をつくる監督はいまどきいない。やはりコッポラは偉大なのだ。

文=永野正雄(ENGINE編集部)

『メガロポリス』6月20日(金)よりIMAX(R)ほか全国劇場にて公開。138分 配給:ハーク、松竹
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(ENGINE2025年7月号)

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