2025.07.03

CARS

往年のスーパー・メルセデスのオマージュか AMG専用BEVへの布石か GT XXは新型モーター採用で最高出力は1360馬力

55年前のC111-IIの面影があるか? AMG GT XX登場。

メルセデスAMGが公開したコンセプト「AMG GT XX」は、将来的に登場するであろう市販ハイ・パフォーマンスBEVへの採用が予想される、先進的な技術で構成されている。

あのスーパー・メルセデス、C111をオマージュ


AMG GT XX は車体サイズが5204×1945×1317mmの4ドア・クーペで、現行のGT 4ドア・クーペと比較すると150mm程度長く、120mmほど低い。

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中央にスリーポインテッド・スターを配したグリルは、AMGのそれを楕円形に近く引き伸ばしたような形状だが、1970年のC111-IIも彷彿させる。





C111-IIとの類似性はボディ・カラーや、ボンネット上のダクトにも見てとれるが、AMG GT XXのエア・カーテンを統合したフロント・スプリッターなど、空力設計はもちろん先進のレベル。300km/h走行時に駆動力の約83%を相殺するとされる空気抵抗を徹底的に低減し、Cd値は驚異の0.198に達した。



それは、低くて長いボンネットや、寝かせたフロント・ウインドウ、角度のついたサイド・ウインドウ、ウインドウを排したリアといった上屋のみで達成できるものではない。アンダー・ボディはダウンフォースと効率のバランスを追求し、ヴェンチュリ効果によりリアのリフトを減らしつつCd値を向上させている。また、グリル内のアクティブ・シャッターであるエア・パネルや、アンダーボディ前部の冷却プレートなどにより、空力性能と冷却性能の両立も図られた。



キャビンは後部に向けて絞り込まれ、有機的な曲面で構成されるリア・フェンダーは広いショルダーが張り出す。リア・エンドにはカーボン地を見せるワイドなディフューザーを設置。6つの丸型テールライトや、中央のMBUXフルード・ライトパネルが特徴的だが、全体的にはハイパー・カーのAMGワンと類似したフォルムだ。





外装には、革新的な技術を多数導入した。ヘッドライトには外部へ音を発するスピーカーが組み込まれ、サイドシルには発光するペイントを施工。21インチ鍛造ホイールに設置される、電子制御式の可動エアロ・ブレードは、ハブに内蔵したアクチュエーターにより必要に応じて開閉し、空気抵抗低減とブレーキ冷却を両立する。



インテリアは、レーシング・カーのように無駄を省きながらも高級感も持たせた。黒を基調に、シルバーとオレンジのアクセントを加え、さまざまな質感の高品質な素材を使用。内装のコンポーネンツは、高電圧ケーブルをイメージしている。10.25インチのメーターと、14インチのマルチメディア画面はシームレスなガラスのように並び、ドライバーの方へ向けて角度がつけられている。



ステアリング・ホイールはAMGワンと同じもので、レーシング・カーのような長方形に近い形状に、回生度合いを調整するパドルが備わる。ステアリング・コラム上には、充電状況や回生、リアルタイムのパフォーマンスを示す8つのLEDが設置される。

コックピット上部はボディ構造のクロスメンバーが露出し、ダッシュボードはクラシックなスポーツ・エンジンのブロックを思わせるシュリンク塗装。オレンジの発光パイプが組み込まれたセンター・コンソールも、ボディの押し出し材をそのまま使用している。



前席は、カーボン・シェルに3Dプリント成形のパッドを組み合わせる。後席も左右独立のカーボン・バケット・シートで、軽量化のためリア・バルクヘッドに組み込まれた。

おもしろいところでは、LABファイバーと呼ばれる代替レザーがある。先進のバイオテクノロジーにより生み出されたこの素材、原料にはGT3レースカーの廃タイヤを熱分解したオイルが用いられるのだとか。



独自のプラットフォームであるAMGエレクトリック・アーキテクチャー(AMG.EA)に搭載するパワートレインは、革新的なアキシャル・フラックス・モーター。メルセデス・ベンツが子会社化したイギリスのモーター専業メーカー、YASAが開発し、きわめてコンパクトながら高出力を発生するとされる。

2023年には、C 111へのオマージュともいえるコンセプト・カーのヴィジョン・ワン・イレブンに搭載されたこのモーターは、2026年にメルセデスAMGの量産車にも採用される予定だ。

一般的なラジアル・フラックス・モーターより軽量でありながら、出力密度はほぼ3倍。AMG GT XXの出力は3基合計で1000kW、すなわち1360psを継続的に発生する。最高速度は360km/hを超え、航続距離はWLTP値でおよそ400km。AMGの本拠地であるアファルターバッハから、スパ・フランコルシャンに相当する。



バッテリーは専用開発で、ニッケル/コバルト/マンガン/アルミカソードと、シリコン系アノードを使用。エネルギー密度は300Wh/kgあり、軽量で導電性と熱伝導に優れるレーザー溶接アルミ・ハウジングに3000以上のセルが収められる。各セルは、絶縁オイルをベースにしたハイテクなクーラントでダイレクトに冷却され、800V以上の高電圧システムや、850kW以上の充電性能もあり、給油と同等の5分程度でのフル・チャージが可能になるという。



メカニズムや構造から素材まで、将来的な実用化が予想される要素を満載したコンセプトGT XX。次期AMG GT 4ドアは、かなりこれに近いものになるのかもしれない。

文=関 耕一郎

(ENGINE Webオリジナル)

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